第48話 実力の証明


あんまし、ドヤると鬱陶しい逆恨みの意趣返し来そうなので、安寧の為に軽く判る程度に自粛する事にして、ラウンジから庭園への直通の経路を通って王宮の王族専用の美しい庭へと移動した。


本来こう言う事を避けるつもりだったのに転生してもこの性格は治らないみたいだ。

事ここに至っては、なるようにしかならないが、これ以上のウザ絡みが発生しない様に出来る限り穏便な方向へ方向修正に励むとしよう・・・。


「あのう、こんなに綺麗な庭園に似合わない物作ってしまって良いのでしょうか?」と確認すると「よいよい!」と軽く返答して、さあヤレ!と目で号令を掛けてきた。俺は「では行きます!」と片手を挙げて宣下した直後に目の前のちょっと空いたスペースにカマクラやエスキモーの氷のドームの様な直径6m程の半球状の石で作られたドームを一瞬で築いた。


そしてドームの内部の床を大理石の様に固めてツルツルに磨いて、更に足の伸ばせる絶妙な傾斜を付けた湯船を同じく大理石の様な感じに仕上げてやった。

「あのう、出来ました。」と3分も掛からずに完成を宣言し、大きく開けた入り口から内部を見せつつ、湯船にタップリのお湯を魔法で張ったのだった。


「「おおーーー 凄い物じゃのう。これ程とは・・・。」と絶句する王様と青白い顔で絶望した様な表情のバカ2人。


王女様とか暢気に「わぁ~アッと言う間に出来ちゃいました!!御父様、これって宮廷魔術士の方々より凄い事なのでは?」とちょっと問題発言を漏らす。


トージ?トージ様? 魔力はまだ大丈夫なんですか? お強いって事ですが、どうやって、ラック・ウルフの数十匹のを蹴散らしたんですか? それに盗賊20名も!良ければ、一度訓練場とかで見たいですわ! ねえ、御父様!」とたたみ掛ける王女様。もしかして無邪気な天然の振りした養殖なんじゃ?と勘ぐりたくなる程である。



「どうじゃ、トージ、魔力はまだ大丈夫なのか?」と尋ねてくるもう既に王女と同じで興味津々と言った雰囲気の王様。そうか、此奴ら、親子だったわ。と納得しつつ、「ええ、全然大丈夫です。もしラック・ウルフや盗賊を撃退した時の魔法をお見せするなら、そこそこ広い場所があれば、大丈夫かと。」と答えると、ウキウキしている王様に引き連れられて、何やら広い射撃場の様な場所へと到着した。


王様が其処に居た人に命じて20個程の標的を建てさせて、「トージ、これで良いか?」と聞いて来たので「はい、標的を全部撃ち抜けば良いでしょうか?」と聞くと頷いたので、先程同等にかた手を挙げて行きますと宣言をして、15m程先に置かれた標的の的の部分と柱の部分を瞬時に魔弾でスパパンと撃ち抜いて回った。


一瞬にして起こった破壊劇に「わー」や「おーー!何が起こった?」と驚きの声が上がったが。これ以上公開する気はないので、「以上です。」と言ってお辞儀して終わると、観客全員(バカ2名を除く)から割れんばかりの拍手を頂いたのであった。

「あの向こうの奥にある木も標的にして良ければ盗賊共を脅すのに使った物もお見せしますが、これ位で宜しいですか?」と一応駄目押しの『脅し』のつもりで聞いてみたら。

「よい、それも見せてみよ!」とワクワク顔でGoを出す王様。

「では、いきます!」と俺が宣言し、

人差し指を木に向けて魔弾を威力かなりマシマシで発射すると、次の瞬間、「ドッパーーン♪」と爆音がして、木が粉々に弾け飛んで木屑が上空からバラバラと降ってきて、その木の後ろの石壁にも大穴が空いてしまった。

ちょっと、怒りの分威力が籠もりすぎたらしい。

ちょっとヤベッっと思ったのだが、許可も貰ってるし、ここは当然の様に振る舞おう。

「・・・とまあこんな感じです。」と顔面蒼白な王様や子供らに支えられて、何とか立って居る感じの奥様方の方を向いてシレッと告げてお辞儀して終章したのだった。



「う、み、見事じゃ、見事じゃぞ、トージよ!」と何とか絶賛してくれている王様だが、愕然と膝を地面に着いて項垂れているバカ2名。どうするのこの結末。ここまでやっちゃうと、もう、俺の意思なんか関係無く、何も無しには出来ないよね?


よくある異世界物の王族って頭を下げたら死ぬって言うぐらいに謝らないってされててさ。頭下げないけど、その代わりに良い物やるよ!とか、何か特別なメリットを与えてくれたりするけどさ、下手な褒美は煎らないし、まして、爵位なんてのも要らない。


あれさ、地位と引き換えに自由と気楽さを差し出してるよね?って毎回思って異世界物を読んでたし。強く有名な者の有名税とか言われてもね?


