第88話 肉テロ
久々って程ご無沙汰でもないけど、マッシモの自宅が人が沢山居るので某かの話し声が聞こえるているのが普通なので、ここに来てシーンと静まりかえって・・・いや、遠くでウルフ系の遠吠えとかの魔物の鳴き声は聞こえているが、人の話し声はしない。
土魔法で解体用の大きな台を用意して、あの超大物では無く、普通の3m級のミノタウロスを取り出して、まずはミノタウロスの亡骸と俺自身にウォッシュ&浄化を掛けて綺麗にしてから生唾を飲み込みつつ
解体を始める。
「うーーん、死んでもこんなに皮膚堅いのかよ!」とぼやきつつ、最近刃物を壊さない為に編み出した新技を使って解体用ナイフに魔力コーティングして、魔力をまるでチェンソーのチェーンの様に刃先で廻す。
するとどうでしょう? あ~ら不思議、まるでバターにホットナイフを突き刺すかの様にススっと刃先が皮膚を引き裂いて行く。
綺麗に切り込みを入れて、皮膚の下に刃先を滑らせて、皮を剥いで行く。
余りグロ耐性の無い人は卒倒するかもしれないので、要注意だね。
皮を剥いだら、肉を骨から分離して、部位に切り分けて行くわけだが、もうね、この段階で何か美味そうな肉の気配しているわけですよ。
実際のA5ランクの和牛の解体なんてやった事は無いけど、前に動画サイトで見た牛肉の解体で美味しそうなサーロインやロース、カルビ、ミスジ等を綺麗に切り出していて、美味そうだなって思って見て居た『肉』と変わらない霜降り具合。
これはマジでヤバいかも知れん!
「いや、ちょっと待てよ? 俺すら『毒味』してない得体の知れない肉をみんなにいきなり食わす様な無責任な真似、俺には出来ないな・・・。」と一仕切り言い訳をした後。BBQコンロに炭火を起こして網を置いて、適度名』厚みに切ったカルビっぽい肉にタレを馴染ませちょっと深めの器の中で軽く手で肉を揉んでタレの下味を馴染ませた。
おっと、白米を先に茶碗に盛って、肉を網の上に置くと、ジュー♪と懐かしい焼き肉の音とタレの焼ける匂いが、煙と一緒に立ち上る。
もう、堪らん。
焼き過ぎないぐらいで裏返して、次の1枚を網に乗せてスタンバイさせて置く。
「よし、未だ!」と気合いを入れて、肉を網から取ってタレの皿にチョンと浸けて、白米の上に・・・。
焼き肉のタレが、真っ白な白米にシミを作って行く。肉を海苔でする様に白米を包み込んで口に運ぶ。
さあ、毒味だ!
パクリと口に入れると、ご飯に染みたタレと合わさって口の中で肉の線維が解けて行く・・・。
俺は、余りに美味さと懐かしさに、暫く言葉を失ってしまい、ただ只管に肉を焼き、口に運んで、ご飯を掻き込む。
気付くと、丼に盛ったご飯と、最初に
タレで揉み込んで下味を付けた肉が全部俺の胃袋に入ってしまっていた。
ミノタウロス恐るべしである。
「正にキング・オブ・ビーフやな! これはヤバい肉を見つけてしまった様だ。
これ、世に広めると、ミノタウロスだけで、御殿建つんじゃね? 勿論、俺の調合したジュウジュ園の焼き肉のタレ有りきの話だが、高級焼き肉屋やったら、マジで一度食ったらもう虜になるよな。
「『肉テロ』やっちゃう?」と一瞬考えるも、思い止まった。
だって、今マッシモであのダンジョンの第37階層でミノタウロスを狩って来られるのって、俺だけじゃん!?
下手すると、来る日も来る日もミノタウロス狩りの指名依頼だらけになるかも知れない・・・ここは、身内だけでヒッソリ楽しむか!?
