第23話 至福の朝

何時もの如く早朝(7時くらい)に自然と目を覚まし、森の拠点に移動してで日課もの鍛錬を済ませてから今日の自分達の食事の分に加えレシピ登録に必要な分の脱穀を済ませ新居へと戻り、朝食のの準備に取り掛かる。


今日の朝食は足りない調味料の関係で質素ではあるが、和食系にしたい。


本当なら、塩鮭を焼いたり、ちょっとした煮物とかも作りたいけど、色々材料が足りて無い今はまだ我慢だ。



卵を割って溶いて醤油と塩少々にザラメを砕いた物を少々入れてホンノリ甘い厚巻き卵焼きを作る予定だ。日本酒にみりんもだが、片栗粉とかも欲しいな・・・。


片栗粉って澱粉だから、自作出来そうな気もするな。


森から採取して来た小ネギを刻んで溶いた卵に混ぜて、少量の油をフライパンに敷いてスッと溶いた卵をフライパンに垂らして、固まりきらない内に素早く巻いてまた溶き卵を追加でいれて、巻いて行く。

今度鍛冶屋に頼んで四角い出汁巻き卵とか作るフライパン特注しようかな?


確か、少し片栗粉を入れるとフンワリ度が増すって聞いたけど、あんかけとかにも使えるから、芋から澱粉取ってみたいな。


焼き上がった厚焼き卵を包丁で切って、素早く皿に分けて『時空間庫』に入れる。 余り余熱で火が入らない様にする為だ。


ご飯が炊けるまでに味噌汁を大根っぽい野菜を短冊に切った大根っぽい野菜と茸を入れたお味噌汁を作って、これだけだと寂しいので、オーク肉の駒落としと玉葱のスライスした物と一緒に醤油とザラメで甘辛く炒めた一品を小鉢風にした。

丁度ご飯が炊き上がったので、アリーシアさんを起こしに部屋に行き、コンコンと何度かノックすると、ドアの向こうでドッタンバタンと大きな音がした。

「おはよう、朝ご飯出来たから、覚めない内に・・・。」と俺がドアの外から声を掛けると、

「は、はい。今行きます。30秒だけお待ち下さい。30秒だけ!!」と焦った声が聞こえて来た。

「うん、大丈夫だよ。けだし無い様にね。」と言って、お茶碗にご飯類を装って準備が完了した。

一応、昨日本人の希望もあったので、俺の作った予備のお箸をアリーシアさんの分として置いて、フォーク(俺の自作の4つ股の木製の物)とスプーンもワンセット置いて置いた。


最後におかずの卵焼きや、オーク肉の甘辛炒めの小鉢に、味噌汁を出して完了だ。


バタバタと、アリーシアさんが真っ赤な顔をして現れて、「寝坊してしまってごめんなさい。」としきりと謝って居たが、「大丈夫大丈夫。さあ、食べよう。お箸はイキナリはまず使えないから、食事の時間以外で練習すると良いよ。ちゃんとスプーンとフォークもあるから、今日はそっちを使いなよ。」と言って頂きますをした。


「これ、なんですか?とても美味しいです。」と俺の焼いた厚焼き卵を褒めてくれた。「うん、それは厚焼き卵だね。材料あればもっと美味しくなるんだけど、まあまあの出来映えかな。」と言いながら、何時か出汁巻き卵にしたいと心に誓うのだった。


総評として、今朝の食事もなかなか良かった。


「トージ様、冒険者なんてしなくとも、食堂やった方が儲かりそうな気がします!」と真剣な表情のアリーシアさんが言って来たが、「いや、俺って単に自分が日々美味しい食事を食べたいだけで、それを生業とはしたくないかな。今だって、俺がアリーシアさんと一緒に食いたくて作っているだけだし。この食事が外でも普通に食べられる様になれば一番良いかな。」と店を出すのはヤンワリと却下して置いた。



「ああ、教えるからアリーシアさんが店を出すのは止めないし、寧ろ毎日通うかも。ははは。確実に常連になるな・・・。」と言うと、「頑張って覚えます!」と意気込んでいた。


今日の予定だが、まずは商人ギルドへ行って、レシピや商品の登録を行いたい。


あと、ズーッと気になっている『マッシモの夜明け』への分け前分の配分な!一回冒険者ギルドにも出向く必要があるだろう。

直接逢えなくても、冒険者ギルドの方に『マッシモの夜明け』宛ての分を渡してお願いしとけば大丈夫だろうし。


後は、ラルゴさんの所に鋏や爪切りのアイデアのプレゼンかな? 先にプロトタイプでも作って見せた方が早いかな? 鍛冶屋に行った方が良いのかな?


設計図と言うか、絵を描いて説明は出来るけど、俺の絵だと判り難いかな?


