第68話 キャンペーン その3

マッシュ君達の5日間のお手伝いのお陰で、コロッケもぽてとサラダもトンカツも、肉じゃが(糸コンニャク無しバージョン)もフライドポテトも唐揚げも沢山のストックと揚げる前段階の物も沢山作る事が出来た。

ほら、一応、実演して見せる必要あるからさ、よくあるTVのクッキング番組の『ここに30分寝かせた物があります・・・』って言うアレだよ。

実際にコロッケをジャガイモを蒸かす所からやったら、時間幾らあっても足りないので、衣を付ける段階とか、油で揚げる段階を観客に見せる予定だから。


一々馬鹿丁寧に調味料の分量とかをその場で見せちゃうとレシピの購入の異議が薄れるから。 そこはちゃんと考えてる訳。

そんな面倒な下拵えの各パートを子供達はちゃんと正確にキッチリやってくれたので、本当に助かったんだよ。


男の子達も女の子達は非常に料理センスが有り、出汁巻き卵も焼ける程に上達した。

驚く事に子供達は、俺の作るシーンや俺達がご飯を食べるところを見て箸の有用性というか、揚げ物や調理に菜箸使った方が有利って気付いたらしく、この5日間で箸を使える様になったんだよね。


ちょっと箸の持ち方の変な所を修正したりもしたけど、今じゃ器用に使いお熟している。


菜箸を駆使して料理を作る様は、一端の料理人である。


きっと、孤児院に帰ってからも練習したんだと思うんだよ。


ここまでヤル気を見せられたら、俺だってジーンと胸に来る訳です。


だから、今度は俺が彼らの頑張りに応える番だろ?


「なあ、お前達さあ、今日で一応今回の下拵えの仕事は終わるんだけど、商人ギルドで企画してるキャンペーンも手伝わないか? きっとお前達の良い見せ場にもなるぞ!」と俺が提案すると、


「はい、是非お願いします。」と言って来た。 うんうん。良いね!

「キャンペーン終わったら、お前達、引く手数多だぞー。」と俺が言うと、「えー、それはそれで嬉しいですが、出来ればトージ様の下でお仕えしたいです。」とマッシュ君が言うと全員が首肯している。


「そうか?お前達頑張ってくれたし、ヤル気も十分だし、俺はそれでも良いぞ! じゃあ、6人共孤児院出たら家に来るか? 余りは3部屋か? 庭に宿舎建てて繋げるか!?」と呟き、ラルゴさんに相談する事にしたのだった。


子供達は大喜びしてて、小躍りしていた。

女性陣3人もそんな子供らの幸せそうな笑顔を見てホッとした様な表情を見せて微笑んで居た。

やっぱり、この5日間で、女性陣も子供らと打ち解けて、何気に彼らの将来の去就を気にしていたみたい。


 ◇◇◇◇


俺の方の準備が終わった更に5日後、商人ギルドが初めて主催する試食会と言う名のレシピキャンペーン布教活動



イベント当日、会場となっている中央広場には、どうやら張り切ったロバートとルミーナさんによる口コミが凄かった様で、当初聞いていた以上の人が集まった。


俺は無縁な生活をして居たので知らなかったが、このマッシモにもマッシモ辺境伯以外の貴族が居たらしく、そこの料理人達や街の食堂や宿のの料理人等料理を生業とする人々がガッツリ集合しており、それを取り巻く様に噂を伝え聞いたマッシモの住民達が取り囲んで居る。


この状態を見ると、下手に俺とアリーシアさん達の4名でこのイベントに挑まなかった俺の判断を褒めたい気分である。

もしそんな事をしていたら、確実に燃え尽きて死んでしまった事だろう・・・。



商人ギルドのギルドマスターである、ロバートさんの仕切りと挨拶でイベントは始まった。


一品ぴいんの説明の前にまずはマイマイの肉巻きおにぎりや、竹カップに入れられた味噌汁が配られ、説明が始まった。


皆は初めて食べる白米のおにぎりに齧り付き、「おー!」とか「美味い!」とか呟き、味噌汁を飲んでその味噌と煮干しの出汁の味に唸っている。


更に、唐揚げで、唸り声が一際大きくなり、出汁巻き卵で、溜息が漏れ零れ、ポテトサラダにホッコリしたりと騒がしい状態だ。


肉じゃがを使った肉じゃがドンブリをガツガツ食う人在り、子供らが実演して調理して居る所を食い入る様に見る者在り、展示されているソイやソイペーストを小分けして貰い舐める人在りと。

凄い状況である。

レシピには無いが、ソイの活用例と言う事で、俺がBBQグリルで魚を焼いて、ソイをタラッと垂らすと、それだけで良い醤油の焦げる匂いが辺りに充満する。

揚げたてのコロッケにタルタルソースを点けて配ったり、フライドポテトを配ったりと忙しく対応する俺達。

こう言う揚げ物と言う調理方法の概念が無かったようで、民大量の油に驚いて居たが唐揚げやオークカツが揚げられるのを見て唸っていた。


焼けた焼き魚を解して大根おろしと一緒にこざらで提供すると、食べた人達が衝撃を受けた様で、凄い表情をしていた。

まあ魚自体も美味しい新鮮な物だけど、醤油との相性は格別だからな。


海苔を巻いたおにぎりも好評で、先程の味噌汁にも使われて居たと言う煮干しにも大変興味を持った様だ。


出汁を取る遣り方も実演して見せて、だし汁だけを竹カップで試飲させてやると唸っていた。


ミートボールの甘辛餡掛けの傍に展示してあった片栗粉にお湯を掛けてトロ味が付くのをみせると驚いたりと、色々面白い反応をしていたが、誰もが「これは商売の目玉になる!」と言う確信を持って、


