第35話 王都へ その4
皆様、何時もお読み頂きありがとうございます。
GW如何でしたでしょうか?
第35話でGW増量投稿期間を終わり、通常の1日1話投稿ペースに戻ります。
今後も宜しくお願い致します。m(__)m
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翌朝出発直ぐに出発し、また王都への旅が再開した。
今回のゴッサリムの街での買い出しで、俺が、色んな料理が新しく作れると大喜びではしゃいだ事もあって、ラルゴさんが気を効かせたのか?以降の街や都市には一応市場の視察という俺の役割が追加された。
イカン、本当に俺って本来の護衛任務からドンドン遠ざかってない?
まあ、この世界の食物の現物を見られるし味見出来るので、愚痴って居る程に文句は無いのだがな。
5日目に寄ったアルヌーラの街の市場では、何と長芋と、あと、柚子の様な小さい柑橘系の果物を発見し、ポン酢や柚子胡椒が作れるとよろこんでしまった。を発見し、思わず喜んでしまったよ。
どうやら、このアルヌーラの街は果物が充実しているみたいだ。元々果物大好きな俺としては、嬉しい街である。尤も、市場のオバチャン曰く、アルヌーラの街一推しの果物の季節はまだ先で、今は収穫前まので市場に出て無いらしい。
うーん、ここも3ヵ月ぐらい経ったら、また来なきゃ!
そうそう、忘れ無い内に、レシピの資料に改編と言うか捕捉事項を入れる為の書類を作って居るんだけど、例の細長いお米ゴッサリム産のマイマイは、マッシモ産と全く違うので、同様のレシピで食べても駄目だと言う事を細かく米の形状まで明記し、当レシピの除外リストに記載した。つまり、ゴッサリム産のマイマイと同品種の物は使えないと言う事である。これを捉えず、早急に商業ギルドに渡さねば非常に拙い。
本当は品種名とかがあれば良かったのだが、『女神の英知』を持ってしてもただ単に『マイマイ』としか表示されないから、品種名とか無いみたいなんだよね。
何か産地名を出すのは風評被害になりそうで厭なんだがしょうがない。
現在喫茶店の様な所で書類を纏めて居るのだが、これを書き上げたら、コッソリ、『ゲート』で戻って提出する予定だ。
漸く絵も描き終わって、書類完成である。
買い物が終わって、ラルゴさん達に合流すると、一旦路地裏に俺だけ時間を15分だけ貰って、『ゲート』でマッシモの商人ギルドの屋根の上に出て人気のない裏手に移動して、商人ギルドに駆け込んで、レシピのアップデート書類を持ち込んで、受け付けに居たルミーナさんを捕まえて、サンプルの細長いお米ゴッサリム産のマイマイとゴッサリム産のマイマイを見せて、物の違いを理解して貰って、追加事項の書類を託し、
アルヌーラの街に戻って来たのだった・・・。
いやぁ~、何とかなったな?
ちなみに、アリーシアさんはさっきのオバチャンに、「あらぁ~、兄さん、可愛い奥さんだねぇ~。大事にしてやんなよぉ~!」なんて言われて、顔を真っ赤にしながら「奥さん・・・可愛い奥さん・・・」とブツブツ唱えながらも、ニコニコしていた。
まあ、こんな唐変木の俺でも、最近何となく、好意を寄せられている気はしてるから、よくある無自覚系主人公になる程の間抜けでもバカでも無いつもりだ。
余り気を保たせるだけ持たせて、お別れするとか非道な事にならない様に気を付けたいと思っている・・・。
すまんな、俺モテた経験ないもので、実際自分でも混乱していて何言ってるのか判ってない・・・。
ここの所、寄り道の所為で、ペースは落ちたが、その分、同乗者達に取っては気楽な道中になって居るみたいだ。
しかし俺にしてみれば余計な仕事が増えてしまっているのが現実だけど、移動中にヤル事は先行しての索敵で、変わりはない。
日々順調に王都が近付いて来て、もう直ぐ王都直前の『王都の台所』と呼ばれる都市ランゼンへと入る事になる。今夜の宿となるパーキングで一泊を終えればランゼンは目の前だ。
俺としては『王都の台所』ってフレーズを聞いて以降、非常にテンション上がりまくっているのである。 何なら、もう、王都行かなくても良いんじゃね?と思う程には・・・。
あ、イカン!イカン!! 食材探求で王都に行くんじゃ無かった。俺のオークション出品が目的だった! 危ない危ない!!スッカリ、食い物で騙される所だったよ・・・。
夕暮れ時、恒例となった夕食作りを俺とアリーシアさんメインでやりつつ、その他のみんなは脱穀に精を出して貰っている。
てか、此奴らが容赦無く食う所為で、1年ぐらい保つつもりだったマイマイのストックもソイやソイペーストのストックも心細くなって来てるんだけど・・・。
これ、マジで特別料金徴収しないとやってられんな・・・。
まあ、性格的に余り細かい事を言うのも嫌いなのだが、物事には限度や節度って物がある。
まあ、趣味と実益を兼ねる内容の旅だし、それ相応の手数料も払うのだから、本来ビジネスライクに考えれば、ここまで俺がなけなしの私的な食材を注ぎ込むのが間違いなのだ。
これは、なあなあで、提供してしまった、俺が悪い。
かと言って、半ば友人枠に収まってしまった彼らから、お金を取るのもな・・・。
と言う事で、現実問題として差し迫っている在庫の問題を期に強制リセットをポチッと押す気で口を開いた。
