第63話 国家試験のお受験
翌日、(もう嫌がらせ週間は終わったので)王都の意気揚々と王城の方へ向かうと何時の戦闘メイド町娘バージョンの気配を察知した。
どうやら、律儀にも、まだ見守りを続けているらしい。 これって最後に一言言って明日から来ないとか言った方が良いのだろうか?
待ち惚けは可哀想だしな・・・。
そこで、俺は立ち止まって、手を振って、こっちに来る様にゼスチャーで示した。
最初こそ、ビクッとして、困惑気味だったが、再度、こっちに呼ぶと、俺の前に素早く現れ片膝を着いた。
「あ、いやいや、普通に立ってくれるかな? 一応気配と遠目でだけ見知った間柄だけど、別に変な意味で呼んだ訳じゃないから。
俺、これから、錬金術の国家試験受けに王城に行くけど、別にカチコミや殴り込みとか、害意有る訳じゃ無いし。これで合格したら、等分王都に来ないと思うので、先に君には教えて置こうと思ってさ。来ないのに一日中待ち惚けはキツイだろうと思ってね。
それにもう、問題ないなら、俺の動向を監視する必要無いんじゃないかと思うし。」と俺が言うと、戦闘メイドさんは驚いた様な表情をして、「それで態々教えて頂けたのですか!忝い。」とどこぞの武家のでのお嬢様?の様な台詞の後、頭を下げて来た。
「お姉さんも若くて綺麗なのに、こんな変な任務で怪しい男を付け回すとか、大変だよねぇ~? もっと良い職場あるんじゃないの? 人生の時間は有限だし。若くて綺麗な内にその時でないと味わえない大切な時間過ごした方が・・・あ、ゴメン余計な事だったか。まあお姉さんも王都に疲れたら、マッシモに来たら良いよ。マッシモは良い街だよ!これから急激に成長するし。食べ物も美味しいし、王都の様にヤバイ
お貴族様居ないし。安心して暮らせるよ!?」と言って、その場を離れたのであった。
良く判らんけど、結局、宮廷魔法局の錬金術課の入り口は王城の入り口から入るしかなく、何となく厭な予感もしたが、俺の姿を見た王城の門番が一瞬ギョとした様な気がするが、用件とメリンダ師匠の紹介状を見せて俺の身分証を見せると本の一瞬固まった後丁寧な会釈をして中に入れてくれた。
とは言え、何処に『宮廷魔法局の錬金術課』があるのか判らずに門番に尋ねると、なんと驚いた事に先程別れた筈の戦闘メイドさんが、本来のメイド服で現れて、
「トージ様、僭越ながら私が『宮廷魔法局の錬金術課』までご案内致します。」と申し出てくれた。正に忍者の様な早着替え?である。凄いなーと関心しつつ、「じゃあ、申し訳無いけどお姉さんに案内お願いします。悪いね。任務外の事なのに。」と言うと
「いえ、こうして知り合ったのも何かの縁ですから。お気になさらずに。」と言ってくれたのであった。
いや、案内して貰って大正解。 俺一人だったた、迷って遭難してたよ。 マジで迷路の様な判り辛い道でさ、これはここに住んでる人も、仕事して居る人もキツイだろうなって思ったよ。
漸く『宮廷魔法局の錬金術課』に着いたのは王城の城門に入ってから15分ぐらい経っていた。
「トージ様、こちらが『宮廷魔法局の錬金術課』になります。ちょっとだけこちらでお待ち頂けますか?」といって、入り口で待たされる事5分、漸く笑顔の戦闘メイドのお姉さんが顔を見せて内部の錬金術課の国家試験の受け絵付けへと案内してくれた。
書類一式と身分証を見せると、何故か恭しい対応で、
「はい、では本日このまま試験受けられますか?それとも後日が宜しければ後日でも可能ですが?」と言われ、「ああ、直ぐ受けられるのであれば、このまま直ぐに受けたいです。」と言うと、
そのまま試験会場となる、錬金術室へと連れて来られたのだった。案内してくれた戦闘メイドのお姉さんにお礼を言おうと振り返ると既にその姿は無く、何処かに消えていた。
それから、1時間程かけて、錬金術に関する筆記試験、ルーン文字の意味を各問題や簡単な魔動具の作成、ポーションの作成を経て全ての項目をやり終えた。
試験官というか、監視官と言うべきかは、俺のの作った魔動具(正確には魔方陣の刻印に入れた魔導インク)に驚き、更に俺の作ったポーション3種×3グレードの出来映えに唖然としていた。
確かに良い出来だったとは思うが、唖然とする程とは・・・。
折角良い出来だったので、先程俺が調合して作った魔導インクの余りを貰えないかと聞いたところ、残念ながら却下されたのであった。
この時トージは知らなかったが、トージの作った『魔導インク』は実に素晴らしい物で、錬金術師なら誰しもが欲しがる超高級グレードの一品となっていたのであった。
結果が出るまで、30分程掛かると言われ、待つ事にしたのだが、その間にトージの作った物の争奪戦が裏で行われていたが、急いでやって来た王宮の大臣の配下によって没収されてしまった様だ。
