第24話 レシピ登録とプレゼンの準備
俺は余ったご飯でおにぎりを握って、薄く切って、砂糖醤油と洋酒を少し混ぜたタレに胡椒の粉をひとつまみ掛けたタレに付け込んで、フライパンでサッとひを通したオーク肉を作り、おにぎりを作ってその肉で巻いた。
本当は海苔が欲しい所だが、無い物はしょうがない。 具も入れてないので甘塩っぱい肉が丁度良いだろう。
作ったおにぎりは4つ。俺とアリーシアさんの分が1つづつ。
後の2つは見本用である。
レシピを紙に書き出して、メニュー毎に纏める。
更に製品の説明と要点や製造上の注意事項を製品毎に纏めた。
先日購入した食事のカトラリーのナイフを魔改造して、鋏を2個試作して見本としてみた。
流石に詰め切りと毛抜きの実物を金属で作るのは無理だったけど、竹をカットした削り出しで、簡易的に本物同様の動作をする試作品を作りあげておき、一応鋏同様に製品の資料は纏めておいた。
毛抜きとか、意外にこの竹製の物でも使えたりする。 爪切りは刃が竹だから切れないし無茶すると壊れるけど、動作を見る分にはバッチリである。
これらも見本として2セット作っておいた。
これを持って商業ギルドに持っていって、ご飯の炊き方、石鍋等を登録しようと思って居るのだ。
俺は書斎に籠もって各レシピの書類を作り、お米を炊く際の軽量カップの基準となる物を作り、さらに軽量スプーンも作成して、誰が作っても同じ様な味になる『基準』この世界に提供する事したのであった。
商業ギルドにはレシピと似た様な特許システムがあり、軽量カップや計量スプーンも特許として申請が出来るのだ。
結局の所、全て目分量の世界だと日によって味にバラつきが出るのはしょうがない。まあそれを言えば、砂糖にしても塩にしても精製された日本の製品と違うので、10ccを軽量してもバラついて当然なのだ。
準備が終わったら、早速、アリーシアさんを連れて、商業ギルドに向かって歩いて行く。
「どうも、こんにちは。先日は良い家をご紹介頂き、ありがとうございました。」と受付カウンターのルミーナさんに挨拶をする俺。
「あ、どうもいらっしゃいませ、トージ様。」とルミーナさんが挨拶を返してくれた。
「で、本日はどのような御用で?」と言われて、「えっと幾つか特許?商品の登録と、レシピも登録死体なぁ~と。」と言いながら、作成した計量カップや、計量スプーンに石鍋等をカウンターに置いて見せた。
「なるほど、これも別室でお聞きすべき案件ですね。」と言って、ここ数日通い慣れた応接室へと向かったのだった。
で、まずは商品として登録する物、計量カップや、計量スプーン、そして石鍋をテーブルに並べた。
商品の登録時には、商品の特賞を記載下仕様書の様な物が必要となるが、俺はその根拠となる基準を砂を使って証明する事にしたのだ。
軽量カップにキッチリ入る量の砂を提出する事で普遍の基準地を見せた。
これまで、この世界では無かった容量に対する考え方、それに何故それが必要となるのかを説明した仕様書。
もしかすると、この特許と言うか、方針は受け入れられないかも・・・と思ったので、捕捉する為にリュックから、朝の残り物の厚焼き卵と肉巻きおにぎりを机の上に並べて見せ、
「これが、これから登録するレシピを使って作った食べ物です。味見してみて下さい。私が先に軽量カップや計量スプーンを作ろうと思った訳が理解出来ると思います。」と言うと。
初めて見る食べ物にビビりながら俺の作った4つ股フォークを手に取って、厚焼き卵を刺して口に運んだ。
「わぁ、これ、凄く美味しいです!」と驚きの声を上げて、次に肉巻きおにぎりをフォークで刺そうとして悪戦苦闘していたので、「ああ、こちらは、手で持って食べた方が食べ易いです。本来手で持って食べる料理なので。」と説明すると、
意を決した様に手で掴んでパクりと食い付き、口の中で咀嚼して、また更に顔に笑顔が溢れ、空いてる方の手の親指を立てて美味しさをアピールしていた。漸く口の中の物を飲み込んだルミーナさんが興奮気味に美味しさを熱く語り始めた。その騒動と言う訳では無いが、ここの所連日お騒がせしている俺が来て居ると知ったギルドマスターのロバートさんがこの応接室に乱入して来たのだった。