「えっと、皆さんに悲しいお知らせが! このペースで食べられちゃうと、王都からの帰りにはマイマイも、ソイもソイペーストも在庫切れになると思います。そもそも私個人がアリーシアさんと2人で2年ぐらい食える程度に私的に購入した物なので・・・。でもご安心下さい、ラルゴさんの方からお預かりしている食料の方は丸っと残ってますので、行きに使って無い分帰りに食べられると思いますよ。」とやはり言うべきはキッチリ言わないと駄目だと思って心を鬼にして悲しい結末を告げたのだった。
「・・・・」
それまで、ホイホイ嬉し気に籾を突いていたマッシモの夜明けのメンバー達の手がピタリと止まった。
「だ旦那ぁ~、嘘だろ? 冗談だよな?」と掠れた声でケネスさんが呆然としながら聞いてきた。
「いや、悲しい事にマジですよ。」と俺が真顔で告げると、マッシモの夜明けの全員が死刑宣告か余命宣告を受けたかの様に脱力している。
横で聞いてたラルゴさんもかなり顔色が悪い。
マイマイの在庫が切れるのも拙いが、何よりも拙いのは、ソイが切れてしまう事である。 最悪主食をマイマイから、うどん等の小麦系の炭水化物に替えれば誤魔化しは効くが、ソイ無くしてはメインとなる味を失ってしまうのだ。
ラルゴさんが、「ど、どうすれば・・・?」とオロオロ慌てている。
一つ手が無い事もないんだがな。そろそろエルダさんが市場にやって来る日の筈なので、『ゲート』でマッシモに回出しに行けばマイマイもソイもソイペーストも何とかなりそうな気はするんだがな。
でも、アリーシアさん以外に俺が『ゲート』を使える事がバレるのは非常に拙い思うし・・・。
阿鼻叫喚からの残り少ない至福の食事を愛おしむ様に全員が食べ終わり、片付けが済むと、何時もの様にマッシモの夜明けは寝ずの番へ、俺とアリーシアさんは2人のテントへと入った。
テント内に入ると堰を切ったかの様に話し掛けようとするアリーシアさんを手で制して、直ぐに遮音の風シールドを展開した。
「もう遮音にしたから、普通に話して大丈夫だよ。」とアリーシアさんに声を掛けると、
「トージ様、食材の件本当ですか?それとも図々しさを増してる彼らへの戒めですか?」と俺の真意を聞いて来た。
「うん、まあ敢えて公言したのは戒め半分、八つ当たり半分かな。在庫が尽きるのも本当。既に、少なく見積もっても大金貨3枚分(3百万ギリー)分くらいは軽く食ってるからね・・・。」と俺が率直な概算を言うとアリーシアさんが驚いていた。
「勿論、俺やアリーシアさんの手間賃や料理する事の対価を除いてだからね。
ソイもソイペーストもそんなに安くないし、料理によっては、お酒やスパイス類もふんだんに使って、『魔の森』の食材もコッソリ使って居るから、この国の王族がどんな食生活してるか知らないけど、下手したらそれよりも豪勢な食事してると思うよ。」と言って、フフフと笑った。
「ああ、推測ですけど、美味しさなら、王宮以上だと胸を張って言えます。」とアリーシアさんも同意してくれた。
そして、真剣な顔をしたアリーシアさんが、
「トージ様、僭越ですが、この先、死守すべきストック分を残す様にしましょう!それに、買える時に最大限にキープする様にしませんか? ほら、私に毎回分け前とか頂いてますけど、その分を全部そちらに回しませんか?」と時分の取り分よりも食材を確保優先しろ!と真剣に提案して来るアリーシアさんの真面目な表情を見て居ると、
「俺がエルダさんさんから爆買いしてた時の表情(こいつマジでこんなに買うのか?正気か?って表情)と真逆過ぎて・・・」と思わず漏らしてしまい、ププーーと吹いてしまったのだった。
すると当時の自分を思い出したのか、気拙そうな顔で、「だって、こんなにも美味しい物だなんて、普通思いませんから・・・。もうあの頃の私には戻れない・・・。」と宣っていた。
「まあ、そうだろうな、俺も2年間待ってたぐらいだし。」と俺が言うとウンウンと頷いていた。
「まあ、今回の事態の発端は俺に責任あるし、実際多少思惑もあって、最初のご飯を食べさせたってのもあるんだよね。」と俺の思惑を暴露し始める。
「そりゃあさ、物は美味しいけど、知ってるのって、俺とアリーシアさん、商人ギルドのミーナさん達だけじゃん? 口コミの宣伝力が足りないし、これじゃあいつまで経っても普及しないからね。
だから、普及させる為に発言力や伝手や影響力の大きい人に発信して欲しかったし、更に言うと領主様を巻き込みたかったんだよ。 ほら、マイマイの増産って、俺とかの個人レベルだと影響力小さいし。
それに、ソイの醸造所も大々的に作らないと生産量増えないし。 俺、アリーシアさんにはちょっと申し訳無いけど、今回のオークションの収益の殆どをソイとソイペーストの醸造所の方に投資したいって思っているんだよね。
そうすれば、領地も潤い、雇用も増えて、街の人にもプラスになるし、一番良いのは、街が綺麗になる可能性が高い事かな。」と話を締め括った。
「流石です! 流石は私の主、トージ様です!!深いお考えに敬服致しました。」と感極まった様に手の指を顔の前で組んで、正に祈りするかの様に傅いて居る。
俺は、慌てて、まあ、落ち着けよと元の様に、コットの上に座らせて、
「ソイもマイマイも作るのに、年単位は掛かるから、早めに着手しないと、豊富に手に入るのがドンドン先になっちゃうからね。」と一気に攻めに行く理由を説明したのだった。
そして、彼らには口に出していない、コッソリ戻って買い足す手もある事を伝えると、なるほど!そうでしたね!とポンと手を叩いていた微笑んでいた。
そうして、少し早めに就寝するのであった・・・。
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