第49話 王都での平和?な朝 その1

翌朝スッキリと目覚め、何時ものルーティンを済ませた俺は、新居の庭先に石で出来たBBQグリルの様な物を土魔法で作り木炭に火を点けてゴザレオの街で購入した魚を焼いて行く。


今回はオーソドックスな塩焼きである。


ジューと魚が焼ける音と匂いがし始めるとお腹がグーとなり、フトゴザレオに置いて来たあの姉妹ソフィアちゃんとソリアさんがちゃっんと食べてるかが気になってしまうのであった。


ちゃんとお金も渡して、十分な管理運営費も置いて来たけれど、何となく下手遠慮してまともなご飯を3食取って無いのじゃないかと心配になってしまうのだ。

そもそも栄養不足気味で病み上がりでもあるのだから十分に栄養を補給して体力や免疫力を上げて欲しいところなのだけどな。

そんな事を考えてる自分が子供を上京させて大学に通わせているどこぞのオカンみたいだなと苦笑してしまうのであった。


ゴザレオの街もそうであったが、ここ王都の『廃棄街』では『無限咳病』が流行ったりして無いだろうか? 結局結核と似た様な感じだから、栄養状態が悪く体力の落ちた者が発症し易いのだろうし・・・不衛生な生活環境だと色々発症しし易いよな。と頭の中で考えたのだった。

結局の所、足掻いても脱出出来ない負のスパイラルに沈んだ者が『廃棄街』を構成してるのだが、再起のチャンスぐらいあれば良いよな・・・。



起きて来たアリーシアさんと一緒に焼きたてのサマーと言う名の魚の塩焼きを大根おろしを添えて頂く。

思わず久々の焼き魚に「美味しい!」と小さく叫んでしまう。


「ほんとうに 美味しいです。コンコンを擦った物(大根おろし)と良く合います!」とアリーシアさんんも絶賛してくれた。これぞ、ザ日本の朝食である。


ああ、これに納豆があったら尚完璧だな・・・。


同じ発酵が必要な物でも納豆は比較的楽に作れそうだし、今度ガルダさんに頼んでマイマイの藁を貰って来ようっと。


只、納豆は日本でも関西の人には嫌われてたみたいだし、コッソリ自分で食べる用にするかな。



食後にアリーシアさんと2人、昨日の王宮での出来事についてを軽く話し合った。

「一晩経って、冷静に発言を省みるとさ、俺のあれって、ある意味敵対するなら、潰すぞコラー!だよな?」とアリーシアさんに聞いてみると、

何故かポッと頬を染めて「俺の大事な愛する者達の為なら、国であろうと叩き潰す!敵対上等じゃー!って台詞、本当に痺れました!流石はトージ様です。何処までも着いて行きます!」と何か俺の言って無いカッコ良い台詞が飛び出していた。

「いや、俺そこまでは露骨に宣戦布告してないから!捏造は止めて!何処で誰が聞いているか判らないから!!」と俺が昨日の『影』の事を思い出してそう言う方が王宮に沢山潜んで居たし、メイドも昨日の騎士よりヤバイ人が多かった事を伝えると全く気付かなかったアリーシアさんは非常に驚いていた。

最悪、ヤバイ事態に巻き込まれる可能性があるからね。用心するに越した事は無い。


「本日のご予定は如何されますか?」と聞いて来るアリーシアさんに、


「取りあえず、メリンダ師匠の所にゴザレオのお土産持って行ってそれから、ちょっ神殿よって王都をブラついてゴザレオの姉妹の様子を見に行くかな? 何か、ちゃんと食事してない気がするし・・・。」と俺が言うと「確かに少し心配ですね。了解しました。」と同意してくれた。


どうやら同行してくれるらしい。


自宅を出て歩いて居ると、悪意も敵意も無いが、俺達を若干離れて付ける存在を察知しその隠匿された者の位置をジッと睨んでフッと笑った。

相手の気配がビクッと動揺したので更にフフフと笑うと、直ぐにその気配は離れて行った。


どうやら

の尾行者?いや、監視か!?が貼り付いて居るらしい。気配察知の範囲を広げると、ザックリ5名居る事が判る。


俺は警告をすべきか瞬時に考えてその5名の足下に小穴を空けて足首まで埋めた。勿論固めては居ないので脱出可能な範囲である。


面白い様に5名が慌て、離脱して行く。


尾行者が消え、身軽になった所で、メリンダ師匠の店を訪れて、

「師匠!お土産お持ちしました!」と店の奥に向かって声を掛けると、奥からメリンダ師匠が眠そうに出て来た。


「あれ?寝起きですか?」と聞くと、

「そりゃあ、こんな朝から来る奴いないからね!」と気怠げな感じで文句を言うメリンダ師匠。


「それはすみませんね。一応ゴザレオのお土産に魚買って来たんでお渡ししようかと・・・」と俺が言うと、


「いや気持ちはありがたいが、魔動具やポーションは作るけど、料理はからっきしなんだよ。気持ちだけ受け取っておくさ。」と言うので、屋台で売って居た焼き魚を1本出して渡して置いた。


「ああ、これなら食べられそうさね。あんがとよ!」と軽く言って、魚を食べ始めた。付け合わせに肉巻きおにぎりと、熱いお茶も出してやると。


気に入った様で、パクパクと齧り付いていたのだった。


漸く食べ終わって一息着いた所で、メリンダ師匠が口を開く。


「なあ、聞いてなかったけど、トージ、お前さんなんだろ?昨日王都、いやこの国だけで無く帝国まで出張らせたオークションの出品物の主は?」と鋭い質問をして来た。


「ハハハ、やっぱり判っちゃいますよね?」と俺が力無く笑うと、


「まあな、お前さんのデタラメさを垣間見てるからのぉ~。厭でも気付くわ!ハッハッハ。」と豪快に笑っていたが、


「でもトージ、私だけじゃ無く王宮の動きに敏感な奴らも居るから、十分に気を付けるんだよ!?トラブルは向こうからやって来るからね。」と警告してくれたのであった。

「ええ、そうですね。俺一人だけの問題じゃないので十分に気を付けます。まだ当分の間は王都に居る事になりますけど、家買ったんで、頭分はそこを拠点に王都を探索しますよ。

あ!!そうそう、師匠、直ぐに爆売れする魔動具のアイデアあるんですが、俺が勉強して資格取るまで物が無いのも何なので作りませんか?」と打診してみた。

「駄目だよ、そう言うなら、早く本読んで修行に来な!そして自分で作りな!」と一蹴されてしまった。


仕方無く了承し、新居の住所を知らせるとメリンダ師匠の店を出るのであった。



店を出て、一応周囲の気配を見たが特に影の存在も発見出来ず、俺はフーっと溜息を付いたのであった。


「どうかしたのですか?」とアリーシアさんに聞かれたが、「いや、特に何も無いよ。」と影が今朝から尾行していた事は伏せたのだった。


余計な事を言って怯えさせる必要もないだろう。 どうせ、四六時中一緒に行動している訳だし。

昨日のあの王様の様子だと、そんな無茶をして来ないぐらいの思慮深さは持って居ると思うから・・・。

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