第29話 護衛依頼受託の落とし穴 その1
翌日、指名依頼が入って居る筈だからと、早速冒険者ギルドに赴いたのだが、ここで俺は衝撃の事実を知る事となる。
「こんちは~」と冒険者ギルドに入った俺を見たサブギルドマスターのゲンダさんが、「おう、トージ、良い所に来た、こっちに来てくれ。」と俺を手招きして居る。
ふむ、護衛依頼の件だなって、足取り軽くゲンタさんの居る奥のカウンターへと、
「トージ、お前さんに商団護衛の指名依頼が入ったんだが、指名依頼も護衛依頼もDランクからなんだよ。お前、ここに来て、まともに1つも依頼受けてないだろ!?」と驚きの事実を知らされた。
「ああ、確かに買取はして貰ったが、依頼は受けて無いな。拙かったか?」と俺が返すと、苦い顔で頷くゲンタさん。
「うーん、それは拙いな。どうすれば手っ取り早くランク上げられる? 王都まで護衛しないといけないんでな。」と俺が聞くと、
「最低限Eランクの依頼を1つ、一つ上のDランクの依頼を3つ達成してくれりゃ、Dランクに昇級できるぞ。」と言うゲンタさん。
「じゃあ、Eランクの依頼1つとDランクの依頼2つ受けるぜ!」といって、掲示板のEランク依頼を探す俺に「Eランク依頼なら、常設依頼のゴブリン5匹かホーンラビット10匹が早いぞ。」と後ろから声を掛けてくれるゲンタさん。
「オッケー、じゃあ、Eランクはゴブリン5匹にすっか。其処らに居そうだし。討伐したゴブリンの遺体居るのか?」と俺が聞くと、「アホか!あんなん、邪魔なだけで、要らんわ! 魔石と討伐証明部位の右耳を持って来い。あと、其処らに遺体を放置するなよ!魔物が寄ってきて餌にして増えちまうからな。ホーンラビットの場合は解体して持って来れば良い値段になるぞ。魔石と角が討伐証明になるが、毛皮と肉は買い取れるからな。」と教えてくれた。
「なるほどね!了解だ。で、残るはDランク依頼か、手頃なのはっと・・・」と言いながら掲示板を眺めると・・・「あった!これ良いな。」とお馴染みのロック・バードの討伐と言うか、肉の依頼である。
「一つはこれで良いか。他に2つか・・・」と探している俺にまたもや後方からゲンタさんの声が。「トージ、1つ目はロック・バードの納品依頼か? この時期見つけるの事だぞ? それ、1匹当たり、1依頼カウントになるから、3匹で3依頼になるぞ!」とちょっkと悔しい感じのお知らせが・・・。
「何だよぉ~、数日前に、3匹仕留めて食っちまったよ・・・。」とぼやきつつ他のDランク依頼を見て居ると、マギ・マッシュの採取依頼を発見した。
俺はほくそ笑みつつ、ロック・バードの依頼書とマギ・マッシュの採取依頼書を引っぺがしてゲンタさんの所へと持って行った。
「間に合うのか? 王都行きの出発って、3日後だって聞いたが? まあ、急ぐしかないけどな。一応、お前さんの所に来た指名依頼の方は保留扱いにしてるから、頑張ってくれ。」と言いながら受領の手続きを取ってくれたが、「お前さん本当にこのマギ・マッシュの採取依頼大丈夫か?金額は良いけど、この時期、滅茶滅茶生えてないぞ?」と心配そうに聞いて来た。
「ああ、大丈夫だ。心当たりあるから、多分、今日明日で全部終わるから・・・。」と言って颯爽と冒険者ギルドを後にするのだった。
依頼を大急ぎで熟す為に早々に動かないといけないのだが、その前に一旦家に戻ってアリーシアさんに一報入れて置くべきか? こう言う時に携帯等の通信手段が欲しい所だ。
街中の往来で『ゲート』を使う訳にもいかず、小走りに家へと急ぎ、アリーシアさんに報告して、冒険者のスタイルにきがえをしたのだった。何時もの真っ赤なローブに真っ黒なリュックだけど、
こうして、街中に居ると、滅茶苦茶派手だな・・・。
そして、家を出ると城門まで小走りに進んで、この街に来て初めて街の外へと正式に出たのだった。 一応、『ゲート』で現地にショートカットすると、門での履歴が残らないからね。一応のハリョという事だ。
今日の衛兵は、俺がこの街に来た時に対応してくれたお兄さんで、俺を覚えて居た様で、「おう、久しぶりだな。街には慣れたか?」と気遣う様に声を掛けてくれた。
「ああ、どうも。お陰様で、快適に暮らして居るよ。ちょっと依頼を受けたんで、稼ぎに行って来るよ・・・。 あ!そうだ。すまないが、教えてくれ。この門って時間によって閉まったりするのか? それによって帰りの時間とか調節しないといけないし。」と思い出したので聞いて見ると。
「そうか、知らなかったか。この時期だと、夕の刻の6つの鐘(つまり18時)に大門(竜車用の通行門)は閉まるぞ。まあ、冒険者用の通用門は、銀貨1枚で夜でも開けるが、そうじゃなければ翌朝の朝の刻の6つの鐘(つまり朝の6時)に大門が開く。まあ、夕暮れ前に戻るつもりが良いと思おうぞ。」と詳しく教えてくれた。
「なる程、良く判った。親切にありがとうな!」とお礼を言って、通行者の目の多い門からいち早く離れる為に颯爽と走り出したのだった。
城門の前に続く街道を15分程走った所で立ち止まり、周囲を見回して、傍に広がる森の方へと足を向ける。気配を探ると、それなりに魔物や生物の反応がある。
手っ取り早く、一番近いゴブリンらしき反応の所へと、気配を殺して移動し、木の陰から、グギャグギャと騒いでいるゴブリン3匹に素早く魔弾を眉間にぶち込んで瞬殺する。
そして、返り血で汚れない様に、無属性魔法の触手(マジックハンドの様な物)で胸の奥から魔石を取り出し、右耳をカットした。
辺りに充満する生臭い鉄錆臭+義ブリン特有の強烈な悪臭。
昔最初の頃は、吐き気が止まらなかったが、今では平気になってしまった。魔石と耳をウォッシュで洗って、そのままきんっちゃく袋に小分けにいれて、サクっと地面に穴を開けて残った亡骸を触手で叩き込んで土を戻して埋めた。
これで一丁あがりだ。後はゴブリン2匹だな・・・。直ぐに索敵を開始して、近くに居たホーンラビットの首を飛ばしてそのまま血抜きを行う。久々にホーンラビットの串焼きも食いたいし、王都までの遠征時のおやつ用に多めに狩っておこうと次々にゴブリンとホーンラビットを狩って廻る俺。
こんなにも、街の近くの森なのに、意外にゴブリンが多いのに驚いてしまう。ゴブリンなんて、百害あって一利無しなのに、あんまりゴブリンを狩る物が少ないのかも知れないな。まあ、安いし食えないし、しょうがないのか?
十分なゴブリンとホーンラビットも討伐したので早速先日ロック・バードを発見した辺りの上空へと『ゲート』で移動して、久々にウイングスーツで滑空を開始する。そして、先日の場よから少し離れた所に居るロック・バード5匹の蒸れを発見して上空から魔弾で急襲した。
キッチリ頭を狙い撃ち、そのまま着地して、首を刎ねて血抜きを行う。大漁だ。折角だし、もうちょっと狩りたい所だが、『時空間庫』にストックがあるとは言ってもマギマッシュの在庫も増やして置きたい。
だって、マギ・マッシュは生で食うより一回天日干しして、干し椎茸の様に戻し汁を出汁に使いつつ使って食う方が断然美味いんだよな。
ちなみに、干しマギ・マッシュを粉末にした物を混ぜた振り掛けも作りたいと思っていたりするし、在ればあるだけ良いのだ。
◇◇◇◇
『魔の森』で3時間程集中して討伐&採取をした結果、ロック・バードを7匹、オークを20匹程、更にマギ・マッシュに関しては7個も採取出来た。
だが、オークに関してはこれをこのまま提出するのはかなり難しい・・・。
勿論血抜きはしているし、そこら辺は問題ないのだが、最初に仕留めたロック・バードを5匹だけでも大きなズタ袋にパンパンな状態で、更には最初の森で仕留めた大漁のホーンラビット15匹もあって、半分の7匹提出でさえ、もう一つのズタ袋は厳しい状態なのだ。
冒険者ギルドに『時空間庫』が使える事を公開するつもりはないので、この背中の黒いリュックがマジックバッグと言う設定で、中からホーンラビット7匹入りのズタ袋を引っ張り出す予定なのだ。
ロック・バードを5匹入りのズタ袋は流石に無理があるので、肩に担いで行くとして、まあそんな所だろう・・・。
さあ、ちょっと遅めの昼飯を適当に摘まんでから最初の森へと『ゲート』で戻ろう。
あ、慌てて出て来たから、アリーシアさんの昼食用意して無かったけど、ちゃんと食べたかな?
まあ、子供じゃ無いんだから、大丈夫か?
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