第55話 国王の苦悩

トージ・・・いやトージ様をそれとなく見守らせていた特別任務トージの見守り任務中の特警隊員ラフティ戦闘メイドから本日あった血の気が引く様な出来事の報告を受けてしまった!!!


何と、トージ様とよりによって、うちの次男の祖父であるガンテン伯爵の乗る竜車が平民の親子を轢く場面に遭遇し、トージ様の『身内』が咄嗟に庇って跳ね飛ばされてしまって、一時的に大量の出血を伴う重傷を負ったとの話だ。


その後親子を踏みつけていた竜を持ち上げて親子と跳ね飛ばされたお仲間の女性の3名を治療即座に治療し、普通なら死亡していても不思議では無いのに・・・その親子は無事にトージ様によって逃がされたらしいが、その後が良く無かった。


何と激昂したガンテン伯爵の『護衛騎士』があろう事か、全く危害を加えてもいないトージ様を市民の見守る中で罵倒して問答無用に剣で斬り付けたと言う・・・。


もう返す言葉も無い。




しかも、騎士が本気で斬り付けた筈なのに、鉄の塊?いや岩を斬り付けたかの様なガキンと言う音と共に剣が弾かれ折れてしまったと言う。

生身の身体に斬り付けて剣の方が折れるって何?もう意味が判らんぞ!




まったく、ガンテン伯爵とその護衛騎士は何やってくれとるのじゃ!?と。



本来であれば、既にトージ様とラルゴ達はマッシモに戻って居る時期の筈なのじゃ。


いや、そもそも、大臣達に『早急』に詳細を詰めて報告様に命じたが、そもそも決まった詳細を儂は聞いておらんのじゃが。



大臣達に問い詰めると貴族達の誇りを傷付けない様に摺り合わせをとか色々言っておったが、どうやらじゃ、次男の母親である側妃の方から親元であるガンテン伯爵の方へ泣き付いて横槍が入ったと言うのもある様だ。


うむ・・・こうして考えると、全ての悪の元凶の1つは『ガンテン伯爵』に大きく関わってないか?


聞けばこの時も次男の件で画策する為に登城の途中だったとか・・・。


そしてトージ様は意味深な言葉を残して人混みの中に消えたらしい・・・。

「気を付けてろ!次・・・手遅れだ。」と。(やや離れた位置に居たラフティ戦闘メイドが喧噪の中で漏れ聞いた言葉)



『もう手遅れなのか!? ・・・・』



いかん!いかん!!!手遅れなんかにしてはいかんのじゃ!


忌々しいガンテン伯爵め! 一番拙いタイミングに余計な油を注ぎよって!


彼奴は娘を側妃に迎えてから、特に悪い噂や目に余る態度が後を絶たない・・・。


義理の父と思って野放しにしてしまった儂の所為じゃ。



息子を処分したりはしたくないのじゃが、彼奴の性根を入れ替えねば、長男が継いだ後に禍根を残しかねない。

王位継承権の剥奪と隣国に婿にでも出す方向にするのが一番無難じゃろう・・・。

側妃の事も愛しておるが、彼奴を傲り高ぶった者にしてしまったのも『ガンテン伯爵』を父に持つ母親側妃の影響は拭えぬ故、ここは離縁して実家に返した方が良いか?

いや、そうすると、同じ側妃の血を引く三女の立場が拙い事になる・・・。まだまだ幼い子に母と離れ離れは避けたい。


まずは、今回余計な事をしてくれた『ガンテン伯爵』の処分から始めるとしよう・・・。


国益を損なう処か、国の存亡に関わる事態を引き起こした責任は重い。降爵は致し方無かろう。子爵ぐらいで良いだろうし、領地も縮小で子爵位に丁度良いぐらいに減らしてしまえ!

資産の半分は罰金として没収だな! そしてこの機会に徹底的にガンテン伯爵家の悪事の有無を洗い出してやる!


儂と同じ様に眠れぬ夜を過ごさせてやる!!!


そう心に決めた儂は直ぐに従者に命じ大臣以下の閣僚に招集を掛けるのであった。


次男第二王子と件の護衛騎士イソギンチャクの処分を決定した。

護衛騎士イソギンチャクは騎士爵の剥奪し平民に堕とした。

更に護衛騎士イソギンチャクが増長する環境を作り、国王が招待した来客に無礼を働いた責を取らせる形で、王位継承権の剥奪と嫁ぎ先が決定するまで、東の塔への幽閉を決定した。


側妃・・・ああ・・・側妃には・・・言いたくは無いが権限を大幅に減らし、実家への接触や働きかける様に扇動する事を堅く禁じ、以前の様には好き勝手にさせない様にした・・・。

三女には影響は無い筈だ。

先に決心した通りにガンテン伯爵は子爵位に降爵。

領地も子爵位に相応しい広さへと半減させ、資産は半分を罰金として没収する書面を作り、即座にサインして国王の玉印を押した。

更に査察部にガンテン元伯爵の徹底調査を命じた。


あと、以前に命じたトージ様への特別の権利と立場を保証する件の報告と実行を至急報告する様に命じた。


大臣達が、これを実施するに際して、かなりの貴族からの抗議が来る事が予想されるとの警告を受けるが、「その貴族共もこの際一気に処罰の対象にせよ。」と命じたら大臣以下閣僚から、驚きの声が漏れていた。

これで儂の本気度が伝わっただろう・・・。


トージ様はお許し下さるだろうか?


■■■


それからの5日間で、王国全体にいや、王国の貴族社会に衝撃が走った。


身分に関係無く新たに発行されるオリハルコン製のメダルを持つ『御使い様』とその仲間に対し理不尽や無理強い等の一切を禁じると言う国王令が発表されたからである。

しかも驚きなのは、そのメダルを持つ者は法に関係なく、自身やその周囲の者を守る為の報復も自衛も不問にすると言う物だ。

この国王令には多くの貴族が反発し、多くの貴族が大小の差こそあれ、処罰を受ける事となったのであった・・・。


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