第82話 巻き込まれた子供達 その1

目覚ましく躍進中のマッシモだが、集まって来るのがまともな者ばかりとは限らない。


真っ当な商人が居れば、胡散臭さがプンプンする詐欺師やペテン師も居て何か美味しい裏家業のネタに出来ないかと虎視眈々と狙っている様子。


好事魔多しと言うが、『まさか』このマッシモでこんな事が起きるとは夢にも思っていなかった。


流石にそこまでは予測も警戒もそいていなかったのだ。


だって、言い訳をさせて貰えるのなら、全く・・・とは言わないが、寄付したり、卒園者の就職口を斡旋したりしている程度の浅い関係なのに、まさか孤児院の子供を攫って人質に取ってなにかを要求しようとするとは思わないだろ?


俺は単なる一支援者ってだけなんだが、それが逆に子供らに迷惑を掛ける存在になるなんて想像もしなかった。


先に言った様に二期生は宿舎が完成するまでは日々孤児院からの通いなのだが、何かで帰りが遅くなる際は必ず俺が送り届ける様にしていた。


日本程夕方近辺に子供が歩いていても99%悪い事が起きないにしてもやはり元日本人としては、心配になるから。

それに何かあってもスマホで即通報なんて出来ない訳だし。

殆ど元日本人の習性って感じだが、何かあってからでは遅いからな。


アンテナショップの方は物件は決まり、商人ギルドとアリーシアさんで店内の内装や、キッチンカウンターやシンクの高さなどを子供らの身長に合わせる為に踏み台を作って何度か子供らに経って貰ったりして作業のし易さの確認をしたりと余念が無い。

俺の作った新製品のストッカーはちゃんとキッチンカウンターのの後ろにキッチリ組み込んである。


アリーシアさんの仕事は店舗のプロデュースだけに止まらず、店舗で出す料理の器の発注も請け負っていて、それこそ、マジックバッグやストッカー有りきとは言え、もの凄い数のオーダーをしている。


商人ギルドの2人は、適当でも良いから早めにオープンしたがって居るらしいが、ちゃんと揃いの器が無いと子供らの甘露が大変になるからと、子を守る母親の様にカッチリと見切り発車を防いでくれているみたいだ。


まあ、器の方の納期にもよるが、店舗の工事も含んで、早くても来月後半になるんじゃないかと言う感じだ。


そうそう、この世界の食堂や小洒落た高級レストランでも、客が座っただけで冷たい水なんか出してくれる店はない。

勿論、セルフサービスで汲みに行こうにも、給水器も無いからね。

それを思うと、日本の食堂もラーメン屋もちゃんと氷入りの水を出してくれるから凄いよな!

って事で、まだまだオープンまで日がある事を良い事に、無駄なサービス心が芽生え氷入りの水を供給する給水器の魔道具を作成してしまった。


いや、ストッカーの備蓄在庫分の作成も完了してないから決して暇じゃ無いんだけどさ、氷入りの水が無料で出て来たらこの世界の人はどんな顔をするんだろう?って思ったら、作っちゃってた。


師匠からは、大変に呆れられてしまった。


「お主、随分と余裕があるようじゃのぅ~? 何無駄に高性能な魔道具をしれっと作っておるのじゃ?」って感じにお褒めの言葉とも取れそうな微妙なお言葉を頂いたのであった。


あ、最後に「褒めて居らんからの!」って言葉も追加されてたけどね。




■■■


そんな銘々が自分の受け持ちの仕事をきっちり熟してアンテナショップのオープンに向けて勤しんでいる時、孤児院の子供が2人泣きながら俺の所にやって来た。


勿論同じ街だし、何度も庭でのBBQなんかで来てるので、家の場所は知ってても不思議では無い。


ただ、5~6歳ぐらいの男の子2人が大泣きしながらやって来たきたのである。ただ事では無い。


ロンジー君とキャス君、割としっかりしているとは言え、まだ幼稚園生ぐらいの歳である。


泣きじゃくってヒックヒックとしている2人を落ち着かせながら、冷たいお水を出してやると、泣きながら走って来た事もあって美味しそうにゴクゴクと飲んでいた。


で、2人に泣いていた訳を聞いて、俺は血管の中を流れる血が沸騰しそうになるのをを必死で堪えるのであった。


2人が、孤児院近くの空き地で他の女の子も含んだ5人で遊んでいたら、冒険者と思わしき青年4人とおじさん2人の合計6人が

「坊主達は孤児院の子供か?」と聞いて来たらしい。


代表して、ロンジー君が「そうだよ。」と応えたら、ニヤリと笑いながら、更に「じゃあオオサワ商会のトージって知ってるだろ?」と言われそもそも俺が『オオサワ商会』って名前を孤児院では殆ど出してないので

「その何チャラ商会は知らないけど、トージ兄ちゃんの事だろ?肉のお兄ちゃんだろ?それなら知ってるけど。」と答えるといつの間にか用意していた麻袋に女の子を含む3人が袋に入れて停めてあった竜車の荷台に放り込まれて。

凄く怖い顔で言って来たらしい。


「良いか坊主、良く聞け! お友達とまた遊びたかったら、この事は誰にも言わず、トージにこの手紙を渡して、誰にも言わずに約束の場所に1人で来いと言っておけ!」良いか、衛兵にチクったら、お友達の指が無くなっちゃうよ?良いか!

衛兵にも誰にも言わず、手紙に書いてある物を持って時間までに1人で来る様に言うんだぞ!」と脅して来たらしい。


で、司祭様にも衛兵にも言えず、必死でここまで走ってきたらしい。

「そうか、それは怖かったな。偉いぞ!良くやった。後はトージ兄ちゃんに任せておけ! おーい、

クリスかリンダ居るか?ちょっとこっちに来てくれ。」と一期生の子で手の空いてそうな子を呼んで、事情を軽く話してロンジー君とキャス君の面倒を見る様にとお願いしたのであった。


そうそう、キャス君かなり耳が良い様で、青年達の会話をちゃんと聞いて覚えていたのだ。

不憫だよな。


「おう、これで、『あの落ち目のお貴族の旦那』から、たんまりと謝礼が出るんだよな?」と仲間同士でほくそ笑みながら話して居たらしい。

「ははは、その筈だぜ!格堕ちしたって言っても、腐ってもお貴族様だかんな!グフフフ。チョれ~仕事だぜ。でも此奴らもこんな(お貴族様の復習や憂さ晴らし)に巻き込まれて事で死んじゃうなんて、不憫だよな~。」


「ちげーねぇ!その分俺達が豪遊して弔ってやっからな。ガハハハ・・・。」と言ってたらしい。


どう言う事だ? これは?

俺への復習がメインってか?


俺の所為か!?

と余りの事に思わず血の気を失ってしまいそうになるのであった。


すまない、子供達。なんとしても無事に助け出すから、もう少しだけ辛抱してくれ!


女神マルーシャ様!今度極上の美味しいスィーツ、シュークリームを作って献上するので、是非とも子供らの安全を!


美味しいシュークリーム作りますから!!! と心の中で叫ぶ俺だった・・・。


もし子供らが無事じゃなかったら、この世界破壊しちゃうかも?

だから頼みます、マルーシャ様!


しかし関わった奴らもその落ち目の貴族も絶対に許さん!!!

心が折れるまで拷問して洗い浚い全部吐かせてやる!!!

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