まあ、一切トージの知らぬ裏舞台での出来事である。
実力的に全く問題が無く、師匠は誰もが師事を夢見る伝説のミランダ様である。文句の付けようが無い。結局王宮がわからの強い推しもあって、トージは特級錬金術師の資格を得る事となった。
ここでトージが幸運だったのは件の戦闘メイドに一言伝えた事である。
それがなければ、既得権益を守る為に、なかなか『特級』を出さない『錬金術課』が王宮の圧もあって、正常な判断結果を出したのだった。
それがなければ、上級になって居た事だろう・・・。
待合室で自分の出したお茶を飲んでいると呼ばれ、慌てて片付けて受付へ行くと、
「トージ様、おめでとうございます。大変優秀な結果でしたので、満場一致で『特級錬金術師』となりました。こちらがその錬金術師の資格を示すカードとなっております。無くされると、再発行には鐘が別途掛かり増すのでご注意下さい。」と言われ、何やら、怪しい紫に輝く金属のカードを渡された。
「ほー、ヒヒイロカネのカードですか。凄い!」と関心すると、「良く一目で素材を言い当てられましたね。流石です。」と変な持ち上げられ方をしたのであった。
その後、新規の魔動具を作った際は、商人ギルドに登録する事で自動的に『宮廷魔法局の錬金術課』にも登録されるのでご安心下さいと言われたが、何が安心なのか疑問だっただ、様は特許の様な仕組みが発動すると言う説明を受けて納得するのであった。
やっと諸々の「説明を受け終わり、ここの迷路をショートカットして師匠に報告しに行こうかと考えていたら、どこからともなく荷物を持った、戦闘メイドのお姉さんが現れ、
「トージ様、『特級錬金術師』の合格おめでとうございます。陛下もお祝いを申したいと仰っておりましたが、余計なご迷惑をお掛けする事になるのでご遠慮されるとの事でした。代わって私の方から、お祝いを申す様にと言いつかって居ります。」と言う
「そうでしたか。ご配慮ありがとうございます。では、本日は案内して頂いて本当に助かりました。」とお礼を言って別れようとしたのだが、「いえ、案内させて頂きます。」と言われ大人しく従う事にしたのであった。
城門までの途次、「トージ様、トージ様の所ではメイドの求職はしておられますでしょうか?」と、妙な事を聞いて来た。
「は? いや特に募集もしてないけど。こじんまりとやってる程度だからね。」と答えると、凄く悲しそうな表情で、思い詰めた様な感じを見せて居た。
「それは困りました・・・」と割と女に免疫の薄い俺でも判るぐらいに態とらしい演技である。
そんな事を内心で考えていると、ポツリポツリと話始めるお姉さん。
簡単に言うと、俺がここに来なくなると職がなくなると言って配下に加えて貰えと言う、王様で無くて、大臣の意向なんだそうな・・・。
「え?それ言っちゃって平気なの?」と俺が心配して言うと、
「いや、どう考えても嘘臭い理由じゃないですか。それなら正攻法で正直にお話した方が少なくともトージ様の信頼は得られるかと。」と凄く真っ当な意見を述べた。
「なるほど。確かにな。女性慣れしてない俺でさえ判る話だし、無理だよな。ハハハ。」と俺が同意して笑うと、お姉さんも笑っていた。
「まあでも仕事は本当にそろそろ疲れて限界なので、仰る様にマッシモに移住しようかとと考えたのは本当です。やはり王宮は色々な権力と思惑が入り乱れて居りまして疲れました。」と溜息を付いていた。
「そうか。そうだろうな・・・。おれなら、3日も耐えられん。もっと自由に活き活きと生きて行きたいからな。」と俺が言うと「そう、それですよ。トージ様のお側に居る3名の方は本当に楽しそうで活き活きとされてますから。羨ましい限りです。もし本当に王宮を辞めてマッシモに行ったら、私も活き活きと暮らせるでしょうか?」と聞いて来た。
「どうかな?まあ仕事は今街の方で大きな開拓やってるから、選ばなければそれなりに仕事はあると思うぞ。」と俺が言うと、
「そうですか、もしマッシモでお会いしたら、相談に載って頂けますか? その際にはここでの柵をキッチリと断って置きますので・・・。あ、私の名前は、ラフティと申します。お忘れなき様に!」と言い終わったところで城門に辿り打つ居たのであった。
これがハニトラなのか、非常に悩ましい所だ。
俺は、メリンダ師匠の所に寄って、『特級錬金術師』になった事を報告した。
マッシモの自宅で打ち上げするので来ませんか?とお誘いすると嬉しそうに頷いていたのだった。
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