商人ギルドのスタッフのエリアに行って我先にとレシピを購入していた様だ。


まあここまでで、済めばまだ良かったのだが、周囲を取り囲んだ一般市民達もご相伴に与ろうとこちらに雪崩れ込んでしまって収拾が付かない状況になってしまった。


飢饉等で炊き出しや配給食に群がって居る様なヤバイ状況になっていて、俺もアリーシアさん達も子供達もビビりまくっていた。


いざとなったら全員ヤるつつもりで何時でも抹殺出来るぐらいまでに魔力を準備し始めていたが、

出来れば折角の食文化の発展の為のイベントを台無しにしてしまいたくは無い。

結果、何とか衛兵まで出動する程の状態になったがギリギリで収まった・・・。


在庫が切れるまで配って納得して貰えたが、今回のイベントの主催者であり責任者のロバートさんは警備の冒険者を手配してなかった事を衛兵にコッテリ怒られていたのだった。

ホント、それだよ!俺は兎も角、子供達や家の女性陣に何かあったらどないするんじゃい!!?ってとこだよ。

暴徒の人数も10人や20人分ぐらいなら、まあ、しょうがないなで済ませるが、下手すると軽く100人ぐらいは居たと思うし、洒落にならない。


こちとら、危うく大虐殺の一歩手前まで行ったんやぞ!!と言いたい。


勿論、ロバートとルミーナさんには厳重抗議しておいたけどね!


暴徒化する客の前で毅然と対応してくれた子供達に何度もお礼を言って日当の他に怖かった分も少し加えてボーナスを支給したのであった。子供達は今日1日で日当込みで5万ギリーを稼いだ事になる。

歳の割に破格の稼ぎである事は間違い無い。

「良いか落としたりしない様に大事にするんだぞ!」tお一言釘を刺し、念の為に俺1人で孤児院まで送っていったのだった。


序でと言っては失礼だが、帰りに神殿の祭壇で祈りを捧げ、『ナンシー』様に久々の挨拶をして置いた。

「でかしたぞ、トージ!今回は貰ろうた合格のじゃ!」と超ご機嫌であった。


まあ、権限の無い『ナンシー』様に言っても意味は無いので、早々に終わって、本命のボス女神女神マルーシャ様のインターセプトを待って居ると、当然の様に現れる女神マルーシャ様。


「トージよ、あれは美味じゃぞ!とても良かったぞ!妾はもっと食べたいのじゃ!」と初っ端からクレクレコールをする女神マルーシャ様。


「そうですか、お口に合った様で何よりです。しかし、残念な事に日本の食の英知がないのであれで打ち止めです。本当なら、日本の食の英知が在れば、甘くて美味しいスイーツやら、コッテリしていてもサッパリ食べられるソースの作り方や、夢の様にフワフワのパンとか色々美味しい物を女神マルーシャ様にもお試し頂けるのに、非常に残念です!プリンなんて1度食べたらもう・・・。いや、お忘れ下さい。どうせ『日本の食の英知』が無ければ意味無い事故。」とおれが残念そうに言うと、


「なんじゃ、プリンとは、そんなに凄い物なのか?」とまんまと食い付く女神マルーシャ様。


「ええ、あのカルメラソースが掛かって、優しい蕩ける様な味と舌触りは、美しい女性に好まれて居りました。あと、私の大好きだった、シュークリームと言う美味しいスイーツがありましてね・・・シューのなかのカスタードクリームが本当に美味しいんですよね。」と俺が饒舌に語って、女神マルーシャ様が飲み込んだ釣り針をガッチリ奥に食い込ませる。


「誠か!?シュークリームも美味いのか!? トージ、『日本の食の英知』さえあれば実現するのじゃな?」と聞くので、「勿論、直の英知を利用出来てそれを製産出来る様な基礎知識も必要ですが、概ねイケると思って居ります。」と俺が言うと。

「じゃがのぉ~、お主だけで無く、もう一人の手駒にも『日本の食の英知』は行くぞ、良いのか?」と聞いて来た。


「ぶっちゃけ、あっちは苦労してるんでしょう?もう森から出ましたか?」と聞くとまだとの事である。

「では現状、『日本の食の英知』が加わっても、特に変化無いでしょう? それに、同胞が苦労してるのに何も手助け出来ないのもは辛いですから。」と答えたら、「判ったのじゃ。ちょっと英知を収拾してみるのじゃ。」と言って、接続が切れたのであった。


もう1人の手駒君、苦労して居る様だな・・・可哀想に。俺の作った和食ぐらい差し入れ為て遣りたい物だがな・・・。



尤も、あの「食わせろ!食わせろ!」と言って暴徒と化した一般市民にはアリーシアさん達もかなりビビった様で全てが終わった後はグテーっと家の床で伸びていたのだった。

こう言う時、畳の部屋が欲しくなるよね!?


兎に角、朝9つの鐘から、12つの鐘まで必死に頑張った甲斐があったとは思う。


だがもう2度とやりたくないがな・・・。


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何時もお読み頂きありがとうございます。


近況ノートにお知らせてお知らせして居りますが、来週の始め頃から引っ越しに入り、その後ネット環境が整うまでアップし辛い状況になるかも知れません。


予め、多めに予約を入れて置く予定ですが、ここ1週間程、引っ越し準備等でストックが減っているので、どれくらい予約投稿出来るか微妙なのです。

引っ越し直前に最後近況ノートにて引っ越し開始をお伝え致します。

なる早で復帰予定ですが、連日更新出来ずに途切れた場合もご迷惑をお掛けし申し訳ありませんが、ご容赦ください。


では今後も宜しくお願い致します。m(__)m

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