第45話 オークションその1

翌朝6つの鐘の前に起きて、久々に朝のルーティーンを熟し、ウォッシュでサッパリして部屋に戻って朝食の準備をしようとキッチンの在る1階に降りると


「おはようございます。」と3人が声を揃えて挨拶して来た。


昨夜の夕食で作った余り物と俺のストックの物で簡素に朝食を終えると、後片付けを済ませ、お留守番の2人にちゃんと3食取る様に言って、アリーシアさんと王都のラルゴ邸の付近の路地に出た。


「本当にトージ様と居ると便利と言うか、色々と面白いと言うか、常識を忘れてしまいそうです。良いですね、魔法って。私も使える様にならないかなぁ・・・そうすれば、自分の身も守れるし、大事な人も守れるかも。」とアリーシアさんが魔法に対する思いを漏らす。


「訓練すれば今からでもイケるんじゃないかな?誰しも魔力は持っているみたいだし。」と俺が言うと、俺の所業の数々を見て来ているアリーシアさんが目を輝かせて居た。


「ヤル気あるなら、教えるから、頑張ってみたら?」と俺が言うと「トージ様、是非ともお願い致します! せめて自分の身ぐらい守れる様になれれば良いのですが。トージ様の足を引っ張裸無い様に。」と切々とした思いを込めた言葉を呟いていた。


「足を引っ張るとか考えた事も無いからそれは気にしなくて良いけど、俺も最初に魔力を感じ取れる様になるまで、何週間もかかったから、気長にやると良いよ。」と教えながら、薄暗い早朝の道をラルゴ邸に向かったのだった。


丁度7つの鐘のなる頃、ラルゴ邸の門に到着し、既にラルゴさんから許可を得ているので、アリーシアさんをお姫様抱っこしたまま門を飛び越えて、敷地に入った。


本当にこの専用ボディーの性能は凄い。これ、身体強化無しで出来るんだぜ!? 普通にあり得ないよね。


ドアをノックすると待ち構えたかの様に執事のオジサンがドアを開けてくれて、「おはようございます。」と笑顔で挨拶をしてくれた。


「おはようございます。」と俺達もオアイサツして、ラルゴさん。の待つ食堂へと通され、朝食を聞かれるも「ありがとうございます。既に済ませて来ましたので、お茶だけ頂いても宜しいでしょうか?」とお願い下のだった。


お茶を飲みながらラルゴさん。の食事が終わるのを待ってノンビリと会話を楽しむ。


その流れで、まだ話して居なかったメリンダ師匠に師事しての弟子になった事を伝えると、滅茶滅茶驚かれた。やはりメリンダ師匠、この国のその界隈では超有名人で、師事したいと王侯貴族の子弟が弟子入りを志願しても誰も相手にしなかったらしい。


そんな逸話話をしながら、面白そうに笑いつつも、

「呉々も絡まれない様にお気を付け下さいね。」と注意された。


うむ・・・そうかやっかみとかもあり得るのか!?と今更ながら気付いて,苦い顔をするのであった。


「あれ?トージ様、そうなるとここ王都に居を移すと言う事でしょうか?」とラルゴさんが青い顔で聞いてきた。


「いや、気に入ってますし、マッシモを離れる気は無いですが? メリンダ師匠の所へは、特殊な方法で通うつもりです。」と俺が言うとキョトンとしていたが、引っ越す訳で無いと知って少しホッとした表情をして居た。


「でも、メリンダ師匠の所で修行するにしても、一軒家を王都に用意したが良いかなぁ~。」と俺が呟くと、「良ければ家の商会の所有する小さい物件ありますが、ご紹介致しましょうか?」と願っても無い申し出を頂いた。


「ほほう!それは良いですね!1度見せて頂いて宜しいでしょうか?」と身を乗り出す俺。


「オークションは9つの鐘から始まるので、その前にサクっと見に行きませんか?」と誘われて、素直に首肯して、太郎次郎の竜車に乗って早朝の通りを走って行く。


前にラルゴさんから聞いた王都に家を買う時のややこしい推薦や身元保証等の条件の件を懸念して尋ねてみると、「ああ、ご安心を。トージ様達はマッシモ辺境伯からメダルを頂いて居りますので、余裕でクリアですよ。」と笑いながら教えてくれた。

王都だけでなく、他の都市等で同様の審査や推薦の必要な土地であっても、あのメダルがあれば大丈夫と言う。


記念メダルとバカに出来ない効能だあったよ・・・。


「なんと、そんなにも凄い効能があるとは。今度お目にかかる時には俺をしなければ!」と俺が呟くと、「ではその時はまた料理を振る舞われると、何よりも喜ばれますよ!」と教えてくれた。



