第17話 世間常識知らずな英雄?の報酬

「大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。無事に冒険者登録出来ました。」と言いながら、冒険者ギルドのカードを見せると、通常Fランクスタートの筈がEランクのカードを持って居る事を見てニッコリと微笑むラルゴさん。


「流石ですな。まあ、トージ様ならAランクスタートでも低すぎる様に感じますけど。」とさも当然とばかりにウンウンと頷いている。


「まあ、ルールで決まってるのは無茶な依頼を受けてしまって命落とさない様にって配慮だから仕方ないですよね。まあ徐々に行きますので大丈夫です。一応魔石も換金出来ましたし。ホクホクですよ。」と俺も釣られて微笑む。


「では次は衛兵の詰め所で宜しいですね?」と聞かれて、「ええ、宜しくお願い致します。」と頷くと、ラルゴさんが御者に合図して竜車が走り出した。


「と言っても、冒険者ギルドと衛兵の詰め所は非常に近いのですがね。ほら、見えて来ましたよ。」とラルゴさんが指差す方に目を向けると、それらしい大きな建物が見えて来た。

「ホントだ近い。衛兵の詰め所って、街の中に何箇所あるんですか?」と日本の交番のイメージで尋ねると、ここが本部で、他は各門の所の4箇所ですね。」意外に少なかった。


「なる程、以外に少ないのですね。と言う事は巡回して維持する感じですね? まあ衛兵の数の問題もあるから仕方ないのか。巡回パトロールって事は米国式だな・・・。」と納得する俺。


「あ、なる程!!だから冒険者ギルドに近いのか!!」と俺が一人でポンと手を叩いて腑に落ちた様に頷くとアリーシアさんが「どういう事です?」と聞いて来た。


「ああ、すみません、一人で納得しちゃって。多分、衛兵って街の規模からしてそれ程多くは雇えないのではないか?と。だから、魔物の襲撃や有事の際は冒険者ギルドに招集を掛けて冒険者も戦力にカウントしてるんじゃないかと。建物が近ければ、連携し易いし。どう言う有事かにもよるけど。それで衛兵の人件費はある程度抑える事が出来ますからね。」と勝手な想像で語ると、どうやら正解だったらしく、ラルゴさんが、そうです、良く判りましたね。」と驚いていた。


「しかし、そう考えると、不敬になるけど、貴族、ここみたいに微妙に栄えてる辺境の領主様って気苦労だけでメリット無いですね。 俺なんて、森で独りぼっちで寂しいけど何の席にも義務も無く、毎日鍛錬と工作や食事のメニューぐらいしかな山区手良いし。動いて飯食って満腹になったら、ユッタリ風呂に入って、ノンビリ夜空眺めながらハーブティー飲んで星を眺めて明日の予定を考えて就寝ですもん。日々凄く穏やかです。」と俺が言うと、


「そうそこですよ!『魔の森』と呼ばれる魔境ですから、そんなマッタリ微睡む様な余裕がそもそも変ですし、そんな所で風呂ってのも本当に驚きです。」とラルゴさん。


「いやぁ~、でも風呂を作るまでの生活って本当に悲惨でしたよ。日々果物しか食べ物無くて、毎日毎食エグドラの実しか食べ物無かった時はどうしようかと・・・かなり経ってから、アプモグの実も見つけて2種類の実を食べ回ししてました。そりゃ両方共に相当に上手いですけどそれしか旅物が無いのとデザート代わりに楽しみで食べるのとは気持ちも違いますからね。ハハハ。」と俺が遠い目をしながら2年前の苦難の時代を振り返っていると、竜車の中に妙な空気が流れる。


あれれ?


何か知らんが、ラルゴさんがプリプリと怒りながら、「全く、トージ様は・・・なんて、非常識な・・・これだからもう、あなたって人は・・・。」とヤレヤレと言う風に残念な人呼ばわりされてる気がするが?何故に?


そんな、ラルゴさんに同調する様にアリーシアさんも呆れ気味にウンウンと頷いている。

何、このコンビネーションプレーは?