そう言えば、この国の地図ってあるのかな? 海近くになるかな? 海苔とか昆布とかワカメとか、海の幸が欲しいんだよね。


鰹節とかまでは無理だろうけど、出汁が取れる何かは欲しいうよね。 ああ、あと豆腐も作りたいから苦り(にがり)も欲しい。


問題はよくよく考え無くても、この国の名前すら知らないのだよ。今更他の人には聞き難いから、後でアリーシアさんに聞いておかねば!


もし図書館とかあるのなら、通って地理や周辺諸国の関係や歴史等の基礎的な知識を詰め込むべきかな・・・。


食事をしながら、だが、俺は、アリーシアさんに本当に基本的な質問をして、知識を得た。


尤もアリーシアさんも余り詳しく無いとの事で申し訳無さそうにしていたが、俺より知って居るだけ十分である。


まず、本当に今更なのだが、知ったのは、この国の名前。


ローデル王国と言う王制の国だそうで。建国約900年以上なのだそう。


この国は昔から温厚な国で、人族だけで無く他の種族に対しても平等で種族による上下の差は無い。

ただ、平民と貴族による身分差はあるので不敬罪には気を付ける必要があるとか。

基本として我が国では犯罪奴隷以外の奴隷を認めて居ない。

日本人感覚として、奴隷=悪と取れ得がちではあるが、ここは異世界である。

孤児院以外のセーフティーネット何か殆どなく、希に領民思いの領主が収める領地ではスラム等の困窮する人々に炊き出し等を行う事があるがそれでお終い。

這い上がるのも立ち上がるのも、自分の足で踏ん張る必要があるのだ。


で、話は奴隷制度だが、これには一長一短があって、困窮する者達にとっての最後のセーフティーネットでもあるのだ。


困窮し、自分の身売りしか手段が無い場合、それさえ出来なければ、死を選ぶか、犯罪に手を染めるしか無いのだ。


だから、犯罪を犯して捕まって犯罪奴隷となると言う悪循環が出来上がるので、善し悪しと言う事だ。


ただ、奴隷制度を認めない事によって、人攫いや犯罪組織等による婦女子の誘拐不法奴隷堕ちと言う最悪のルートが無くなった事だけはこの制度を禁止した成果と言える。


近隣には最古の歴史を誇るバッケルガー帝国と言う建国1000年と言う国があるらしい。

ただ機会があるかは別として、バッケルガー帝国は、我が国の様に緩い感じではなく、身分制度や種族による上下関係が非常に厳しい国だそうで、出来れば近寄らない方が無難と世間では言われているらしい。

で、帝国はその様な国なので、奴隷制度がある国で、犯罪奴隷以外に借金奴隷が存在するが、一旦借金奴隷に身を墜とした者が再び平民に戻る事はほぼ無いとされて居る。


要は後ろ暗い制度の闇が存在するらしい。盗賊達は、竜車を襲い、捕まえた婦女子に狼藉を働くだけで無く、国内では奴隷禁止で売れない為ので帝国に密入国して売り払うのが常套手段とされているらしい。


つまり、アリーシアさんも非常に危なかった訳だ・・・。良かったよその前に救い出せて。




そして、話題を盗賊の蛮行の件から逸らす意味も込めて、海に面した場所を質問した。


嬉しい事にこの国も一応、海に面している地域が在るらしい。


これは俺に取って非常に良いニュースだ。この街からだと、王都を越えて先の方向らしい。


あと、最後に重要な事。


この世界の時間や分の長さは地球のそれとほぼ同じと考えて良い様だ。厳密には1日は23時間らしいが、1分が60秒で1時間が60分と言うのは地球と同じ。

あと長さの単位はメリルやキリメリルで1メリル=1m 1キリメリル=1000メリル  つまり、記号としては地球と同じく1メリルは1mと言う風に表す。

1キリメリルは1kmと書き表し、俺の身長から換算した所ほぼ地球と同じ様な感じと思われる。


恐らくだけど、過去の手駒先輩が強引に判り易くしたんじゃ無いかと・・・。 確か記憶では地球の円周可何かを割ったのが1mの由来だったと思うけど、このせかいでは、お構いなしに決めたんだと思う。


俺の計量カップとかと同じヤル口じゃないかと思う。ただ、地球だと長さの単位はマイルや 重さだとポンド使ったり統一されて無い国もあるから、きっとその手駒先輩はメートルを使って居る国から来たんだろうな。


まあ、細々した単位や1ヵ月の日数等も地球と同じらしいので助かるけど・・・。


ちなみに、重さの単位は、1グリーグ=1g 1キリグリーグ=1000グリーグと言う単位で1グリーグは1gと書き表し、1キリグリーグは1kgと書き表す。これまでの流れの通り、恐らくは地球と同じ重さの基準なんだと思う。


あと、魔動具の懐中時計が存在するらしい。とても高価な物らしいけど・・・是非とも欲しいね。

え?時計なんかあったら、時間に追われる生活に逆戻りって? うむ、それはそうなんだけど、やっぱり、日本人としては約束の時間とか気になるでしょう?


今度、魔動具店覗いて見ようっと・・・。

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