第22話 楽しい新居とご飯
アリーシアさんと一緒に石鹸やタオル等を多めに購入し、更に銅の鍋やヤカン、そして鉄のフライパン、銅製の寸胴等、それにお皿やコップ、包丁やナイフに欲しかった普通に良い小剣等も購入した。
そうそう、食用油 オリーブオイルの様な食用油とごま油、それとフルーティーな香りの良い食用油も発見したので市場で購入しておいた。
酒屋で、穀物酒を探した結果、マイマイベースではないが一応麦を使って発酵させたお酒を発見し、一応購入しておいた。
「なあ、この麦の酒だけどさ、同じ方法でマイマイの酒って造って貰えないかな?」って真剣に聞いてみたが、酒屋のオヤジから、鼻で笑われちゃったよ・・・。酷いよね。
つまり、それ程にマイマイはバカにされて居る穀物なのだ。非常にムカつくよね?
こうなったら、是が非でも自力で酒を造ってやるよ!! と密かに心に誓う俺。 その時になってひれ伏したって知らんし!!
味見した限りだけど、麦のお酒って、何か微妙と言うか、麦焼酎とも違って、全然料理に使えそうに無い。
まあ、お試しで日本酒作りのオーダーする為の切っ掛け作りの為に無理矢理買ったのだからしょうがない。
寧ろ、期待せずに買った他のお酒の方がブランデーぽくってステーキとかには使えそうだよ。
後は、ワインの小樽を何個か買った。 ワイソースやシチューとかに使うかなってね。
買い物を済ませて新居に戻ると、ラルゴさんやベッド等を運搬しにきてくれた人々が待っていて、直ぐに屋敷内に案内してお待たせした事を陳謝しておいた。
「なるほど、ここですか、存じてました。ここはなかなかに良い家ですよ。おめでとうござうます。」と笑顔のラルゴさんにお祝いを言われて少々むず痒かった。
漸く、ベッドも寝具もカーテンも揃い、新居で暮らせる状態となった。
豪華な家だが、壁にある、魔動具にCランクの魔石を5個程セットして置けば、防犯のセキュリティが機能し、更に内部をある程度綺麗な状態を保ってくれるらしい。
で、今夜の記念すべき初夕食は俺が作る事にして、今朝シコシコと棒で突いて籾殻を脱穀した白米を石鍋で炊いて、キャベツに似た野菜の千切りにオークの生姜焼き、そして、食えると言う卵とビネガーで作ってみたマヨネーズ(試作品1号)をつかった、簡単な料理にしてみた。
もういしなべから、ご飯の炊ける良い匂いがし始めており、この世界の芋と玉葱を使った味噌汁(残念ながら出汁は取ってないけど)を作ってみた。
炊き上がった石鍋のコンロを消して、蒸らしを済ませ、俺の手製のシャモジで炊き上がったホカホカご飯を混ぜて蒸気を飛ばし、お味噌汁のお椀とオークの生姜焼きとキャベツの千切りにマヨネーズを掛けたおかずお皿を各自の椅子の前に並べて行く食堂のテーブルに並べ、頂きます。をして、アリーシアさんには俺の手製の4本爪のフォークにスプーン、俺はお箸を使って食べ始める。
ああ、俺の夢にまで見た食卓である。
白米も、オークの生姜焼きも全て俺の想像した通りの味に仕上がっている。
米粒の形状をみる限り、日本で食べて居たお米と同じ様なプックリした形状で、東南アジアにある様な細長くなかったから、滅茶滅茶期待していたんだけど、その俺の期待に見事に応えてくれたよ!
てか、期待以上だよ。
何だろう?このお米滅茶滅茶美味いんだけど! お米自体の持つ甘味と旨味?日本のお米より美味しく感じるのは2年間の焦らし期間によるお仕置き補正ではないと思う。
うん、この白米で卵掛けご飯も食べたくなるね。一気に全部は勿体無いから、TKGは明日だな。
「美味しい!これだよ!これ! 良いね! はぁ~、2年振りにやっと生き返った気がするよ。」と満面笑みでご飯を掻き込んで食べる俺を見て、恐る恐る、白米の
「ああ、アリーシアさん、あのね、このお肉在るでしょ、それを少し、先に口にいれて、その後追加でこのご飯を一口分入れてご覧。きっと美味しいから。」と俺の言う通りの食べ方に嵌まって行くアリーシアさん。
「ああ、本当に美味しいです!!ラルゴさんのお屋敷の食事よりも何倍も! ビックリです。このスープも今まで食べた事無い味ですが、優しいホッとする味ですね。トージ様が微妙な反応だった訳が理解出来ました!
このお食事って、あのエルフのエルダさんから買ったソイでしたっけ?あれを使っているんですか?」と興味津々のアリーシアさん。
もう、お上品に食べるのももどかしいとばかりに美味しそうに、幸せそうに微笑んで食べて居る。
「このキャベチに掛けてあるやや黄色いとろっとした物、とてもコクがあって美味しいです! 他の物にも合いそうです。」と俺の作った食事をどれもこれも褒めてくれた。
「でも・・・私こんな美味しいお食事作れないです。役立たずです・・・。」と急激にトーンを落としてしまうアリーシアさん。
「ああ、後で話すけど、アリーシアさんにもこれらの料理を色々覚えて貰うつもりだし、そんな役立たずなんかじゃないから。」と俺が言うと両手に拳を作り、頑張りますと顔のまえでギュッとポーズを取って居た。
「まあ相談なんだけどさ、この料理のレシピって売れそうじゃ無い?」とアリーシアさんに率直な意見求めたところ、「お世辞とか抜きで間違い無いです!」と自信を持って肯定してくれた。
商人ギルドには、飲食店や王侯貴族の屋敷の厨房に対して新しい料理のレシピを登録して売る事が出来るのだ。今回の場合、まずは白米を炊くと言う調理 これが1つ。 オークの生姜焼きが1つ。マヨネーズで1つである。
味噌汁は出汁がキチンと取れてないので微妙だが、エルフの方の登録状況次第だが、味噌汁として売れない事もない。だが、この場合具の内容は可変として味噌汁と言うジャンルにすべきか?
