第31話 受託し忘れ
結局昨晩は普通にご飯を炊いて、おかずにホーンラビットの肉で作ったミートボールの甘辛餡掛けとオーク肉の豚汁擬きを作った。
ミートボール自体を初めて食べたアリーシアさん、益々俺の作る飯に嵌まってらっしゃった。
「トージ様、この『ミートボールの甘辛餡掛け』是非ともレシピ登録しましょう!ご飯がドンドン進みます!
このミートボール、パンに挟んでも美味しいんじゃないでしょうか?」と言っていた。
「うん、忘れ無い内に、レシピ書いておくよ。 パンに挟むなら、似た感じの肉料理の『ハンバーグ』ってのがあるから、それをパンで挟んだ『ハンバーガー』がお薦めかな。ただケチャップとかその前に作る物があるからなぁ~。ちょっと材料考え無いと。」と頭の中で自家製ケチャップの材料を考えるのだった。
そう言えば、こちに来て、トマトに相当しそうな野菜を見た事が無い。
アリーシアさんに聞いてみたが、そんな物を食べた記憶が全く無いと言う。酸っぱいと言えばどうやら、柑橘系の果物を食べた事があると言う事で、名前はスから端mる名前だった様な・・・って微妙な情報だった。柑橘系は料理にも使えるので、積極的に探して行こう。
トマトは全く違う食べ物として認識されて無い可能性もあるな・・・王都に行ったら、王都の市場も探してみよう。とtodoリストの下に追加するのだった。
ちなみにに、このtodoリスト、もうかなりが完了済みとして横線で消されている。おっと、王都で魔動具屋の散策と時計購入を忘れてた! 追加追加!!
ミートボールの甘辛餡掛けの評判が良かったので、食後に残りの食材で、ストック用の分を大量に作って、『時空間庫』に保管した。
この所食生活が充実してるので、笑顔が絶えない。前世の俺に比べ実に心穏やかな気がする。
一晩経って、朝のルーティーンを済ませてから、起きて来たアリーシアさんと共に朝食を作る。
お箸の使い方もだが、最近はお米を炊くのは完全にお任せ出来る状態である。
俺は専ら、おかずや付け合わせの一品をストックしてる物と組み合わせて、朝食にしてしまう感じだが、アリーシアさんも厚焼き卵を作れる様になったので、大分楽をさせて貰っている。
毎日白米食べてて飽きないのか?って思うだろ? いや、他の選択肢が無いのだよ・・・。
まあ、実際飽きる事は無いけどね。
朝食を終え、片付けも終わったら、もう後は特に予定は無い。
明日は旅行中用のパンでも買いに行くか・・・と一瞬思ったけど、この世界のパンが不味いのを思い出してトーンダウンである。
本当なら日本のコンビニですら買える様な食パンをオーブントースターで焼いて熱々の所へバターを塗ってベーコンエッグやハムエッグを置いて、マヨネーズをスッと掛けて、熱々トロトロの黄身が零れない様に吸い付きながら食べたりしたいのだが、この世界のパンは高級パンってフレーズでさえ、コンビニで買えるパン以下である。
だったら、フランスパンのバケットの様な物か?と言われると、否と言わせて貰おう。
そもそもパンを作る工程が違うのかな? 堅いだけで、モソモソする食感にパンを食べてる気がしない物なのだ。そうだ、ミルクって売ってるのかな?
確か ラルゴさんのお宅でご馳走になった食事にチーズが入っていたよな? チーズがあるって事は、ミルクも在る筈だが、足の早いミルクを取り扱っている店がここマッシモに在るか?が問題なのだ。
最悪、行きの食事のパンは諦めて、王都で探すか?
あれ?何時出発って言ってた? まさか今日じゃないよな? あれれ?詳細聞いて無いな・・・と思い出して、ランクアップとウザ絡みのタジール君対応で正式に受注してないじゃん!!ヤベっ!! と急に焦る俺。
何か買いに行くにしても、先に指名依頼を受注して、詳細聞いてからだな! 序でに、あのBランクの依頼品、受けて納品しちゃう?
