第54話 理由不明の帰郷延期と出来事 その2
3人の気配で居場所を察知した俺は直ぐに合流して、全員の無事を祝った。
ただ、揉め事の原因をつくってしまったソフィアちゃんの顔色は蒼白で、出血のショックと大事に発展為てしまった事への自責の念で今にも泣き崩れそうな状態であった。
兎に角早く横にならせて休ませる事が先決と判断して路地裏から、ゲートで王都の自宅へとショートカットしたのであった。
もしかすると、誰かに見られるかも知れないが、もうここに至っては半ばどうでも良い事に思えた・・・いや、ヤケを起こして居る訳じゃ無いけどね。
ソフィアちゃんを部屋のベッドで寝かせ、ソリアさんに何も問題無い、安心為て良いと言う事を言い含め、後を任せ、アリーシアさんと2人で自宅を後にしたのだった。
俺達はは、直ぐにラルゴさんの所へと赴いて、直談判するのであった。
通された応接室で、
「ラルゴさん、いい加減オークションから2週間ですよ? もう帰りましょう! このまま王都に居ても碌な事ないですよ!? さっきも揉め事に巻き込まれそうになったし。 帰らないなら、依頼失敗扱いでも良いです。俺達は帰りますんで。」と俺が言うと、
「いやトージ様、それはちょっと!もう少々だけ! もう少しだけ!」と不自然に焦る様子のラルゴさん。
「何の用事あるんです? まあオークション自体は俺の絡んだ内容なので、出来る限り安全に気を配って護衛しましたけど、ここまで居るのは契約内容外だと思うのですよ。早く帰ってソイやマイマイの件を進めなきゃならないのに。」とそもそもの依頼の契約内容を盾に攻めてみた。
第一目的の王都にも安全に着いた、そしてオークションも終わった。なら、帰るでしょ?」と俺が詰めると、今まで決断の早いラルゴさんにしては別人か?と思う程に端切れが悪かった・・・違和感が半端ない。
とは言え、そんな違和感を吹き飛ばしてしまう程にダラダラと先延ばしにされた事で、結果俺の庇護下のソフィアちゃんの身に危険が及んだ事が非常に腹立たしく、そんな状態を作ってしまった自分が許せなかった・・・。
まあ、ラルゴさんの所為ではないのかも知れないが・・・。
埒があかないと判断した俺は、直ぐに切り替えて、ラルゴさんの所をお暇して自宅へと戻ったのだった。
明日には安全で平穏なマッシモに帰る予定で!!!
ラルゴさんの所からの帰り道、アリーシアさんが微笑みながら俺に話し掛けて来た。
「トージ様、当初はあの2人を配下に置く事も傍に置く事さえあんなに躊躇されてたのに、いざとなったら、あの子達をちゃんと仲間の一員と庇ってあの貴族に対してあんなにお怒りになって・・・本当に優しいお方ですね!?流石は私達のお慕いするトージ様です!」と俺の気持ちの変化を察して茶化すでもなく褒めてくれている様であった。
「うん、まあ確かにそうだな。最初は何かアリーシアさんも含めそう言う目的で若い女性を周囲に侍らせていると誤解されるのが厭だし、そう言う風に変に期待を持たせたりしないで、みんながそれぞれに幸せに暮らせて欲しいって気持ちだったんだけど、何かこうして4人で居るのも悪く無いなって、変に身構えずに自然と一緒に居る事が普通と思える様になったんだよね。
ごめんね。何か色々気を遣わせちゃって・・・。」と俺が自分の機持ちの変化を吐露すると、
「大丈夫ですよ、私もあの2人もちゃんとトージ様のお気持ちもお優しさも理解した上でお側に居させて頂いてますので。ご安心下さい。私達はどんな時でも貴方様の味方ですから。」とハッキリとした口調で明確に告げてくれたのだった。
「そうか、ありがとう!本当にありがとう。」と何とか油断すると零れそうになる涙を零さずにお礼を言うのだった。
ここ何年もそんな事を言ってくれる味方が居なかった気がする・・・本当に転生出来て良かった。
明日は旅立つつもりなので、アリーシアさんと2人で自宅までの帰り道、王都で購入すべき物を買い物して廻り、2人の待つ自宅へと帰還するのであった。
自宅に戻ってから、ちょっと出血と精神的なショックで弱ったソフィアちゃんと同じく妹の事や俺に対する姉妹の姉としての自責の念から故なのか、気遣いか?やはり元無いソリアさんを元気付ける為にもアッサリとした物と言う事で、こちらの世界初の手打ちうどんに挑戦してみた。
まずは、麺棒を作る所から始め、小麦粉を篩に掛けて、石で作ったボウルに入れた小麦粉に塩水を入れて、ウォッシュを掛けて浄化した手で捏ねる。 そして捏ねる!
