第66話 キャンペーン その1
俺の出したレシピのマヨネーズの美味しさを十分に知っている熱狂的信者のロバートとルミーナさん主導で
まあプッシュしてくれるのはありがたい事なので、無碍には出来ないんだよね・・・。
実際表向きはキャンペーンって銘打ってはいるが、彼らの目を見れば判る!
まんま、布教活動を目論む奴らと同じ様な雰囲気を醸し出している。
先日久々に溜まったレシピをマヨネーズのレシピと一緒に纏めて提出したんだけどその際にポテトサラダや、コロッケ、オークカツ、フライドポテト、タルタルソース、煮干しで出汁を取った豆腐とワカメの味噌汁とか、海苔を巻いたおにぎりとか、豆腐のレシピとか、オークカツ丼、それにカツ丼鍋と蓋のセットとか諸々を一気に登録したら、2人共にテンション上がりまくって。
全部試食し終わった後、お腹を苦しそうに擦りながら、フーフー言ってこれはもっと手っ取り早く広めなければってゴニョゴニョ言ってたけど、翌日には俺の所に来て、
「トージ様!!アリーシア様!
かなり強引な感じなのでちょっと突っ込んで聞いてみたら、既に近隣の都市や街の商人ギルドや貴族界隈にもう案内状を大量に出した後であった。
だから、退くに退けない状況で、やるかヤルの一択なんだそうだった。
まあ、そもそもの俺の目的や目標と方向は一致しているので、拒否はしないけど、もうちょっと下準備のの余裕とかも考えて欲しい物だ。 いや、考える考え無い以前にちゃんと相談すべき!って事だな。
いかん、どうも王都での理不尽な扱いで少し俺の中の判断基準が下方へいつの間にかスライドしていたみたいだ。
さて、そうなると、当日までの限られた時間内で当日に振る舞う大量の料理の材料の下拵えや、調理の助っ人が必要である。
幾ら俺の魔法があっても、ジャガイモの皮を一発で剥ける様な魔法は無い。
そこは地道に人の手でヤルしかないのだ。
俺達、4人の他に頼れそうな所と言えばラルゴさんの料理人ぐらいだけど、それだけじゃ足りないよな? ポテサラやコロッケだけでもどんだけ下拵えに掛かる事やら・・・。
料理自体は嫌いでは無いが大量に作る際の下拵え程嫌気のさす物は無い。
例えば、皮剥きとかの助っ人を何処かで雇えば多少は違うかな?。
なので、3人で話し合った結果、ラルゴさんの所の料理人や、孤児院の子らに下拵え等の手伝いをして貰う事にした。
聞けば孤児院には上は10歳ぐらいの子も居るって事だったし、何なら空き部屋もあるし、本格的に雇って料理とかを仕込んでも良いと思うし。
おっし、そうと決まれば子供でも安全に芋の皮剥きが出来るピーラーを作らねば!!と言う事で、竹で模型を作って、早速4人で鍛冶屋へGoだ!
こう言う微妙なカーブの間にスリットの様な刃って作れるんだろうか?
取りあえず成功しそうなら、最初10個で追加で50個ぐらいかな?
模型をみた鍛冶屋のオッチャンが絶句してたけど、用途や利点を説明すると「頑張ってみるぜ!」と言ってくれた。 まあ何時もの様に、「おう!任せとけ!」って軽く言わない辺り、結構難しいのだろう。
神殿裏の孤児院に行って司祭様にご挨拶をしつつ、用件を告げてみた。
「どうも、ご無沙汰しております。その後如何でしょうか? ああ、これ些少ですが、子供達の食事に一品多くしてあげるなり、使って下さい。」と寄付を渡して、
「ああ、トージ様、それはそれは・・・本日もですか?先日も大変多くの寄付を頂き恐縮しておりましたのに。本当にありがとうございます!お陰様であれから子供達にひもじい思いをさせずに済んでおります。」と嬉し気に恭しくお金の入った巾着袋を受け取る司祭様。
まあ、これがデップリ油ぎっちょの強欲が服着て歩いて居る様なお約束の着服司祭だったら、こんな事はしないが、この世界の司祭様は、王都も総出あった様にちゃんと聖職者なので安心出来る。
「いえ、ご心配無く。今日はお願いと言うかご相談もあって、伺いました。」と前置きをして、
今度大量に料理を作らないといけないので、皮剥きや野菜を洗ったりカットしてりの下拵えを手伝ってくれる子を探して居る事や、ちゃんと日当も払う事を伝えたら、
「なるほど、芋の皮剥きやそう言う簡単な事なら、家の子達は皆普段から手伝っておりますので大丈夫ですよ。」と言う司祭様。
「そうですか、量が量で、蒸した後に皮を剥いたり、結構体力使うと思うので、3名程居れば助かるのですが、10歳以上の子男女問わず、真面目にやってくれる子が居ないか希望者聞いて貰えませんか?」と俺が言うと、
「ええ、勿論良いですとも。3名より多くなってはだめですよね?」と逆に聞いて来たのだった。
「いえ、分担してやった方が良いと思うので、最低3名多くて5名くらいまでなら大丈夫かと。」と答えると嬉しそに頷いていた。
どうや、10歳以上の子供が6名だった様で出来れば全員に独り立ちする際の元手のお金を手に入れさせてやりたかったらしい。
「ふむ、そう言う事なら、もう少し増えても大丈夫ですよ?」と俺が言うと
「早速、子供らに話して来ます。」と小走りに孤児院の中に入って行ったのだった。
5分ぐらいすると、ニコニコ顔の司祭様が笑顔半分緊張半分の6名の子供を連れてやって来たのだった。
話によると、どうやら15歳で成人だが、人数の問題もあって、12歳になると孤児院から独り立ちしなくてはならないらしく、この子らは残り2年でそれなりの下地を作っておかねば卒園した後に悲惨な事になってしまうと言う事だ。
なので10歳ぐらいから積極的に外に働き口を求めたり、自分の将来の方向性を決めなければならないと言う。
10歳11歳辺りだと小学生5,6年生ぐらいだろうか? そう考えると非常に切ない気持ちになってしまう。
幸い、家には日本酒の醸造倉庫や、色々と細かい仕事は多いのだ。
希望して、適正がある様なら、今後も継続して雇って育てるのも良いだろう。
澱粉工場も作らないといけないからな・・・。
豆腐も安定して作って行きたいし。
そうか、10歳か、魔法教えたら伸びないかな? 実際魔法を使って大豆をすり潰したりとか、何でも1人で熟すのは結構大変なのである。
そう考えると、現在アリーシアさんや姉妹に教え始めて居る魔法の勉強と言うか修行に子供らを加えても何ら問題はないのだ。
これは良い事を思い付いたとほくそ笑む俺。
一掃の事、庭の空きスペースに子供ら用の宿舎作っちゃうか!? 最悪手狭になったら、引っ越すか周辺の土地も買って拡張って手もあるな。
今度、家の周辺の土地の売り物在ったら抑える様にルミーナさんに言って置こう!