と思い立って、『時空間庫』から、該当する『魔の森』の収穫物を5個取り出して、リュックに入れた。更に前に見つけて採取してあった『月光草』を魔力をふんだんに含ませた魔力水で湿らせた綿っぽい物の上に置いて潰れ無い様に竹籠のン蟹入れて、リュックに詰めた。ふふふ・・・これを納めれば、晴れてBランクになるのだ。
俺は、アリーシアさんに声を掛け、冒険者ギルドに行った帰りに旅行?遠征?の準備しに行こうかと誘ってみたのだった。
「私が冒険者ギルドに行って、余計な事にならないでしょうか?」と昨日のウザ絡み事件の事が再発しないかと危惧するアリーシアさん。
まあ、それは一理あるんだが、昨日脅したし、大丈夫だと思うんだよね・・・。
一拍置いて早朝の依頼取り合戦が終わった頃合いを見計らって冒険者ギルドへと向かって家を出たのだった。
冒険者ギルドに到着すると、狙い通り、既に冒険者の姿も無く、ガラガラでここに来て初めて受付嬢の前のカウンターに冒険車が居ないのを目にした。
アリーシアさんにちょっと適当に時間潰して貰って、サクっと依頼の掲示板から、昨日狙って居たBランクの依頼書を剥ぎ取って、そのままズイズイとゲンダさんの前に行き、口を開く。
「ゲンダさん、おはよう。昨日、ドタバタしてて、指名依頼の受託して無いのきに気付いたからまた来たんだけど?詳細教えて! あとこれ、納品するから。頼むわ。」と言うと、そもそも昨日何の為にランク上げを行ったのかを思い出して、「あっ!」って言う顔をして苦笑いするゲンダさん。
「すまねぇ~、スッカリ、忘れてたぜ。」と言って、指名依頼の依頼書を見せてくれた。なるほど、護衛は往復かよ。そうかぁ、戻って来る行程あったか!? だけど、王都の滞在期間も長いし、その感は自由ってあるから意味はあるかな・・・。と頭の中で算段して受託した。
後は、納品だけだ。「ほい、このBランク依頼の『アプモグの実』とこれは『月光草』な。で、こっちが、マッド・ディアーの角で、ブラック・マーダー・ベアの魔石で、これが、フォレスト・バイパーの皮と魔石な・・・。」とドンドンと依頼書の品をカウンターに置いて行く。
「おーー!マジか!?」と驚きながら股先日のオッサン2人を従えて戻って来る。また今日も3人でワイワイと楽しそうである。
「スゲーな!ここまで状態の良い『アプモグの実』も『月光草』も見た事が無いぞ!」と興奮気味である。
「よし、OKだ。ギルドカード出してくれ。まさか1日でまた更新する事になるとはな・・・。」とゲンダさんが笑いながら手続きをしてくれたのだった。
こうして、晴れてBランクの冒険者となり、アリーシアさんと2人で買い物へと向かうのだった。
ちなみに、明後日が王都への出発日で、朝の6つの鐘にラルゴ商会の前に集合らしい。 マジで気付いて良かったよ。すっぽかしになる所だった。
尤もゲンダさんもランクの事があったので、ラルゴさんに最終的な返答をして無かったらしいけど、今日慌ててそれも行うらしい。
「さて、そうなると、今日明日で、大量に食事の作り置きをして置きたいね。スープや味噌汁も、寸胴ごと何種類も作り置きして置けば、現地で雨降ってても、食うに困らないし。」とアリーシアさんにこれからの予定を告げると、
「トージ様、あの肉巻きおにぎりも大量に作り置きして置きましょう!!」と嬉しいリクエストを頂いたので、ついつい「ガッテン承知の助!」と居酒屋風のノリで反射的に叫んでしまいポカンした顔をされたが、取りあえず何事も無かったかの様にスルーしつつ準備に入るのであった。
「肉はオーク沢山ストックしてるから、買う必要は無いけど、そうなると、野菜類や卵とかだな!」と必要な物を頭の中でリストアップして行く。
そうだ。麦の酒ベースで作ったみりん擬きもあるから、串を作って、タレに漬け焼きする肉串も作るかな。
と考えて居てハッとする。
「あ!!いかん、樽!!!ロベルトさんにマッシモを暫く空けるって言って置かないと!」アリーシアさんに思い出した事を告げる。
「あ!そうでしたね。スッカリわすれてました。 何だったら、私お留守番してましょうか?」と言うアリーシアさん。
確かに王都で解散ってわけでなく往路の帰り道もあるので、道中の不便さを考えると、同行するメリットは少ない。俺が、『ゲート』で迎えに行けば楽なのだ。
「うーん、それもアリか?とも思ったが、マッシモの夜明けのメンバーに王都でバッタリ会わないとも限らないし、今回は普通に同行して貰おう。」と言うと「判りました。」と了承してくれたのだった。
市場で大量に必要な食材を購入した後、その足で、ロベルトさんの工房に突撃して、依頼で暫く留守にするから、先払いして置くと言うと、「えっ!?」って声を漏らした後、何とも言えない微妙な顔をされてしまった。
不思議に思って聞いてみると、アリーシアさんが説明してくれた。
精算して行く・・・『死を覚悟の上』とも取れるので、ゲン担ぎで態と『未練』じゃないが、『やり残し』を残して行く商人が多いらしい。
「アホ臭!何て迷惑なゲン担ぎだよ!?」と俺が盛大に吐き捨てると、深刻そうな顔をしていたロナルドさんが豪快にガハハと笑っていた。
「安心してくれ、こう見えてもBランク冒険者だ。それなりに腕はあるからな。俺の故郷じゃ、『立つ鳥跡を濁さず』って言ってな、後顧の憂いを無くして気分良く旅立つ物なんだよ。だから、キッチリ精算してから行くぞ!」と宣言し、商人ギルドのカードで精算したのだった。
「『立つ鳥跡を濁さず』か・・・じゃあありがたく受けてって置くぞ。 てか、ちゃんと無事に帰って来て受け取ってくれよな? 邪魔だし。」と言うロナルドさんに、屋敷の裏の竜車用の倉庫を改造してあるので、留守でもそこに運び込んでおいてくれとお願いして了承して貰ったのだった。
そして、工房からの帰り道、ラルゴ商会に寄ってラルゴさんに直接会って指名依頼を受けた事を報告し、もし運ぶ物があれば、明日にでも『時空間庫』に回収する事を伝えたのだった。
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