第21話 内見ツアー

翌朝、どうやら昨夜我慢しきれずに食べたと言うラルゴさんから、絶賛と怖いぐらいのお礼の言葉を頂いた。


ふふふ、そうだろうそうだろう。あれはそこそこ美味しいのだよ。



前日と同じ様なメニューの朝食を頂き、ラルゴさんにナイフや包丁、そして小剣等が買える店を聞き、更に、早ければ、本日か2,3日中に拠点となる家を決めるので、改築が必要になったら、相談させて欲しいとお願いしておいたのだった。



本日は朝から、商業ギルドの方に向かって、冒険者ギルドと違い軋まないドアを開けて、受け付けカウンターに居たルミーナさんに「おはようございます。早速家を紹介して貰いに来ました。早く拠点無いと不便なので。 ああ、そうだった!どうせ家も買うことだし、お手数ですがこちらのお金ををカードの口座に入金して置いていただけますでしょうか?」と言って、リュックを床に置いて、蓋を開けて、中から金貨の袋を1つ置き、更に続けてもう1つもカウンターの上に置くと、流石に重かったのかミシッと厭な音がしたので、慌てて、床に降ろしたのだった。


「ごめんなさい、ちょっと重かったか・・・何処に置けば良いですか?」と聞くと、昨日に引き続き、青い顔をして、少々お待ちをと奥に行ってギルドマスターのロバートさんを呼びに行ったのだった。


結局、一旦、先日の奥の部屋家の間取り図を見せて貰っている横で革袋の金貨をカウントする事になったのだった。


一応、3軒程、候補を絞ってみました。が、他にももっと広い所等もありますし、店舗が付いている物も在りますので。」と丁寧に教えてくれた。


1軒目の間取り図は、かなり、ここからも近いが、市場にも近い。見た感じ、おそらく日本の単位なら、敷地面積で120坪ぐらいで、バトミントンが出来るぐらいの庭も付いて居る。

俺の実家の敷地面積がザックリ40坪ぐらいだったので、ザックリ約4倍の敷地面積である。ああ、メッチャ広いな・・・。


部屋数は従業員部屋まで入れて8部屋で、大広間に食堂と勿論結構広めのキッチンがあって、応接室があり、2階建てで地下室も付き。勿論条件であった広い風呂が付いていて、トイレは1階と2階に2つずつ付いている。悪く無いと思う。

元は商人が持っていた家らしい。

値段が2千万ギリーと日本の都内に比べたら超激安価格である。


まさか、事故物件やイワク有りの訳あり物件じゃないよな?って思わず疑ってしまう程の物件だ。


まあ、もし、幽霊出ます物件だったとしても、魔法のあるこの世界なら、浄化出来るから大丈夫!


実際必要になった事が無いので試した事が無いけど、俺にも『浄化』出来る筈なのだ・・・。



次に広げた物件の間取り図更はさっきよりかなり狭く、3部屋にリビングダイニングがあって、キッチンはあるが、微妙に狭い。風呂はあるが、間取り図の寸法通りならビジネスホテルのユニットバスの1.5倍程度くらいかな?さっきの物件の間取り図見ちゃった後だと足の伸ばせない湯船ってだけでテンション駄々下がりだ。


値段は交通の便の悪い場所にあるワンルームマンションって感じの値段設定だ。一応1千万ギリーを割っている。 元冒険者が住んでいた所だったらしい。 しかし場所が全然良くない。商人ギルドからも冒険者ギルドからもかなり遠く治安も微妙な場所らしい。

うん、却下だ!


結局一番最初に見せて貰った間取り図がルミーナさんの一推しだった様で、若干広過ぎる気もするが、これより狭い所となると、逆に場所が悪かったり、治安が怪しかったり、風呂無しとか駄目な部分が多かった。



「よし、じゃあ、最初の間取り図、ルミーナさんの一推し物件の内見お願いします。気に入ったら直ぐに住めたりするの?どんな風呂か楽しみだな。」とアリーシアさんに語り掛けると、本当に嬉しそうに頷いて居る。



ちなみに、内見する物件が決まったのでお金のカウントしてくれて居るロバートさんに宜しくお願いしながら、席を立ち、ルミーナさんを先頭に商業ギルドを出発するのであった。