てか、この帰りに商人ギルドに寄ってお願いしておこう。
ちょっと色々計画考えてると、楽しくなって来ちゃったよ。
それはさておき、緊張気味に佇む少年少女を放置して脳内で暴走してても拙いので、彼らに話し掛けた。
「こんにちは、トージと言います。一応、冒険者もやっているけど、『オオサワ商会』もやってます。今回司祭様にもお話ししたんだけど、うちの商会で登録している料理のレシピがあってね、それのキャンペーンで大量に料理を作る事になってさ。
下拵えとか大変なので、お手伝いしてくれる子が居無いかって相談したんだ。勿論日当も出すし、ちゃんと食事も付けるよ! やる無い様は、芋の皮剥きとか洗ったり切ったりとかが主な内容だよ。何か質問あれば遠慮無く聞いて。」と俺が言うと、1人の男の子が手を挙げた。
「はい、君、質問かな? どうぞ。」と言うと、モジモジとしながら、でも思い切った様にくちを開いた。「えっと、日当ってどれ位頂ける物なんでしょうか?」とストレートに聞いて来た。
「ああ、そうだね大事な事だもんね。良い質問だ。 一応、ちゃんと真面目に働いてくれたら、1日1万ギリー(銀貨1枚)を支払おうと思って居る。どうかな?」と俺が金額を言うと「「おおーー!」」と歓声が上がった。
そうだろうな。子供の給金は大人の半値が標準のこの世の中、余程下心や悪巧みやヤバイ仕事とかじゃ無い限り、日当に1万ギリーを払う奴なんて居ない。一応ヤバイ仕事に引っ掛からない様に釘を刺す事にした。
「まあ、普通だと、こんなに貰える仕事は相当ヤバい仕事と思わないとだめだぞ!? うちの様な所ばかりじゃないから気を付けてくれよ? ね? 司祭様」と司祭様に振ると、
「ええ、そうですよ、トージ様は以前から、孤児院に寄付して下さっているお方なので、安心しておりますが、普通は良くて5千ギリーくらいですね。みんなも今まで何度か働いて居るから知ってますよね?今回が特異な例と言う事をちゃんと理解して置いてくださいね!」と捕捉してくれた。
また他の女の子が手を挙げたので質問を聞くと、「もしかして、メイドや調理人の助手の仕事がこの後もあったりしませんか?」と先の事を聞いて来た。
「ああ、助手と言うか、何か私達に出来る様な仕事があったりしませんか?」と怖ず怖ずと聞いて来た。
「まあ、今の時点での確約は出来ないけど、某かの仕事はあると思うし、例えば俺の所の料理を覚えてくれればお店で料理作ったり、調理師の道もあるし、家の商会の仕事を手伝って貰ったりもあり得る。どれも道は0では無い。まだ君らも焦る時期じゃないんだろ? まずは一度今回のお手伝いしてみて色々考えれば良いんじゃないかな?
まあ今回の仕事終わっても、相談に乗るし。」と答えると、希望はありそうと理解して、嬉しそうに微笑んで居た。
自宅の住所と日時を教えて、商人ギルドによって、受付のルミーナさんに家の敷地の周囲が売りに出たら抑える様にお願いした。
「あら、トージ様、もっと敷地を広くなさりたいので?」と聞かれて頷くと、「少々割高になっても良ければ交渉致しますよ。」と言われて同意したのだった。
「お任せ下さい。」とルミーナさんが少しニヤリとして居た。
ああ、これって、丸っきり地上げだよな。と思いバブル期の頃の地上げ屋を題材にしたVシネマを思い出し内心で思わず苦笑いする俺。
まあ、商人ギルドのやる事だし阿漕な行為や迷惑行為とかはしないだろう・・・だよね?
Vシネマでは地上げの為の嫌がらせで、ダンプで突っ込んだり、バキュームカーで乗り付けてバラ撒いたりかなりヤバイ追い込み掛けてたけど・・・あくまで日本のVシネマのストーリーだし、無いよな?
そしてその帰り道で、子供らの使う包丁やナイフ類、とそれに作業着やタオル等を多めに購入しておく事にした。まあ、割烹着と言うか清潔な作業着とエプロンだな。
そうだ、清潔で思い出したけど、ここの孤児院にも風呂とトイレを作ってやらなきゃだな。
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