どっちにしても、これは要相談案件だろう。
アリーシアさんにはデザートとして昨日食べられなかったアプモグの実を出してやると、嬉しそうにガブリと齧り付いていた。
「トージ様、私は本当にここに居て宜しいのでしょうか?」とアプモグの実を食べ終わって、幸せそうだったのに、急激に顔を曇らせるアリーシアさんが不安そうに聞いて来る。
「え?こんな広い家に俺一人もキツイし。もし一緒に居て厭じゃなければ・・・居て欲しいけど。ああ、そうだ。前に俺の森の拠点の話したよね。
ちょっと行ってみるかい?」とアリーシアさんに尋ねてみた。
「え?『魔の森』ですか? い、今から? あ、あの移動方法で?」と察したアリーシアさんが頷いた。
俺は今朝の鍛錬ぶりだが、初めて他人を連れて小屋に『ゲート』を繋げ、アリーシアさんの手を取ってゲートの向こうへと渡ったのだった。
よるの帳が降りて、周囲は鬱蒼と下木々に包まれた『魔の森』だが、目の前に聳える伝説の『エグドラの木』が異彩を放つ。
「こ、これがあの実の『エグドラの木』!?」と木を見上げて絶句するアリーシアさん。
「どう?ここが俺が独りで住んでいた、森の拠点。そして、あれが、俺の小屋。」と俺が指差す方を見たアリーシアさんが「ここで、暮らしてたのですか。寂しく無かったんですか?」と聞いて来た。
「まあ寂しいと言えば寂しかったけど、ここに来る前に両親を事件で理不尽に亡くしてそれ以来何年も独りだったから、ここで独りもそれまでの流れと同じと言えば同じだったから、それ程違和感は感じなかったね。
寂しかった訳じゃないけど、無い物はしょうがないし。それよりも『無い物』って点では、ここで一番ヤバかったのは飲料水も無くて食べ物もこの木の実ぐらいしか無くてさ、そっちが一番キツかったね。」と俺が遠い目をしながら切々と説明すると、「本当に良く生き残りましたね?」と俺を褒めてくれているらしく、つま先だって背伸びして俺の頭をを優しく撫でてくれたのだった。
両親が亡くなる前から数えて、10年ぐらいかな? 久々に頭を撫でられて、思わず込み上げて来る物を必死で飲み込んだのであった。
だから、今日の夕ご飯みたいな物を食べたくて必死で材料となる『マイマイ』や『ソイ』とかを探していたんだよ。食欲と睡眠と入浴のこれが唯一俺にに残った『欲』だったから。
「ああ、そうだ、おれの小屋の中見て見るかい? 俺の力作のお風呂もあるよ。」と言って小屋の中に入って魔法でライトを点けて内部を見せてあげた。
「ははは、この酷いベッド見てよ!!これでも改造に次ぐ改造でかなり寝心地改善したんだけどさ、ラルゴさんのお屋敷のベッドで撃沈だよ。」と俺が自虐気味に言うと俺のベッドに寝転んだアリーシアさんが、「あっ!、本当に雲泥の差だ!」と背中を痛そうにズラしながら言葉を詰まらせていた・・・。
「だろ!?でもお風呂だけは割と自慢だよ。見て!見て!」と、浴室の扉を開いて見せると、ツルツルの大理石の様な湯船と床に「まあ、これは確かに凄い浴室ですね。」とアリーシアさんも絶賛してくれた。
「と言うか、ここまで何も無い所で自作して来たトージ様って凄いですよ! 尊敬します。」と何時もより多めに褒めてくれた。
「だからさ、話逸れたけど・・・こんな所で独りで暮らしてた俺にあんな広い家、独りで住めとか勘弁して欲しいんだよ。今更独りはキツイかな。気を張らなくても良い誰か・・・いやアリーシアさんと一緒に過ごす楽しさを知っちゃったから。 だから一緒に居るのが厭になるまではあの家に居てくれれば・・・嬉しいかな。」と言いたかった事を言うと。
「しょうがないですねぇ~。じゃあ特別ですからね!その代わり、条件が在ります!私にトージ様の料理を教えて下さい。そして私の分のお箸を作って下さい!」と言ってあの家に居てくれる事に決まったのだった。
後で振り返って考えると、『口説いている』と勘違いされてもおかしくない言い回しだったかも知れないなと少し反省したのだが、ヤラカシてしまった時特有の気拙い空気は無かったのでセーフだと思いたい。
まあ、その後、直ぐに新居に戻って、お互い疲れた事もあって、直ぐに各々の部屋に籠もって、俺は俺で魔力枯渇のノルマを果たしつつ朝まで爆睡してしまうのだった・・・。
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