第74話 マッシモ東ダンジョン その3
翌朝俺が目覚めた頃でも奴ら2人がガーガーと鼾を掻いて爆睡していた。
やはり、幾ら俺が寝ずの番をすると言ったからとは言え、この安心仕切った爆睡ップリは大物ですらあるな。
俺は元々ソロだし、前回の王都行きでマッシモの夜明けとの合同依頼を受けた程度で基本誰とも組んだ事はないが、パーティー単位での行動中であっても普通ここまで無防備はあり得ない気がするんだが?
そう考えると、やはり、もう1人の斥候から見放された説の信憑性が益々高くなって来るな。
俺は長くなりそうな一日の始まりを覚悟をしつつ、朝飯の準備をしてから2人を叩き起こすのであった。
俺が2人とはいえ、女性を不用意に振れるとセクハラ扱いになって、下手な噂流されたら堪った物じゃないので男の方、ジョンソン某を揺り動かして「起きろ!
」と声を掛けたが「むむむ、お肉多めです!」と訳の判らぬ寝言を漏らしていたので、バシンと頭を叩き文字通り叩き起こした。
「あれ?お肉の山が・・・あれ?アニキっすか?どうしました? あれ?朝っすかー? お早うございます。」とやっと目覚めて挨拶をして来た。
「お早う、今日中に第1階層抜けてダンジョン出る所まで送ってやるから急いで相棒を起こしてしまえ!」と俺が言うと、「ヘイ、アニキ!」と返事を返したのだった。
「おい、サラ、起きろ!朝飯だぞ!!サラっぴ!!」と俺が言いもしてない『朝飯』を餌に揺り起こす
「ムニャ、朝ご飯かぁ~。ジョンちん、おっはー!」と、緊張感無く目覚めるお年頃とは思えぬ様子の
思わず頭を抱えたくなってしまうが、2人にわざわざ水を用意して顔を洗わせるのも時間の無駄なので、強制的にウォッシュ&浄化でシャキッとさせた。
「アニキー、この魔法?凄いサッパリしますね!私、トージアニキん家の子になろうっかなぁ~」と俺の方を上目遣いで見上げてくるポンコツ2号。
「おいおい、サラっぴ、1人だけずりーぞ?」とツッコむポンコツ1号。
俺は何故この不毛なコントをこんな場所で見ているんだろう?とちょっとイラッとしたので、「お前ら巫山戯てないで、さっさと朝飯食って今日中にダンジョンの外に出るぞ!? 着いてこれなければ、容赦なく置いて行くからな!そもそも、別にお前らを外まで連れて行く義理も責任もメリットも俺にはないのだから。」と俺が冷めた声で言うと、ギクッとしながら俺の用意した朝飯を食い始めた。
昨日も思ったけど、アニキのご飯本当に美味しいっすね!」と俺の用意した飯を褒める
「ホントほんとーー!とてもダンジョンの中って思えないって、あれれ?このご飯って、もしかして、今
「あ!ホントだ!!そうだよ、サラっぴ!! これ、あのメニューだよ!!って事は、アニキ、トージ様?」と俺の事に気付いた様子であった。
「まあ、俺はトージだが・・・。お前らが最初に自分で言った様に外に出たら、ちゃんと今回の精算分をキッチリ払って貰うからな?」と俺が釘を刺すと若干顔が引き攣っていた。
そんな会話もありつつ、朝食を終えて、ドームを解除して消すと、元来た道を逆戻りである。
リポップしたのか、出てくる魔物をジャンジャン蹴散らし小走りでは無いが早歩き程度の速度でズイズイと進んで行く。
2人は余りにも俺がアッサリ魔弾だけで魔物を一掃するので、目を丸くして驚いている様子。
魔物の亡骸から、魔石すら取らないので、「アニキ!勿体なく無いですか?せめて、魔石だけでも?」と言うので、「遅れないなら、お前らが拾う分には俺は構わないぞ!遅れたら置いて行くだけだし。」と勝手に拾う事を許可すると2人で顔を見合わせてほくそ笑んで、
バタバタと走りながら、魔物の亡骸から、魔石や売り物になる部位を剥ぎ取り始めたのであった。
奴ら、剥ぎ取りの手際だけは良くて、結構良いスピードで歩いているのだが、遅れる事無く、自分らのリュックに必死で剥ぎ取った物を詰め込んでいる。