アレだな。貰えるのなら、王侯貴族への拒否権が欲しいかな。意にそぐわない命令も要望も拒否出来るってのが良い!!


好き勝手に美味しい物を食べてノビノビ自由に暮らすのがベストだな。

等と内心思って居たが、どうやらこのまま何事もなかったかの様に俺達を解き放ってはくれないらしい・・・オーマイガーー女神マルーシャ様?


改めて、先程のラウンジでは無く、王様の執務室的な部屋に通され、意外にも謝罪の意を表されてしまったよ。


詫びとして、金は十分に持っているから要らんだろうし、自由が無くなる爵位は重荷なだけで欲しくないじゃろ?何か望みがあれば・・・遠慮無く申してみよ!」と仰る王様。


「えっと、大変恐縮ではあるのですが、人目に付く状況になってしまった事で、今後、鬱陶しい事に巻き込まれないかが非常に心配です。


私自身に来るだけなら何とでも出来ますが、私の周囲・・・アリーシアさんやラルゴさんやまだ他にこれから増えるスタッフ等にちょっかいを出されて、危害等が及ぶと多分我慢が出来ないと思うのです・・・。」と言って、一呼吸置いてから続けた。


「私は今までにマッシモ辺境伯様以外の貴族の方を存じ上げませんでした。当然、マッシモ辺境伯様の人となりはご存知とは思いますが、彼の方は非常に領民思いで温厚な素晴らしい領主様だと尊敬しておりますし、一領民として、是非出来る範囲で協力し、より良い領、住み易い領に成る様に人力したいと思っております。

しかし先程の騎士の方もあれで貴族様なのでしょう?第二王子殿下が更にその上の立場の王族である事は言うに及ばずですが・・・もし今後今回の様な理不尽な言い掛かりや無理強いを私やその周囲の者にされると、『敵』と認識してしまうと思うのです。

陛下、陛下は応国民が例えば帝国によって踏みにじられたり、酷い扱いをされたり当然の権利を奪われたり奴隷にされたりしたら、怒りませんか?それが只の王国民だけで無く、もし陛下の身内、ご家族がその対象とされた場合なら相手を『敵認識』致しませんか?

『そして』もし陛下がそれら敵に対して『抗う力』、『撃破し守る力』があればどうされますか? 恐らく陛下のお考えは、私の下す判断と同じだと思うのです。一国民?として、そうで在って欲しいと願う者ですが・・・如何でしょうか?」と俺は率直な意見を思うままに言葉にしてみた。

シーンと静まり返る。


アリーシアさんにしろあの姉妹にしろ、一旦おれの仲間になった者達の安全や安寧が害されると、戦争も辞さない気がする・・・。


「うむ。トージ其方の言いたい事、今の気持ち、要望する事は良く判ったぞ。 確かにの。この国に於いて貴族の言う事に抗える平民は居らんじゃろう。そうか、『あらがい守る力』か。多分その場になって他の状況、考え得る我が方側の被害と相談する事になると思うが、抗って安全と安寧を勝ち取ると思うぞ!その責と力を有する者として。」

とユックリと反芻するかの様に語ったのであった。


「じゃな。非常に判り易い話じゃったぞ。そうじゃな、抗い守る力、理不尽を撥ね除ける力があれば、それは撥ね除けるのが道理じゃの・・・。

後はそれが、この国の法と合致するか否じゃな? 幸い儂は国王である故、その法も変える事も例外を作る事も出来る。トージ、まだ暫くは王都におるんじゃろ?一応、後ほど連絡を取る故、滞在先を知らせて置いてくれるかの? こちらで調節して準備が整い次第連絡するでな・・。今日はご苦労じゃった。長々と引き留める事になって・・・。帰ってユックリするが良い。」と言って退室が許可されたのであった・・・。



こうして、いつの間にか現れた執事の丁寧な先導に従って、竜車に乗って王宮から脱出したのであった。


折角の気分が台無しになった。ラルゴさん、申し訳無い。アリーシアさんも巻き込んでしまって申し訳無い。」と2人に謝ったのだが、「トージ様、あれは仕方がない。取りあえず無事に解放されたので良しとしましょう。ささ、商人ギルドでサッサと要件を済ませユックリ休みましょう」と言って家の名義の登録手続きを済ませに行くのであった。


購入した新しい自宅に戻って来ると、王城に居る間に全てを終わらせて居たらしく、カーテンから寝具、さらにソファーセットまで完備されていた。流石ラルゴさん仕事が早いぜ!


「これでやっとゆっくり出来るな。今日は一日ダラッとしよう。」と適当に飯を済ませ新居で風呂に入り、真新しいベッドに横になって朝まで爆睡するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る