「ありがとう。マッシモの街に戻ったら、何か持って行こう。」と応えたのだった。


「トージ様、ここでございます。」と一軒の家の前に停まった。


大きささこそ、マッシモの自宅の半分程度だが、ちゃんと庭も塀も門もある一軒家である。


門を開けて内部に入ると、多少庭は荒れているが十分に管理された状態を保っていた。屋敷の内部も外も綺麗である。


ドアから入ると真正面に階段のある玄関ホール直ぐ右は応接室、続いて小さめのダイニングその置くはキッチンで、1階にはトイレが2つに割と大きい風呂も付いていた。


2階には普通の書斎と寝室と一緒になった主人部屋に通常の寝室が4つ並び、コの字状に回り込んだ反対側にも4畳ぐらいののスタッフ用の部屋らしき物が3部屋あってトイレががこの字の領側に1箇所づつついていた。


更に小さいながらに地下室も付いている。


「なかなか良い家じゃないですか! 是非、譲って頂きたいです。」とお願いするとニヤリと微笑みそうでしょう、そうでしょう。と満足気に頷いていた。



して気になるお値段は・・・各寝室にベッド等の寝具を置いて、カーテン等の最低限の家具等も込みで大負けに負けて貰って、3千万ギリーとの事。アリーシアさんも納得の価格で値切り交渉も無しである。


速攻でお支払いして!と思ったが、ラルゴさんが待ったを掛けて、オークションの後、権利関係の契約書や、名義変更に伴う身元保証等の法的な申請も含めて処理を商人ギルドでする事となった。


後で聞くと、ここはスタッフ達の寮にしようかと購入して、結局使わずに置いておいた所らしい。ふふふ、もう1台置き時計買わなきゃ!


一通り家を周り裏に納屋も発見した。裏には勝手口の扉が付いて居て、そこから出ると、メリンダ師匠の店まで意外に近い事が判明した。






また太郎次郎の竜車に乗ってオークション会場である王城の隣に位置するホールへと向かう。


って、マジか?まさか、王城に行くとは・・・思いもしなかった。」と内心焦っていたら、真横にあるって、王城の管轄ではあるけど、王城の中じゃないのでご安心を!との事だが、どっちにしても安心は出来んな・・・。


変な所に下手に足を踏み入れたくは無い。


竜車が会場となるホールの玄関前のロータリーに到着し、集まり始めた多くの竜車と人でごった返すロータリーで素早く降りて、サッサと前を行くラルゴさんに着いて行く。


長く緩やかな階段を登ってエントランスを潜る時、身分証と出品者である事の書類を見せ、無事に会場の中へと入る事が出来た。


日本ではオークション会場とか映像で見た程度がが、オペラハウスの様な会場で、臼状観客席がって、ステージにはテーブルと登壇があって、木のハンマーをで殴る土台みたいなのがあった。


本日のオークションは、事前に俺の『ホーラント輝石』が出品される事が告知されて居たので、近年希に見る人気っぷりらしい。


「ふふふ、頑張って値段吊り上げて貰いたいですね。」とクフフと笑うラルゴさん。


「トージ様、これで巨額を手に入れても、ちゃんと働いて・・・いや新しいレシピ等を沢山美味しい物を作って下さいよ!頼みますよ。」と釘を刺された。


「まあ安心してくれよ。今回の金の使い道はマッシモ・マイマイやソイとかの醸造所って決まって居るからな・・・言う程残らないだろうし。」と俺が言うと、


そうかな?って首を傾げられたのだった。


「それにしてもポツポツとしか人が座って居ない。エントランスではあんなに混んでいたのに、人が少ないな。」と俺が呟くと、同じ事を思って居たらしい、アリーシアさんも頷いている。


「いえいえ、お二方、逆ですよ逆!」と慌てて俺達の持った印象を否定して真逆だと言うラルゴさん。


何でも、ここのホールの手前の廊下にあるショーケースには本日の出品物が展示されており、落札者達が事前に近くで目利き出来る様になっているらしい。


開催直前にも拘わらずこの観客席に人が余り座ってないのは、『本日の出品物』に群がっている所為だと。普通ならある程度でドヤドヤと入ってくるんですよ。とドヤ顔で教えてくれた。


「なる程、そう言う意味か、面白い。」と俺が唸ると


開始時刻5分前のベルが鳴ると、ガヤガヤと話ながら会場入りする、一見して貴族や『やんごとなき』雰囲気を放って居る方々や、デップリ脂ぎった、見るからに悪徳商人を地でいく様なオッサン等、見てるだけで胸焼けしそうなくらい。


貴族の子弟や有閑マダム風の貴婦人等凄い・・・濃い人の群がドンドンと座って最後は立ち見の人まで出る始末。


「やはり、本日は凄い。立ち見の参加者が出るとは、わたし久しく見て無いです。」と既に興奮している。ラルゴさん。


この中に居ると、俺とアリーシアさんが何と浮く事か・・・。国内屈指の商人であるラルゴさんでさえ、どちらかと言うと俺達寄りである。


「さあ、一世一代のショーが始まりますよ!」と嬉し気に言うラルゴさんの予言通り、1人の老紳士がステージの壇上に立ち、ハンドベルをカランカランと振って鳴らした・・・。

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