歩きながら俺は魔物は一掃するものの至って暇なので、剥ぎ取りの手際だけは良いので此奴らのポジションと言うかパーティー内での役割について疑問が湧き、それとなく話しを聞いてみた。
まず、ポンコツ1号ことジョンソン君は一応パーティーリーダーで、前衛の剣士ポジらしい。
しして、ポンコツ2号ことサラは後衛で弓矢を武器としたアーチャーらしい。何でも逃げてる最中に弓矢を無くしたと言う・・・。
なるほどね。そして、今回ここにいない彼らを見放した優秀な斥候が居る3人パーティーか。
これにタンク役が1人居ればかなりバランスの取れたパーティーなんだろうけどなぁ~。いや、犠牲者が1人増えるだけか。
こいつら自身が気付いてもっと修練に励んで地力を底上げして意識を変えないと、遅かれ早かれ何処かで死ぬだろうな。
何となく憎めない感じの奴らだが、冒険者に必要な何かが足りない様に感じるなぁ。
第3階層を逆行し、結構良いペース進む事2時間。
良い頃合いなので一端休憩を挟み、飲み水を出してやると、肩で息をしながらゴクゴクとみずを飲み干していた。
「あ、アニキ、凄いペースっすけど、何時もこんなハイペースで進んでるんっすか?」と少し疲労の陰を見せるポンコツ1号が聞いて来た。
「いや、何時もはもっと早いぞ? 今日はお前らにペースを合わせ、ユックリ目にしてるからな。」と応えると驚いていた。
そう、今回此奴らは戦力外なので、此奴らを狙う魔物まで俺が一手に引き受けている兼ね合いで、結構ペースを落としていたりするのだ。
10分程の休憩を終えると、また同じペースで歩き始める。もう直ぐ第2階層への階段がある筈である。
再び歩き始めて40分程で階段にたどり着いた。
「さあ、後一踏ん張りだ。第2階層はそんなに厳しく無いから、サクサクっと進むぞ!遅れるなよ!!」とややグッタリしている2人に檄を飛ばして階段を登って行く。
大した階段でも無いのに2人はフーフーと息をついていて、
「アニキ、少しだけ休憩と飲み水を!」と懇願するので、飲み水に加え、ちょっと早めではあるが、昼食を出してやるとにぱぁっと微笑んでさっきまでの疲れた風は何処へ行ったのか、ガツガツと食べ始めたのだった。
食後の休憩も込みで少し長めい休ませてからこれまでよりもやや早いペースで第2階層を走破して行く。
最初こそ一応調子良かったものの、直ぐに息が上がりだして、今では俺が一掃した、魔物の剥ぎ取りも出来ないと言うか一々屈んで魔物の亡骸を拾い上げる気力すら無いらしい。
適度なタイミングで回復魔法を掛けて筋肉を癒やしてやっているのだが余り効果が無い様だ。
だらしない奴らだ。
「お前らさ、言いたくはないけど同じ冒険者として、体力なさ過ぎじゃないか?もっと普段から鍛えておけよ!?」と思わず苦言を呈する程である。
実際、歳を聞くと、2人共に18歳で俺とタメで、確かに俺は専用ボディを貰ってはいるが、それでも、必死で鍛えたからこそ現在の俺があるのだ。
もっと頑張れよ!と言いたい。
◇◇◇◇
長かった・・・此奴らを何度の休ませ餌を与え、やっ第1階層に上がってライトで照らしてやって、4時間掛かり漸くダンジョンの出入り口が見えて来て一気に走ったら後ろで2人が派手に転けていた。
「痛ーーい!」と
そして、ダンジョンから出て、財布も落としたと言っていたので手切れ金代わりに1人銀貨2枚を渡して、「後は上手くやれよ!」と言って2人と別れたのであった。
俺はそこでUターンしてダンジョンへと再び戻って2人の引率に疲れたので自宅へとゲートで戻って久々に家族全員で夕食の食卓を囲みやっとホッとするのであった。
やっぱり、自宅に戻って、「お帰りなさい!」って笑顔で出迎えて貰えるって素晴らしいね!
こればっかりは、地球では手に入れられなかった物だな。
この幸福な空間は是が非でも俺が守り通さないといけない物だ。例え、ミサイルが降って来たとしても・・・。
と改めて心に誓うのだった。
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