残念ながら、俺とアリーシアさんの昼飯の肉巻きおにぎりが消える事が決定した瞬間だった・・・。
朝の残りの厚焼き卵もこれで品切れである。無念だ。
そして、結果、俺の料理について熱く語る信者がアリーシアさんを含めて3名に増える結果となったのだった。
「なる程、目分量では無く、ちゃんと再現性を高めた所にこの商品とレシピの凄さがあります。しかも、家畜の餌ぐらいにしか使われて無かった『マイマイ』ですか!? 素晴らしいです。」と絶賛するロバートさん。
結果、俺の商品もレシピも見事に登録可能となった。
「で、この軽量カップや計量スプーンですが、特許使用料を取らないのですか?」と不思議そうにするロバートとルミーナさん。
これには俺なりの思惑があっての事である。 単純な理由で、俺が延々に製産したくないって事情があるのだが、特許料使用料をほぼ0にする代わりに『容量』を責任持って担保しろ!って事なのだ。作者によって量が変わったらペナルティーを儲ける感じにしてあるのはその所為である。
「面白い試みです。」とマッシモ発信のこの製品や考え方に嬉しそうなロバートさん。
「まあ料理のレシピはまだまだ沢山登録する予定なんで、期待してて。」と言うと、「是非に!」と目を輝かせていた。
「じゃあ、こちらの石鍋だけはトージ様の方で作って納品していただけるんでしょうか?」と聞いてきた。
「うーん、正直そっちも本当は職人さんに任せたいんだけどね。 この石鍋の本当の意味は、この鍋のこの縁の部分の返り部分があるでしょ、こことこの蓋にポイントあるんだよね。」と思わず意味を熱く語って仕舞う俺。
「マイマイを焚くと、白い粘り気のある泡が吹き上がって来て、吹きこぼれそうになるんだけど、この縁の返りがあると、吹き零れ難くなるんだよね。さらにこの石の蓋が、この鍋の縁に密着して蓋自体の重さで内圧が上がって良い感じに炊き上がるんだよね。更に中のこの底面の曲線が、内部の水の対流を産み出して、鍋の内部でマイマイが上手く水流で踊るから、偏る事無く熱が入るんだよ。」日本の電気釜の宣伝文言通りに熱く説明した。
だから、これと同じ形状の物がつくれるのなら、職人に任せたいんだけど、どう? と言ってみた。
「で、形状や品質的に合格の品には、合格の証のマークを彫り込むのもブランド戦略として良いかもね。 ああ、軽量カップや計量スプーンの方もそれ、行けると思うよ。お客さんに周知しとけば、ブランドマーク見て買う様になって、パクリの品と差別化出来るし。」と説明すると。
「一旦、職人等に確認してからの返事で宜しいでしょうか?」とお願いされて、了承したのであった。
結局、このおれのブランドマーク案は本採用となり、俺の考案したマーク(デフォルメした桜の花びら形状)はオオサワ・マークとしてされた。
更に急遽作った鋏のプロトタイプを使って、紙や髪の毛、生地を切ってデモンストレーションして見せて、特に器用でなくても緻密にカット出来る事で、ロバートとルミーナさんが大興奮し、「これは売れます!! トージ様、貴方は神ですか!?」とある意味神殿関係者が聞くと邪教信者と宗教裁判に掛けられても文句言えない様な台詞を絶叫していた。
「いや・・・只の人間の男ですが・・・。」と小声で訂正したのだが聞いて無い様子だった。神と言えば、この世界だと、女神マルーシャ様がいらっしゃるし、のじゃロリな姿は脳内で拝見して居るし・・・この世界では神は実在するのである。
「女神マルーシャ様、違うんです!(悪いのは)私じゃないんです! この2人です!!」と一応言い訳の思念を思い浮かべて無実を訴えておいた。
更に、鋏の爪専用バージョンって事で詰め切りと毛抜きの竹製の試作品と資料も見せると更に「やはり神だ・・・」と熱狂振りがアップしていた。
「これは早速鍛冶屋に言ってサンプルを作らせましょう!」と今にも鍛冶屋に走り出しそうなぐらいに大乗り気であった。
「ああ、鋏と爪切りや毛抜きは、
これで、面倒な事は俺の手をほぼ離れた事になる。
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