第53話 理由不明の帰郷延期と出来事 その1
そろそろ、オークションから1週間が経とうとしている。
どうする気なのかラルゴさんに尋ねると、何か知らないが、王宮の方から、もの凄い低姿勢であともう少しだけと遅延金まで払ってまたされて居るらしい。
そろそろマッシモに帰らないと俺もラルゴさんもヤル事が沢山溜まっているのだ。
料理のレシピに関しての登録だけで、ザッと10件程。勿論コロッケやメンチカツ、オークカツもあるし、ポテトサラダもあるが、これはマヨネーズを世に出すにが先なので一旦保留にしている。
いや、マヨネーズ、おれが作るだけなら良いんだけどさ、先日魔動具を作らないかと打診して断られた事が原因で保留にしたのである。
日本の卵は安全って言われているけど、地球でも世界的に見ると、サルモネラ菌で生はヤバイってなってるみたいじゃん?
どっかの外国人が日本に来て日本人の友人がTKG食うのを見て、「お前!正気か!?」って止めたと言う笑い話聞いた事もあるし。
世の中には真空でも生き残る菌もいるし、ましてやここは異世界。 どんな菌が居るか判らん訳で、俺の考案した?レシピ通り卵使ってマヨネーズ作ったら死にましたじゃ笑えないじゃん?
俺は毎回卵を使う際に殺菌の浄化を行って使ってるから大丈夫なんだけど、魔法使えない人には無理じゃん?
だから、浄化の魔動具作りたかったんだよね・・・と言う事でマヨネーズはもうちょっと保留中。
あと、鶏ガラスープのレシピも登録する予定だ。これの利用によって、既存の料理の味が格段に向上するだろう。
調味料?と言う事だと、片栗粉の製法の登録しようかと、一応書類は作成済み。
待ってる間に王都の鍛冶屋に頼んで中華鍋を10個、中華料理に使うお玉も同数程作って貰った。
まあ鍛えて居る俺は良いんだが、鉄製のお玉は意外に重く、結果、柄の部分は木の棒にする等して軽量化して貰った。
中華鍋が揃ったと言う事は、もう判ると思うが、チャーハンが作れると言う事である。
この中華鍋だが、鍛冶屋のオヤジが同じ物を作って売りたいと言うので、思案した結果、ラルゴさんの所を巻き込んで、石鍋と同じ様なライセンス品扱いにする事にして、製品として商人ギルドに登録した。
ゴザレオの街に何度か赴き、確認すると、あの姉妹、案の定、余りまともな食事を取って居無かった。
聞けば、料理自体チャントに習った事も無く、何をどうすれば良いのかが判らないのだと言う事だった。
だから出来合の物を買って来て朝昼兼用で済ませたりとか、そんな感じだったそうだ。
そもそもそう言う環境に育って無ければ仕方無いのかも知れない・・・。
それに、一番の問題は、字の読み書きが出来ず、簡単な計算も怪しかった。
彼女らは孤児院出身らしく、ゴザレオの孤児院では流石に其処までの手が廻らなかったのか、入る歳やタイミングが悪かったのか、ちょっと可哀想に思える状況であった。
なので、現在しまいは王都の自宅に呼んで住まわせて、読み書きと簡単な足し算引き算ぐらいの勉強を含め料理の特訓をして居る最中だ。
アリーシアさんはこれでもかなり一緒に居るので俺の料理の基本的な幾つかはマスターして居るし、料理のセンスも良い。
なので、3人一緒に俺が講師となって特訓して居る状態だ。
芋の皮剥き等の基本的な事の幾つかはアリーシアさんが教えてくれているし。
一応姉妹、芋の皮剥きぐらいは孤児院でやっていたらしく、出来て居たけどね。
そんな訳で、ここ数日は王都の自宅でノンビリしつつ、師匠から頂いた錬金術関連の本を読み込んでいる。
合間合間で、豆腐作ろうと思ってさ、ゴザレオの海から海水汲んで来て、『苦り』をゲットしといた!
