第33話 王都へ その2

その後3回の休憩を挟み、昼食を取る時間となった。


今回預かったラルゴさんの荷物にはラルゴさ邸のシェフの作った食料も含んでいる。俺はラルゴさんから指定された食料の箱を取り出して渡した後、太郎と次郎にウォッシュを掛けた後、水を出して、彼らの餌の肉塊を出してやったら、キューキューと甘えた様な鳴き声を上げて肉塊を豪快に食っていた。


そう、てっきり草食と思い込んで居たのだが、此奴ら、ガチの肉食系だったのだ。

肉を食っている様は実に獰猛な恐竜その物で、某映画の様に建物影で人とか頭からパクっと行きそうな風貌なんだが、俺には非常に懐いており、他の者が普通に水場で汲んだ水を飲ませようとすると、キューキューと鳴いて抗議し飲もうとしない。そして、俺が呼ばれ、水を魔法で出してやると、嬉し気にゴクゴクと飲み干しお替わりをキューキューと鳴いて擦り寄って要求するのだ。


ただ、見かけが肉食恐竜でも温厚な性格なので、余程の事が無いと人に食い付く事は無いらしい。


「いやぁ~、今回の王都行きは極楽だ!」と『マッシモの夜明け』のメンバーが呟く。


本来、移動中の食事は非常に寂しい物で、温かいスープとか、とても作る気にならないと言う。


俺達もコップ1杯のスープをお裾分けして貰ったが、確かに美味しい事は美味しく、ホッとする味だった。


サクっと昼食を済ませ、トイレを済ませたら出発である。


恐らく、あと3回休憩したら、今夜の野営地となる予定である。


そうそう、野営だが、紅一点のアリーシアさんだけ一人のテントに泊まらせる予定だったのだけど、誰在ろう、アリーシアさん本人に懇願されてしまったのだ。「心細いので、トージ様と同じテントで!」と。


うーん、困ったな。まあ、何なら自宅に送って寝て貰う手もあるんだが、何でバレるか判らないので、そこまでリスクを負う事も無いかと了承して、現在に居てっている。


パーキングに着いて、設営を済ませた後、夕食を食べたて、全員にウォッシュを掛けてやりサッパリとした後、順番に寝ずの番をする予定だったのだが、ケネスさん達の配慮と言うか仕事分担の比重もあって、寝ずの番から俺は外された。


勿論、何かの異常が在れば直ぐに起きて即応するが、明日も先行偵察するだろうからと、夜は寝て休養を取ってくれと言う事だった。


流石に、この身体に転生以降、実は前世の頃の様なその手の欲が薄いのだが、お歳頃の美人さんと同室のテントでねられるのだろうか?


俺達のテントはこの為に新規に購入した、2人で使うには十分な広さのモノポールテントで、ポールを跨いで左右に各自用の自家製のコット(簡易ベッド)を配置した。


コットの上に毛皮を敷いてそして寝袋で寝る感じだ。


風の遮音のシールドを展開し、内部の会話が漏れない様にしてから、アリーシアさんに話し掛ける。


「今日はお疲れさん、大丈夫だった?」と。

「ええ、お陰様で、快適とまでは言いませんけど、普通の旅行に比べればかなり良い旅でした。トージ様の方こそ、お疲れでは?何かあれば、マッサージ位は出来ますので、ご遠慮無く言って下さいね。」と言ってくれたのだった。


「うんありがとう。俺は言う程疲れて無いよ。気ままにやってるし。ただ、強いて言うなら風呂に入ってから寝たいかな。もう毎晩入るのが習慣になったし。」と俺がボヤくと。「確かにそうですね。」と同意してくれた。


「さあ、明日も早いし、寝よう・・・お休み。」と言って、遮音のシールドを解除して眠りに就くのだった。


『魔の森』での生活の癖と言えば、癖なのか、寝て居ても、脅威に対する索敵は常時働く様で、自宅に居る時の様に無条件に爆睡とまでは行かなかったが、十分に睡眠と休養を取る事が出来た。


朝の5時ぐらいに目覚め、アリーシアさんを起こしてコット等を片付けて、身支度を促し、テントの外に出ると、焚き火の前に、ウツラウツラとする『マッシモの夜明け』のメンバーであるランディーさんが居たので、


「おはようございます。今からなら1時間ぐらい寝られると思うので代わるので寝て下さい。俺は朝食の準備とかするんで。」と言うと嬉しそうにパーティー用のテントへと入って行った。


入れ違いにアリーシアさんが着替えを済ませテントから出て来たので、朝のお茶を1杯注いで木製のコップを手渡す。


ありがとうございます。朝の温かいお茶はホッとしますね。」と笑顔で受け取る。


「さあ、朝飯の準備だが、そろそろ、マイマイのご飯食べたい感じなんだけど、どう?」と聞くと、


「確かに、もう主食がマイマイなのが当たり前になってしまいました。」と苦笑するアリーシアさん。



「じゃあ、今朝は、肉巻きおにぎりと、厚焼き卵、鶏の唐揚げ、オーク汁にするかな?」と俺が提案すると喜んでいた。





土魔法で、適当にテーブルと簡易的な椅子を作って、朝食の前準備を済ませて、丁度朝の6時(街ならば朝の6つの鐘が鳴る頃)ぐらいになると、ラルゴさんのテントやイビキの響いて居た『マッシモの夜明け』のパーティーの使うテントに動きがあった。

「ラルゴさん、皆さん、おはようございます。朝のお茶如何ですか?」と言うとテーブルの上に置いたコップにアリーシアさんがお茶を注いで行く。


「おはようございます。熱いので火傷注意して下さい。」


「朝食、用意しますね。」と言って俺が肉巻きおにぎりや、オーク汁の入ったお椀、唐揚げの積み上がった皿を並べて行く。

「一応、こちらは、先日商人ギルドにレシピを登録した物の一部です。良ければお試し下さい。 ラルゴさんから預かっている物もあるので、そちらが良ければお出し致します。」と言って

早速1日振りのお米のご飯に齧り付く俺。


「美味っ! トージさん、これ美味いよ!」と朝からガツガツおにぎりと唐揚げを頬張る冒険車達。

「トージ様!! これは何ですか!? どれもこれも大変美味しいのですが、食べた事の無い味がします!」とラルゴさんも朝から沢山食べている。


もしかすると、王都までに作り溜めした分無くなるかも知れんな・・・。


どうやら、美味しい味に飢えていたのは俺だけでは無かった様だ。


朝食の後、ラルゴさんから、料理に関する山の様な質問を何とか熟して、漸く2日目の旅を始めるのであった。


しかしまさかこの昼食で俺の料理を出してしまった事を後悔する事になるとはこの時の俺は思いもしないのであった・・・。

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