第84話 王国に吹き荒れる謎の粛正事件 その1
トージがやり切って自宅に戻って眠りに着いた頃の話である。
このところ無駄に揉め事を持ち込む輩が居なくなった事で、漸く落ち着いた日々が続いている王宮の静かな朝の庭園にに悲鳴が響いた。
慌てて駆け着けた衛兵や近衛騎士達が目にしたのは、今にも気を失って倒れそうになっている第一王女を必死で支え助けを呼ぶ侍女の姿であった、
何故王族の第一王女がこの様な早朝に庭園を彷徨いていたのか? それはこの時期の早朝にしか咲かない美しい花が咲き乱れる美しい光景を見たいと侍女に命じて特別にこの時期にだけ王城の殆どが寝静まっている早朝に庭園まで出向くのが、ここ1週間の日課になって居たからである。
だがしかし、そんな王女を出迎えてくれたのは、咲き乱れる『トーレン花』ではなく口に自分のてをくわえさせられて気絶している禿げ豚貴族と、その周囲には口に同じく自分の切り取られたナニを咥えさせられている(闇ギルドの)チンピラまあ、全員生きては居るものの、禿げ豚貴族は両手両足を切断されて今後介護や補助が無ければ生きていけない様な状況。
周りを彩っているチンピラは足は付いているが、片手を失い、そして(トージがその場のノリで急遽追加した制裁)でナニも失ってしまった。
そして、ご丁寧に以前そこにあったドームが誰がやったのかを誇示するかのようにその存在をアピールしていた。
直ぐに第一王女はタンカによって自室へと運ばれ、庭園で無様を晒す事はなかったのだけは幸いであった。
直ぐにそのドームの中を調べるとそこには、トージが奴らに書かせた自白の告発文や、闇ギルドの全容等、闇ギルドに関わっている王侯貴族の情報等の資料が置かれていた。
驚く事にその無残な姿の1人は数ヶ月前に降爵されたばかりのガンテン子爵その人で、しかも帝国に内通しており、国家転覆と政権奪取を企んで居た事まで書かれていた。
そして、一通の封書は置かれて居り、サクラの花弁マークが描かれていた。
中の紙には簡素に2行の文章が書かれていた。
先にメダルを貰った際の話と違うようだが?
以前に宣言した通り本件に関わった者も組織もまたその組織を援助した者も、俺の周囲の安寧を脅かす物は全部潰す!
とだけ書かれていた。
もうここまで揃っていれば名前が書かれてなくても誰の仕業かは明白である。
ガンテン子爵とチンピラ達は直ぐに衛兵によって回収されて、直ぐに厳しい尋問が始まったのだが・・・。
何故か酷く怯えており、尋問官の挙動の1つ1つにビクビクしながら自分達が紙に書いた事と同じ内容を全て嘘偽り無く素直に自供したのだった。
余りにも素直に自供するので、尋問官は狐に抓まれた様な顔をしていた。
まさか、トージによって何周も回って天国と地獄を彷徨った調教の恩恵なのだが尋問官には想像も付かない。
時刻は朝の5時前ではあったが緊急事態と言う事で、急遽国王陛下が起こされ、近衛騎士団の3番隊の隊長より一部始終の報告を受けたのだった。
報告を全て聞いた国王は青い顔で暫く絶句していたが、
「あのバカ(ガンテン子爵)はそこまでも愚かだったのか? しかも帝国に内通だと!? あの時始末して置くべきだった・・・。」とこめかみを押さえつつ吐き捨てる様に呟いたのであった。
「おい、近衛騎士団の3番隊を引き連れてこの報告書にある闇ギルドを直ぐに全員引っ捕らえて参れ!」と3番隊の隊長に命じたが、
3番隊が闇ギルドの本部があるとされていた場所は既に廃墟と化しており、
闇ギルドのマスターから参謀や幹部連中、さらには構成員も全て殺され建物内は血の海となっていた。
その死体の大半は抵抗する間すら与えられずに額を何かで撃ち抜かれていた。