序でに塩も作ったけどね。
俺の記憶だと、豆乳に苦りを『投入』擦れば良いんだよな?
大豆を一晩程水に漬けておいて、ふっくら水を含んだ大豆を
土魔法で石臼作って、桶の中に置いて、大豆をぶっ込んでゴロゴロと粉砕してたけど、何か思ったより時間掛かってしまうので、方針変更!
かったるくい石臼は中止して、無属性魔法で無理矢理擦り潰して大豆の
小学校の頃に友達の家が豆腐屋さんでよく遊びに行って出来たての豆腐(寄せ豆腐とか)食わせて貰ったのが良かったよ!! ありがとう!!高田君パパ!!
でだ、豆乳を入れた鍋を火に掛けて温めて適当に火を通してっと・・・・冷めた頃合いを見計らって、布を使って濾して絞って豆乳とおからに分ける。
そして、豆乳を再度鍋で温めて・・・全く適量が判らないのだけど、少しづつ苦りを溶いた水を加えてみた。
適量の割合が判ったのは、4回程失敗した後だったけど、漸く成功したっぽいのでドンマイだ!!
ショウガも醤油も小ネギもあるが、鰹節がないのが寂しい気もするけど、でも、この1歩は俺に取って大きい1歩だから。
そうそう、木綿っぽい少し良い庶民用の服に使われる布生地だと、『木綿豆腐』ケープ・スパイダー糸の超高級生地を使って、やってみたが上手く行かなかった・・・『絹豆腐』はちょっと違うのか、使う木綿をケープ・スパイダー糸の超高級生地に帰るだけでは駄目らしい。
まあ、スパイダー糸の超高級生地は単価が高すぎてスパーとかで一丁100円ぐらいで売って居る感覚の絹豆腐の様に安価に作れないので何時か『日本の食の英知』が手に入る時までペンディングにしておこう。
普段使いは通称『木綿豆腐』で十分過ぎると思う。
出来上がった豆腐が冷えた頃、3人を呼んで、この世界初の冷や奴を楽しんだ。
まあ醤油かけないと、冷や奴って割と惚けた味なんだけど、失敗4回、苦心した事もあって、思わず涙ぐむ程に美味く感じた。
3人も喜んで食べて、美味しいって言ってくれたけど、俺程の感動は無かったみたい。
寧ろ、ワカメっぽい海藻と豆腐の味噌汁の方がドンピシャだった様で喜んでお替わりまでしてた。
毎日ボーッと本だけ読んで居るみたいに思われるけど、意外にチョコマカと動いていたんだよね。
折角なので、ここ最近の課題の1つでもあった和風出汁問題を解決しようかと。
ここ最近、王都に姉妹が来てるので、無人のゴザレオの家だけど、ちゃんと俺が利用してる。
鰹節が無いなら作れば良いけど、出汁が取れるのは何も鰹節だけじゃないのだよ!?
日本には有るじゃ無いか!『いりこ』が!!
ゴザレオの市場を3人と一緒に散策してて、捨て値で大量に売ってる小魚を発見!!!
直ぐにピンと来た俺は全部一喝購入し、これで正しいのかは判らんけど、ゴザレオの家の庭で、全部天日干しにしてみた。
一応、鳥や虫に食われない様に網とかでガードしたけど。
うん・・・何か失敗した!!!
よく考えるとさ、『煮干し』って言うじゃん!? つまり、煮る工程が必要っぽいって事で煮てから干したら煮干しっぽい姿になった。
これで出汁を取ると、最高に和食っぽくなってね。出汁巻き卵やら、色々がグレードアップしたよ!