なんか、スッゲーアウェイ感満載で悲しくなって来るんだが?


俺が説明を要求すると、

まず、第一に、エグドラの木は伝説上の木で、その実に関してはお伽噺の中に出て来る物で1つ食べる度に寿命が延びると言う伝説があるとかないとか・・・。 いや、知らんがな。


『女神の英知』によると、食べても人体に無害っで栄養豊富って事ぐらいだったよ?


えー?俺、ほぼ毎日食ってましたし、今でも皮を乾燥させた物をお茶にして飲んでますが、何か? と。


更にアプモグの実には、魔力を増やす効果や魔力の回復を早める効果があるとか。 これもダンジョン等で希に採取されるが年間に数個レベルだそうで。


そう言われても、『女神の英知』にはそんな感じの記載は無かったし、知らんって!


ふーん。って言うか、それでか!? 言われてみれば、アプモグの実を食べた後って、確かに魔力の回復が早かった様にも思う。 まあ、後半はMP増えたからもう誤差だよ、誤差。

最近じゃあ、毎回枯渇まで持って行くのが大変になる程には魔力増えたし。


「えーっと、両方共後で食べてみます?幾つかお裾分けしますよ。と雰囲気に押される様に提案してみると、面白いぐらいに頷いていた。まるでヘビメタのライブ会場の様だった。行った事ないけどな。


取りあえず、屋敷に戻ってからと言う事で、到着した衛兵の詰め所へと全員でゾロゾロと入って行くと、衛兵の一人がラルゴさんを見て、

「あ、ラルゴ様、どうもいらっしゃいませ。本日はどの様な御用で?」と聞いて来る衛兵のお兄さん。


「ああどうも、いつもお世話になって居ります。本日は私では無く、こちらのトージ様が捕まえた盗賊20名の件で賞金等を受け取りに参りました。」と言うと、ハッとして、「隊長を呼んで参ります。少々お待ち下さい。」と言い残して小走りに走って行った。


「あ、お待たせ致した。ラルゴ殿、ようこそ。そちらが、今回の英雄のトージ殿かな?」と白髪の交じった栗毛の胸板の厚い屈強な騎士と言う面持ちのオジサンが笑顔でやって来た。


「ああ、初めまして、トージです。一応、今日冒険者ギルドにも登録致しましたので、こちらの街でもお目に掛かる事も在るかと。

何せ、田舎から出て来た為、何も知らないので、宜しくお願い致します。」と言って頭を下げると、「ほう、儂はこのマッシモの街の衛兵隊の隊長をして居る、ランドルフと言う。こちらこそ、宜しく頼む。腕の言い冒険者は幾ら多くても余る事は無い。頼もしいな。」と大きなてを差し伸べて悪手を求めて来た。

俺も手を出して握手に応じると、いきなり、力を込めて来て、ギューッとキツく握ってくる。ヤレヤレ、と思いながら、俺も身体強化を使う事無く、素の力でその握手に対抗し、相手よりもやや上の力に握り返しニヤリと微笑むと、

「ハッハッハッハ、申し訳無い、降参だ。トージ君、君強いね。」と豪快に笑って手を離して万歳するランドルフ隊長。

「ハハハ、ランドルフ隊長もお人が悪い。そこそこ日々鍛えてましたので。」と言ってニヤッと笑って見せると穏やかな空気に変わって、隊長が手てを上げて合図すると衛兵の1人が奥から、詳細が書かれた紙を持って来て、

「確認してくれ、賞金首がそこそこおってな、結構良い金額になったぞ。と言いながら、項目を指差して説明してくれた。賞金首の大物が2名に18名の報奨金と犯罪奴隷にした金額のトータルで3百万360ギリー( 3,000,360ギリー)である。

うーん、貰い過ぎの様だが、どうしようか? 取りあえず受け取って後で配分しよう。と思って冒険者ギルドのカードに振り込んで貰う事にした。


「ラルゴさん、これ、マッシモの夜明けに大金貨1枚(百万ギリー)、ラルゴさんに大金貨1枚(百万ギリー)残り俺で分ける感じで了承して貰えますか?」と言うと、借りの方が大過ぎてとてもじゃないが受け取れないと言うラルゴさん。