ポロポロとして来た所で一纏めにして、土魔法で作った大理石調の天板の上に打ち粉をして、それを麺棒で伸ばして行く。日本に居る頃はビニール袋等に入れて足で踏んだりして居たが、まさか、幾ら『ウォッシュ&浄化』したと言っても素足で踏んだ物を食うのも厭なので、今回は、手と麺棒のみである。
3mmぐらいの厚みに伸ばしたら折りたたみ、包丁で5mm幅ぐらいでカットして行く。
寸胴にお湯を沸かして10分程茹でて、頃合いを見てザルに取って冷水でぬめりを取りつつ締めて、麺は完成である。
これに昆布っぽい海藻で白出汁を取って、ソイと塩、砂糖少々そして自作のみりんぽい物を使って味を整え、溶き卵を熱したそのうどんのスープの鍋に中に溶き卵で線を描く様に垂らして行く。サッと茹で直した麺をドンブリに移して、作った錦糸卵?入りのうどんの汁を掛けて、小ネギをカットした物を上に掛けて出来上がりである。
ソフィアちゃんの部屋に居る2人を呼んで来て、伸びる前に『頂きます』をして、いざ実食だ。
「ああ、上手く出来た!」思わず久々のうどんの出来映えに自画自賛というか、安堵の言葉を漏らす俺。
「トージ様、この『うどん』ってツルツルしてて、美味しいです!私これ大好きです!」と一気に元気になったソフィアちゃんが言って来た。
「トージ様、これ美味しいです。私もこれアッサリしてて好きかも。」とアリーシアさんもソリアさん同様に褒めてくれた。
俺、麵類全般に好きなのだけど、うどんも大好きで、よく自分で打って食べて居た。
お袋仕込みの手打ち麺だ。
オヤジは蕎麦好きで、自分で打ってよく俺達に振る舞ってくれたが、まあ、麺の太さが区々で素人感バリバリの蕎麦だったが、麺切り様の一定間隔でカット出来る文明の利器を手に入れてからは、凄く美味しくなったのを思い出した。
今度蕎麦の実を見つけたら、蕎麦にもチャレンジしたいな。
「この『うどん』、絶対に流行りますよ!レシピ登録為ましょうよ!」と妙にテンションの高いソフィアちゃんの言葉に、残る2人も
「確かに、これは絶対に流行ますね!」と賛同していた。
「そうだな、レシピを登録するにしても、まずはマッシモに帰ってからだな。まあ、出汁用の昆布はゴザレオ産なんだけどね。今の内に沢山ストックしとかないとな!」と言って、明日の帰郷を再度決意するのであった。
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何時もお読み頂き、誠にありがとうございます。
皆様のコメントや、★や応援、非常に励みになっております。
この新作が皆様に受け入れて貰えるか心配為ておりましたが日々ジワジワと順位も上がっているようで、ちょっとホッとしております。
さて、話は変わって当方の私的な事なのですが、近々に引っ越しをせねばならず、一応早めに公開予約を入れてラグが無い様にする予定ですが、最悪、数日投稿出来ない日が何日かある可能性があります。
予めご了承下さい。m(__)m
多分、死んでは無い筈なので、少々お待たせするかも知れませんが、お待ち下さい。
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