これも、勿論、商人ギルドに『煮干し』と言う名で
これまで干物ぐらいだったのだけど、出汁を取ると美味しい料理になると知ったゴザレオの商人ギルドのスタッフや余り領地経営が上手く行って居ない領主は喜んでいたらしい。
煮干しの良い点は日保ちする事だな。
当面は、俺が8割ぐらい仕入れて、マッシモとかで使うか売る感じだね。
あと煮干しを粉末にして魚粉も作ったよ!冷や奴に掛けて食べたり、して使って居る。
鰹節の製作工程は何となく判るけど、もし仮に鰹と同じ様な魚が居たとしても、カビ付け?が良く判らないんだよね。
カビって言っても無数のカビの菌が居る訳で、そうそう都合良く、ドンピシャのカビが生えてくれるとは限らないからね。
本当に正解に行き着くまでにどれだけ失敗する事か・・・。
さて、そんな有意義な日々?を過ごして時が来るのを待っいた訳だ。
相変わらず、かなり離れた絶妙な位置から例の戦闘メイド町娘バージョンが監視だかストーキングだか、見守りだかを続けて居る状況だ。
こればっかりは未だに何がしたいのかが謎だ。まあ隠匿する事に必死になるが故に不自然さが胃様に目立つ『影』達よりはウザさがないので気が散らなくて好印象ではあるけど・・・。
このまま永遠に待たされ続けるのでは無いか?と少々イライラ?というか、ジリジリとして居たある日、俺達3人で王都を散策している所で事は起こった・・・。
前方に停車中竜車があったが、丁度お母さんに手を曳かれた子供が通りを横断しようと停車中の竜車の前を横切り。
タイミング悪くその停車中の竜車の後ろから来た竜車の御者にはお母さんと子供が見えて居らずにそのまま突っ込んで来た。アッと思った瞬間に車道側にに居たソフィアちゃんが「危ない!!」と叫んでその親子を助けようと庇って竜車に跳ね飛ばされてしまった・・・。
「あーーー!」と叫びつつ必死でその親子と跳ね飛ばされている最中のソフィアちゃんに夢中で魔力鎧・・・まあ無属性魔法のシールドを展開すると、取りあえず、親子は無事で、飛ばされていたソフィアちゃんも路面に凄い高さから叩き付けられてゴロゴロと転がったけど外傷はなさそうである。
「キャーー!ソフィア!!」と悲鳴を上げるソリアさんと余りの状況に泣き叫ぶ親子・・・場はカオスとなった。
兎に角まず第1に跳ね飛ばされたソフィアちゃんの安否である。
俺は直ぐに駆け寄って、骨折箇所等をペタペタ触りながらチェックし、外傷はなかったが、最初に跳ね飛ばされた時にに衝突したのか、服が汚れて居るとおもったら、ジワジワと赤黒い染みが大きくなって行く。
咄嗟にヤバイと思った居れば、ウォッシュと浄化を掛けてそのまま内臓の損傷や肌の傷、それに脳の損傷も回復させるイメージで魔力を練って治療を開始した。
脳震盪手渡なら良い?いや、場合によっては脳が腫れて死に至るって聞いた事あるし、兎に角、脳と内臓の修復だ!!