「うーん、じゃあ、お言葉に甘えてマッシモの夜明けに大金貨1枚(百万ギリー)だけは渡して、残りは俺が貰います。彼らも、命張ってって戦ってましたから、権利はありますし。」と言って、俺が折れる形を取ったのだった。


後は、神殿だけか。


「ラルゴさん、ここから神殿って近いのですか?」と聞くと、ラルゴさんの話だと徒歩で10分ぐらいと言う。散歩がてらに丁度良い距離だ。


ここまでのラルゴさんの屋敷からここまでの道程は取りあえず完璧に記憶しているので、一人でも帰る事が出来るし・・・。


「ラルゴさん、折角の街なので、歩いて神殿に行って帰り道に少し散策して戻りたいのですが宜しいでしょうか? 折角本日色々ご案内して頂いたのに申し訳無いのですが。」と言ってみたら、


「ああ、構いませんよ。折角なので色々見て廻ると宜しいかと。」と俺の我が儘に同意してくれた。


勿論、アリーシアさんも一緒である。良いよね?と言う感じで目で聞くと、軽く頷いてくてたので、竜車に乗らずに御者のオッチャンに神殿までの道を聞いて、お礼を言って手を振って去って行くのを見送った。



「ふぅ~、何年も1人で暮らして来たから、慣れて無くて・・・、歩かせる事になったけど、ゴメンね。」と俺が言うと、「ああなる程、判ります。気疲れって奴ですね。私は居ても大丈夫ですか?」と心配そうに聞いてくるので、「フフフ、大丈夫だよ。もしキツかったら素直に言うから、変に気にしなくて良いよ。お互いに変に気を遣うのは止める様にしようよ。


どうせ、俺とアリーシアさんしか居ないんだから。息が詰まらない様に気楽に。」と返した。

ああ、そうだ、アリーシアさん歩きながら、雑貨屋とかで、アリーシアさん用のバッグ可か入れ物を買おう。お金。の袋そのまま持ち歩くと危ないから。この中に分けて入れてあるから。と言いながら、リュックをポンポンと叩いて見せた。


本当は市場とかにも行きたいんだよね。調味料や、植物の種とかも欲しかったからね。それは明日以降かな~。先に拠点決めて、それからの方が良いか。と言いながら街の商店等をチラチラ眺めながら進んで居ると、雑貨屋を発見し、「あ、雑貨屋じゃない?」とアリーシアさんに教えて一緒に店に入って行くと、店の中は、女性の客が多く非常に場違いな感じがして思わず頬が熱くなってしまう俺。


俺は俺で、それとなく店にある科をチェックして、幾つか背負い鞄や巾着袋の様な物、ウエストポーチの様な物を幾つかチョイスし、店員のおお姉さんに購入品として渡して行く。何でこんなにと思うだろうが、ちょっと思うところがあってね。

アリーシアさんも自分用のちょっと洒落た感じの背負いバッグをチョイスし、手鏡や櫛、手ぬぐいや、細々した物を纏めて決まったらしい。

「お姉さん、彼女の物も一緒に精算してくれる?」と俺が言うと、一斉に店内の女性陣がこっちの方を注目して来た。

「ああ、『こちらの彼女』の分だけね。」と再度強調すると、あから様に店の中の温度が下がって、「チッ!」っと舌打ちが聞こえた・・・。怖っ!何それ?


と思わずこの世界に来て始めて言い知れぬ恐怖を感じたのであった。店のお姉さんはしょうがないなぁ~って感じで苦笑いしつつ、多少値引きしてくれた様だった。俺は自分の購入分をほぼリュックに入れる風に見せつつ『時空間庫』に入れた。そしてアリーシアさん用に分けておいたお金の袋をアリーシアさんにソッと渡して、背負い鞄に入れて貰ったのだった。


昨日から気になっていたアリーシアさんの取り分の当座のお小遣いも渡せて少し、気が楽になった・・・。

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