「本当にここから近いのですよ。」と言いながら、『住める事なら私が住みたかった夢の物件でした・・・。』と小声でボソッと小声で呟いていた。


いやいや・・・、そんな事小声で呟くんじゃねぇ~よ!!!住み難いじゃねぇ~かよ! まあ俺のこの身体だからこそ聞き取れた程度の音量だったけどさ。

昨日言った市場が見えて来て、そのまま市場方面に曲がらず真っ直ぐ行くと、大か塀のある豪邸が見えてきた。

「ほら、見えて来ました、ここですよ。どうです? 商業ギルドで定期的に管理メンテナンスしていたので、綺麗な状態を保っているでしょう?」と自慢気にルミーナさんがジャジャーンと言うかんじにてを広げて見せている。


「ええ、本当に綺麗ですね。何年も空き家だったとは思えない程に。」と相槌を打ちつつ門を潜って庭に入ると、流石に庭には多少雑草が生えていたが、殆ど誤差程度で、植木の剪定もされていて、本当にキチンと管理されていたのがわかった。


屋敷の玄関の鍵を開けて中にはいると、備え付けの家具が何点残っており、応接室のソファー等の残って居る家具類ははそのまま使って良いとの事で、埃避けの白いシーツを取ると、綺麗なソファーが姿を現せたのだった。

「おお、ラルゴさんのお宅のソファーと比べて遜色ないじゃん。良いね。」と俺が言うと、アリーシアさんも同意して居た。


気になるキッチンは、この世界の標準が判らないが、魔動具コンロや水道の魔動具も完備しており、Cランクの魔石さえセットすれば備え付けの冷蔵庫~魔導コンロまで全部そのまま使えるらしい、


素晴らしい!風呂も広くて、魔動具の蛇口付きでお湯もお水も使いたい放題。2階の寝室書斎付きの主人部屋が1つに書斎はないけど、女性向きの寝室が2部屋あって、残りはゲストルームに、メイドやスタッフ用の部屋が2階に4部屋に屋根裏部屋もあった。


まあ従業員部屋は使う予定は無いけど一応使えそうなベッドが付いて居て、俺とアリーシアさんの部屋にベッドを運び込めば今日からでも住めそうではあった。


トイレは1階も2階も同じだが、従業員用トイレは別にあったので、扱いに格差がある様だ。ただ、便器等の魔動具は共通で、お洒落度合いや鏡等の洗面所の広さ等の細かい相違があった。

地下室は何も無かったが、酒蔵や食料庫もあって、何かと重宝しそうであった。


更に屋敷の裏手には馬房と言うか竜車?があって、竜車を保管する大きめの倉庫も付いていた。


「なかなか至れり尽くせりで良いじゃん。どう?俺は気に入ったけど、アリーシアさんは?」と俺が聞くと、嬉し気な笑顔で「はい!」と頷いていた。


「ルミーナさん、素晴らしい物件をありがとう。こちらを購入させて頂きます。支払いもだけ度、カーテンとかって、一緒に頼んだら、早急に付けて貰えたりする?」と聞くと、


「ええ、お任せ下さい。本日中にご用意してお引き渡し出来ます。」と引き受けてくれた。Cランクの魔石は売る程あるから、要らないし、後はラルゴさんにお願いしているベッドと寝具があれば大丈夫かな?とアリーシアさんの方をみたら、「あとは石鹸やタオル類を多めに用意するぐらいでしょうか?」と言っていた。


「そうだね。じゃあ、ラルゴさんへの報告とベッドと寝具の購入を急ぐとしよう。」と言って、サクっと商業ギルドに戻って購入の手続きをしたのだが、ここでもアリーシアさんの交渉のお陰で追加で頼んだカーテン代金は値引きの内となり、この日俺は若くして今回の人生2度目の家持ちになったのだった。


一旦ラルゴさんの屋敷に戻って、家を購入した事を伝えると、お祝いを言われて、ベッドルームの数分のベッドと寝具を運び込んでくれると言う事になった。


今回のベッドや寝具、そして今着ている服やブーツ類等諸々の精算をお願いしたが、昨夜のアプモグの実とエグドラの実だけで十分過ぎる位だし、マッド・ディアーの革2匹分の精算も終わって無いぐらいなので、これ以上借りを増やさせないで下さい。と懇願されて、引越祝いとしてありがたく受け取る事にしたのだった。


ラルゴさんのお屋敷のスタッフの皆さんにここ数日のお礼を言って、ラルゴさんにはまた色々相談させてくれとお願いをして、漸くお暇をしたのだった。

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