ソフィアちゃんの身体が、浄化に続いて目映く光り、魔法の手応えから、上手く行った事が判りホッと一息着いた。
直ぐにソリアさんが寄って来て、アリーシアさんとソリアさんにソフィアちゃんを託して、泣き叫んでいる親子の元へと近寄った。
この時点で通行人が集まっていて、野次馬だらけの状況だったが、ちょっと拙いのは、何気に魔装鎧の上から親子が竜に踏まれて、そりゃあ、泣き叫ぶよな・・・。
痛くも重くも無いけど身動き出来ない状況と言う事だ。
状況を把握した俺は親子を踏んでいる竜の所に行って、魔族性の土台と言うか、ガレージジャッキーみたいな感じに竜を持ち上げた
「おおーー!竜が何か知らんが持ち上がったぞ!」とその一挙一動に一々ざわめく野次馬達。
漸く魔装鎧への圧が抜けたので親子を竜の足下から引っ張り出して、魔装鎧へを解き竜も静かに地面に降ろした。
親子は幸いにもソフィアちゃんが上手く庇った事で怪我も無く打ち身すら無さそうであるが、跡で後遺症等が出ると怖いので一応念の為にソフィアちゃんにやったのと同じウォッシュと浄化、そして内臓と脳の治療を行った。
「おおー!今度はあの親子も光ったぞ!!魔法なのか?すげーなあの兄ちゃん!」と言う声もチラチラと聞こえる。
親子への対応が終わり、漸くほぼOKと思いきや・・・正にこの竜車どうやら、お貴族様の竜車だった様で御者のオッチャンと後ろに続いていた警護の騎士が大層お怒りになって居られる・・・。
「こら!そこの小僧!お前だお前、それにそこの親子!! 何方の竜車の行く手を妨害したか判っておるのか?」と滅茶滅茶怒鳴っている。
「ああ、騎士様、ご心配ありがとうございます。大丈夫ですよ! 怪我人はもう居ないので!その竜車の中乗客の方は大丈夫でしょうか?急激に停車したと思いますので。良かったら少し診ましょうか?」と一応打診してみた。
「ハァ~? 平民の親子もその飛び出した娘もどうでも良いのだ! この高貴直方の行く手を穢すとはゆるせん・・・。」と腰の剣の柄に手を掛けてシャラリと抜いた・・・。
「「キャー!(ワーー)」」と言う悲鳴が周囲の野次馬から上がり、拙いと思って再度親子と俺に魔装鎧を展開した。
「騎士様、御者の前方不注意も原因の事故ですよ?それで剣を抜くとは、正気ですか? 何処の貴族家かは存じませんが、直ぐに剣を鞘に収めないと当主様や貴族家の方に悪影響出ますよ?ささ、置きを沈めて。」と言って庇う様に親子の前に出た。
どれ程の腕かは知らんけど、俺の魔装鎧がを貫く程の強さを感じない騎士なので全く脅威似感じないのだ。
「おい、兄ちゃん、退いた方がええぞ!、あの紋章は、ガンテン伯爵家だべ!」と何やら教えてくれる野次馬達。
日本で考えると過失割合あるし、この場合交通弱者の親子の方が断然有利なんだけどなぁ~。と内心思いつつ、丁度良い着地点を模索しようとしたが、一歩遅かったらしい。
「キャーー! トージ様!!!」と後方でアリーシアさん達の悲鳴が聞こえた直後、「ガキン♪」という硬質な物にぶつかった音が響き、次の瞬間「「「おおー!」」」と言う歓声が沸き起こった。
どうやら俺が自分で思っている以上に怒っていたらしい。丁度先日の近衛騎士の言動とダブっちゃったのが拙かったみたい・・・。
そんな怒りに呼応して魔装鎧が予想以上の強度になって、イキる騎士の剣が折れちゃったのだった。
「何やってるんです?物は大事にしないと!!勿体無い。」と言って
「さあ、貴方達はこれ以上巻き添いにならない内に直ぐに帰りなさい。直ぐに!」と親子に言ってこの場を去らせたのだった。
「おいお前!!何勝手な事をやってやがる!?」と更に怒りのボルテージを上げる騎士。
「俺の後ろに居る3人に向かって、人差し指にライトをつけて、注目させて、行け!!と指で合図した。」それを見たアリーシアさんが察した様で、直ぐに3人の気配もこの場から消えた。
「さあ、今度から無闇に人を跳ね飛ばしたりしない様に気を付けて下さいね。次にまた何かあると手遅れだし。」と言っておれもこの場からスッと立ち去るのであった。
ああ、やっぱり、ああ言う
もう、王都は良かろう・・・帰ろうマッシモに!!と言う思いを強く心に思う俺だった。
------------------------------------------------------------------------------------------------お世話になっております。
何時もお読み頂き、ありがとうございます。
絹漉し豆腐の製作過程の誤解をご指摘頂き、本分の絹漉し豆腐の試作過程を変更させて頂きました。
お知らせ頂き、ありがとうございました。m(__)m
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