と結論を出して、もう一度自分自身にウォッシュ&浄化を掛けて、『焼き肉』臭を綺麗に消してからマッシモの自宅にホクホク顔で帰るのであった。
「あ、トージ様、お帰りなさい!お疲れ様でした。 あら、何か良い事でもあったんですか? 凄く嬉しそうですね?」と笑顔で出迎えてくれたアリーシアさんから、鋭いツッコミが早々に入る。
「今日の夕飯はまだ準備前かな?子供らはもうすぐ帰宅する頃だよね?」とまずは夕飯の準備前かを核にする。
「は、まだ夕飯の準備前ですね。子供らが帰ってきてから支度するぐらいで丁度良いので。」と教えてくれたアリーシアさんに
「じゃあさ、今夜の夕ご飯は、庭で、『焼き肉』にしようよ! この間新しく作った『焼き肉のタレ』って、言う肉を焼いて浸けて食べる最高のタレを作ったんだよ。それで肉焼いてご飯で食べようよ!」と俺が提案すると、「はい、判りました!!トージ様の作った最高の『タレ』楽しみです。付け合わせは何か作りますか?」と嬉しげに聞いて来た。
「そうだねぇ~、温かい炊きたての白米とサラダと溶き卵のスープぐらいは欲しいかな。アリーシアさんはご飯炊いてサラダ作って置いてくれる? 俺は卵スープをチャチャって作っちゃうから。」と役割を分担して、夕飯の準備に入るのであった。
◇◇◇◇
最初に師匠が帰宅し、続いてソフィアちゃん、ソリアさんの姉妹と一緒に店を終えた子供らご一行が戻ってきた。
「おかえりーー!手を洗ったら、今日の夕飯は庭で焼き肉だから!庭に集合ね!」と俺が全員に伝達すると、「『焼き肉』ですか?BBQとはまた違うんですか?」とソフィアちゃんがあれ?って感じで聞いて来た。
「まあどっちも肉は焼くんだけど、『焼き肉』は一味違うよ!先日作った最高の『焼き肉のタレ』を漬けて食べるんだよ!」と俺が自然と溢れてしまう笑みを隠さずに言うと、察した様で、「急いで洗って来まーーす。」と小走りに家の中に入って行った。
俺が炭火を起こして網を敷いてスタンバって居ると、間を開けずに全員が庭に出て来た。
「さあ、全員揃ったので、焼き肉を始めるよぉ~♪」と宣言をして、
既に下味を付けて揉み込んである肉の皿から肉を次々と網に上に広げて行く。ジュー♪っと言う音と、それに伴ってタレの焼けて炭の上に垂れて焦げる甘い香ばしい香りが辺りに漂う。
みんながゴクリと生唾を飲んでいる。
「良い匂い!匂いだけでご飯食べられそう!」と子供らがはしゃいでいる。
流石匂い戦術を毎日店で実行しているだけあって良く判ってらっしゃる。
「だろう? さ、これ焼けてるからみんな銘々で肉を取ってタレにチョンと浸けて白米と一緒に食べてみて。」と言って全員に焼けた肉を素早く分配する。
「「「頂きま~す♪」」」と全員が声を揃え、言われた様にタレに付けて肉をパクって口にいれて、ご飯を後追いで口に運ぶ。
「!!!!」と声にならない驚いた様な表情の後、蕩けた様な表情をするみんな。
「何ですか!?この『焼き肉』の美味さは!?滅茶苦茶美味しいじゃないですか!? タレ? いや、タレも最高だけど、このお肉!何のお肉ですか?口に入れた瞬間に噛んでも無いのに解ける様に溶けて行く感じ。いや、歯が肉に吸い込まれる? 最高に美味しいです!!」とアリーシアさんも大絶賛。
「トージよ、こりゃ、今まで食べた事無い、最高の肉じゃな? ダンジョンか?」と勘の良い師匠。
「流石ですね、師匠。そう、第34階層のミノタウロスの肉です。まさかここまで美味しいとは嬉しい誤算でした。」本当は美味い想定で頑張って3第4階層行きを励んでいたんだけど、そこは謙虚にね!
「えーー!?ミノタウロスのお肉なんですか!滅茶苦茶高級なんじゃ?」と言って、アワアワする、ソフィアちゃん。
「ハハハ、まあ希少って意味だと普通に出回らないからレアだけど、我が家は俺が取って来るから食べられるんだ。ささ、みんなドンドン食っちゃって!そんなシケた事気にせず、3年分ぐらいお腹に詰め込んで!」と俺が言うと、全員が「3年分は無理だー!」って言いながら吹き出していた。
その夕食ではかなり全員際限無く食っていたんだけど、ミノタウロス1匹分は食えなかった。
子供らは食べ盛りなのでもっとイケるかと思ったのだが、アッサリギブアップ。勿論師匠も女性陣も子供らほど食べられなくて、結局17名でガンガン食ってもミノタウロス1匹の半分くらいも食べられなかった。
これなら、焼き肉屋やってもそうそう、ミノタウロス狩りばかりって事にはならないかもな。と焼き肉屋お作るべきか悩む俺だった。
もっとも、俺が口外しなくとも、この日の焼き肉の美味しそうな匂いは街で噂になっており、数日後に商人ギルドの信者2人から詰め寄られる事となったのだった・・・。
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