第26話 醸造所の建築
酒樽等の手配が終わった俺はルミーナさんにお礼を言ってロベルトさんの工房の前で別れ冒険者ギルドへと向かって、中を見たけど待ち合わせもして居ないのに都合良く『マッシモの夜明け』のメンバーが居る訳も無く、結局、先日ギルドカードの新規登録時にお世話になった坊主頭のオッサンにお願いし、大金貨1枚分百万ギリーを分け前として『マッシモの夜明け』のリーダーであるケネスさんに渡す様にとお願いしたのだった。
この坊主頭のオッサンはサブギルドマスターのゲンダさんと言うらしく、ゲンダさん曰く、「おめぇ~・・・トージだったか? その内容で百万ギリーは払い過ぎだろ!まぁ良いけどよぉ~。普通、良くて銀貨1枚ずつでも多いぐらいだぞ? お前が窮地救ってやったんだからな!優し過ぎると、舐められっから、気を付けな!」と一応の相場と一般的な対応を教えてくれたのだった。
「ありがとう。まあ、今回だけは特別って事で、なかなか会う機会なくて奢れそうにないんで宜しく頼むよ。」と言っておいた。
これで、義理は果たしたと思う。少し心がスッキリした。
そして最後に冒険者ギルドの方に家を購入し住所が変更になったのをゲンダさんに伝えたのだが、
「おめぇ、彼処買ったのか!?」と驚きの声を発し、他で絶賛口説かれ中だったカウンターの受付嬢がピシって止まり、微妙な空気が受付カウンターに流れて居た。
アリーシアさんと2人で来た事もあって、かなり離れた所で聞き耳を立てていた受付嬢から、アリーシアさんへ向けられる視線に何とも言えないちょっと恐ろしい感情が籠もって居た気がするのは気の所為では無いと思う・・・。
アリーシアさんを同行させたのはちょっと失敗だったかも知れない。
一応、フォローって訳じゃないけど、ゲンダさんに
「ああ、一応、紹介しとくよ、こちらはアリーシアさんと言って、うちの『商会』を手伝って貰っている大事なスタッフなので、何かの際にお遣い頼むかもしれないから、宜し頼んだよ!」と変に勘ぐられない様に予防線を張って置いた。
その説明に幾分受付カウンターからの圧が和らいだ気がした。
どうやら、俺のフォローが功を奏したらしい。
これで、冒険者ギルドでのミッションはコンプリートである。
冒険者ギルドを出ると、その時点で結構良い時間で、本来なら、美味しい肉巻きおにぎりを食べる予定だった昼食時間である。
「さて、本日のメインの予定は完了した訳だけど、昼飯どうする?俺達の分、食われちゃったけど、また帰って作るか? その方が満足行くし。」と俺が提案すると、パーッと明るい笑顔で頷いてくれたのだった。
「出来れば・・・あの食べ損なった肉巻きおにぎりを食べてみたいです。」とのリクエストも添えて。
「だよな!あれ美味そうだったよな。そのプラン、乗った!この際だし、多めに作って置こう。」と言って市場で大根っぽい野菜や小ネギ等、先日使い切ったショウガや卵を買い足して自宅へ戻るのだった。
◇◇◇◇
どうせ大量に作るならと、お米を追加で精米し、ご飯を多めに炊いてストックする事にした。
甘辛の味付けオーク肉もジャンジャン焼いて2人でおにぎりを握ってセッセと肉を巻いて行く。
ちょっと時間は掛かったが、2人で作った肉巻きおにぎりは非常に美味しかった。
「うん、これなら、本当に屋台で売れる事間違い無いな。値段によるけど・・・。」と自画自賛する俺。
食後、アリーシアさんにちょっと作業に入るからと伝えてから、屋敷の裏へと回ったのだった。
午後からは、醸造所を建てるというか、竜車用の倉庫を改造して醸造所にしようと思っているのだ。
一から建てても良いのだが、どうせ、竜車なんか使わないし、ある物を利用した方が手っ取り早いと思うわけで、昔日本の動画で見た酒造りを再現しようと思っているので人に細かく説明するより、必要な木材は『魔の森』から伐採して来てサクサクと作ってしまえと思って居るのである。
購入前には余り詳しく見てなかっかったが、この倉庫、ちゃんとメンテナンスされていた様で、雨漏りもなく、立て付けもシッカリしている。当面の酒の試作はここで十分だろう。
『どぶろく』が出来て、それを濾す段階になれば、状況を見てもうちょっと手を入れる必要がありそうだが、3時間程集中したお陰で、思った以上に早くそれっぽい形になったと思う。
後はロベルトさんの大きな桶が納品されて来てからだな・・・。
久々に『魔の森』で伐採序でのハンティングもやって、美味しそうなロック・バードが3匹(羽ではなく魔物は匹の単位で数えるらしい)が手に入ったのは幸いだった。
お馴染みの美味しい鳥の魔物だけに色々とメニューが思い浮かぶが、ここはやはり、先日入手した油もあるし、美味しい鶏肉があるのなら、唐揚げの一択だろう!?
確かにマイマイもあるから、一瞬親子丼の線も浮かんだのは否めないが、直ぐに脳内会議で反対多数で却下された。
そう、ロック・バードの肉はあるが、卵は無い。このままだと親子では無く、他人丼になってしまうのだ。
やはり、そう言う様式美はちゃんと守らないと元日本人として胸を張って名前を発表できないからな!
他に、取り料理と言えば、棒々鶏やローストチキンもあるが、ここは、『漢の唐揚げ定食』をチョイスしておこうと思う。
まあ、脂っこいと言う短所もあるが、約2年以上振りだし、カロリーが高かろうが、ドンマイだ!
しかし、折角油物作るのに、唐揚げだけだと少し寂しいな・・・。
何か他に作る物は・・・。と頭の中でメニューを考えるのであった。
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