ご丁寧に帳簿や依頼等の資料は一度読まれた痕が残って居たがキッチリ残って居て関わりのある奴ら等の操作に役立ちそうであった。
隊長は証拠の資料等を直ぐに王城へ持ち帰る様に隊員に指示したのだった。
3番隊が王宮に戻り、ホッと一息着こうとしていた所に知らせがはいり、王都の貴族街にあるエグラード伯爵が何者かに襲われ亡くなったとの知らせを受けた。
そしてその知らせに続き、モンテーニュ子爵、ハルドール伯爵、モーラスト子爵も同様に襲撃を受けて亡くなったと言う事であった。
それらの貴族家に仕える者達は誰も気付かぬ内に犯行が行われたとの事で、誰も犯人を見て居なかった。
そして、王都から、闇ギルドとそれを支援した貴族家の殆どが何者かによって襲撃を受けて亡くなっていた。
こうして亡くなった貴族達はどれもが評判の良く無い連中であったので王都市民達の間にとある噂が実しやかに囁かれていた。
「あの貴族共は『御使い様』に敵対し滅ぼされた・・・」と。
どうやら王宮にも某かの『御使い様』による置き土産があったらしい。との噂から、王家が『御使い様』との約束を破った?とか言う殆ど真実の様なうわさまで流れていた。
国王は庭園の置き土産の事等の一切を誰にも話さない様にと箝口令を強いたのだが、何処からともなく噂が流れてしまい、大臣を含め国王も大変神経質になって、事態の収拾をどうした物か?と
一件の幕引きの筋書きを模索していたのであった・・・。
◇◇◇◇
人の噂も七十五日と言うが、この世界では伝達スピードが遅いだけにジワジワと広がるので、又聞きの又聞きが山彦の様に時間差で増えて行ってなかなか収束しなかったりする。
王宮はだ幕引きの良いシナリオを見いだせずにただピリピリとしているだけ。
またしても王宮の対応は煮え切らないと言うか対応が遅かった。
尤もトージとしては、特に関わりのあった貴族や商人や闇ギルドの関係者を抹殺しているので、王宮とは違い完全に終わった事として認識していた。
事件後暫くの間は冒険者による護衛を孤児院に着けていたが、トージが2日間の眠りから覚めて3日も経つ頃には護衛も終了となった。
理由は、孤児院に『護衛』と言うミスマッチな組み合わせが逆に目立ってしまい余計な者を引きつけるかもと言う配慮と今回の悪の元凶は既に元を絶っているので大丈夫だろうと言う判断によるものだ。
流石は孤児院育ちの子供達で、攫われた子達もトラウマやPTSDとして引き摺る事もなく、もうすっかり普段通りに元気にしている。
本当に逞しいものだ。
最初こそ、何か王宮側から動きがあるかも?と少し身構えて居たトージであったが、一連の事件から2週間も経つ頃にはすっかり忘れてしまっていた。
まあ、トージ本人が何も望んで居なかったし、そもそも何も期待してなかったからなのだが、そんなトージの心境を知らない国王陛下はまた例の如く、ウジウジと悩んでいたのだった。
■■■
トージ達はもう直ぐオープンとなるアンテナ・ショップの準備の追い込みに入っており、全員日々忙しく過ごしていた。
二期生を迎える為に新築していた宿舎も完成し、二期生も越して来てトージの家は前に増して賑やかになっていたのだった。
二期生はなかなかに優秀で、もう既に十分に戦力となって居た。
今週中にはアリーシアさんのオーダーした食器類も全部揃うので、届き次第
作り置きの料理の盛り付けに入る事となる。
そんな中、おれは例のストッカーのユニットの在庫分も作り上げて意気揚々としていた。
そしてオープンを来週に控えた頃、漸く王宮でとある事が決定されて、あの事件の幕引きを行う事になったのであった・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます