第27話 唐揚げフィーバー・ナイトの落とし穴

夕食は俺が狩って来たロック・バードが3匹の唐揚げがメインである。


残念なのはみりんが無い事だが、取りあえず、麦のお酒(どぶろくっぽい粒がある物なので一旦布で濾した物)を代用して、味付けしてみた。早く料理酒用の日本酒とみりんが欲しいところだ。


まあ、それなりに糖度もあるし、多少砂糖も加えたから、全く美味しく無い物にはならないとは思う。何しろ、醤油(ソイ)の味が濃いから。


あと、芋から、澱粉を取って片栗粉を無理矢理作った。


え?どうやってって? 綺麗に洗った芋を魔法で粉砕して、水と混ぜて澱粉乳を取り出して、無属性魔法で無理矢理分離遠心分離機の要領で不純物と分離させて、澱粉のみを濾して残った澱粉を


沈殿させた下に溜まった物を取り出して、水分を飛ばしたら、最終的に白っぽい塊になった。これを粉々に粉砕して、片栗粉っぽい物になったので、これを『片栗粉』と名付けた感じ。

ポイントは、如何に不純物を取り除いて綺麗な澱粉だけを残すかかな?


まあ、でも使った芋の割に取れ高は微妙だった。もっと効率の良い方法があるのかも知れないけど、昔ネットで聞き囓った俺の知識では、これで精一杯。


でもね、この片栗粉のお陰で、餡掛け系のメニューが愉しめる様になるから愉しみだよ!

天津飯とか、餡掛けチャーハンとかも良いね!!


それに、出汁巻き卵と言うか、厚焼き卵にも片栗粉入れて、フンワリさせる事も出来るし。


一応、澱粉を取った時に大量の出た滓?のペーストも勿体ないので、何かに使えるかと、ちゃんと取ってある。


まあ、最悪コンポスト行きだけど、小麦粉とか混ぜて焼けば、おやつとか、何かに化けないかな?と、要研究だね!


多分今後、俺の料理が広まったら、片栗粉の製造工場を作る必要になると思うんだよね。


今回はかなり魔法で無理矢理やって端折ったけど、工場で作るなら、遠心分離機とか最初の摺り下ろしとかはジューサー的な魔動具が必要になるんだと思う。


乾燥工程だと、水との分離で錬金術かな? 早めに魔動具や錬金術が出来る様に勉強しなきゃ!


と言う事で、芋に手を出した序でに芋も油で揚げて、フライドポテトもメニューに追加する事にした。


ああ、今度『天ぷら』を作るのも良いな。


そうなると、天つゆも欲しいが、鰹だしがネックだなぁ~。


この世界に鰹が居るとは思えないが、似た様な出汁の取れる何かが存在して欲しい。勿論、昆布もね。


黄金出汁と白出汁って言うんだっけ? 和食の要だもよな。






と言う事で、今夜の夕食は唐揚げと竜田揚げの2弾責めに口休めのフライドポテトもあるが、


肉ばかりだとバランスが宜しく無いので、大根っぽい野菜をおろした大根おろしを作って、ちょっぴりビネガーと醤油を混ぜた物を掛けたつけダレっぽい物を作り、みぞれ掛け風にも味変出来る様に配慮した。



あと、もう1つ味変用に昨日のマヨネーズを使ってタルタルソースも作ってみた。

付け合わせの味噌汁は無しで、鶏(ロック・バード)ガラから取った出汁の野菜ゴロゴロのスープも作ってみた。


一応、鶏ガラスープは、現在持って居る唯一の出汁汁となるので、3匹なので寸胴3つ分を一気に作って、丁寧に灰汁取りをして、黄金色の鶏ガラスープを作りあげて、ちゃんとストックして居る。


その内、豚骨や牛骨スープにもチャレンジするかな・・・。


って事で、今回は特に我ながらなかなかに力作だと思う。


勿論、手伝って貰ったのでアリーシアさんとの合作だけど。


この世界の料理人のテクニックがどうなのかは知らないけど、アリーシアさん曰く ガラから出汁を取ると言う発想が無かった様で、俺の手法に大変驚いていたから、


多分そう言う手法も無いんだと思う。



始めて見る大量の油を惜しげも無く使った揚げ物にアリーシアさんが驚いたり、パチパチと水分で弾ける様子にビビったりしていたのだが、一応、無属性魔法で危なくない様にソッとガードしておいたので問題ない。

頂きますの後、

完成した唐揚げと竜田揚げの2皿を前にして、小皿に入れた塩胡椒をチョンと付けて口に運ぶアリーシアさんに俺はあわてて、注意を促す。

「あ、アリーシアさん、イキナリガブッと行くと中から、熱い肉汁が溢れて口の中火傷するから気を付けてね!」と言うと、かなりおっかなびっくり小さめに囓っていた。ナイフを出して渡してやると、自分で切り分けてパクパクと食べ始める。


「美味しい!!」と喜びの声を上げるアリーシアさん。


俺も一口味見したが、本当に美味かった。ご飯に良く合う定番の味である。懸念したみりんが無い事だが、麦のお酒ベースでも、それ程悪くはない。


個人的には久々の大根おろしのみぞれ掛け風が非常に美味しく好みではあった。


アリーシアさん曰く、タルタルソースも絶品で売れると惜しみなく太鼓判を押してくてたのだった。



まあ、今回ストック用のおかずと言う事も含め大量の唐揚げと竜田揚げを作った訳だが、今夜の夕食だけで2人で結構な量を食べてしまったので、いつまでストックが保つかは微妙である。


少なくとも、前世の身体だと、胸焼けしてしまうのは不可避なぐらいは食った自覚はある・・・。


ちなみに、この世界初の揚げ物のお陰で、キッチンは飛んだ油で厭なテカリとヌルヌルが着いてしまったので、最後にキッチリウォッシュ&ドライを掛けて、隈無く元通りに綺麗にして置いた。


そう! この家のキッチン本格的に今回使って気付いたのは、何か足りないと思っていたけど、『換気扇』が足りないんだよ!!

これだけの屋敷のキッチンなのに変だよね?

アリーシアさんに聞いてみたけど換気そのものの必要性を感じてなかったので、この世界に『換気扇』その物が無さそうな気がする。



換気扇って、作るとしたら、やっぱり魔動具だよね? 早々になんとかしないと!と思ってtodoリストに追加して置いたのだった。


まだ今回は油物だったから良いけど、焼き物系だと煙の問題あるし、ちゃんと換気しないとキッチンだけでなく、家中に匂いが染みついちゃうからね・・・。

当面、換気扇出来るまでは家の中での焼き物と油物は自粛しよう!

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