第16話 冒険者ギルド登録
お世辞にも綺麗で立派とは言い難いただ頑丈そうな土色の建物、それが冒険者ギルドの建物である。よくある西部劇の酒場の建物の無骨な土壁版と思って頂ければ、間違いない。
剣と盾のマークの看板これがこの世界の冒険者ギルドのマークである。
ふふふ、俺もついに異世界物定番の冒険者ギルドの洗礼を受ける時が来たのか! と竜車を降りてワクワク感に武者震いする。
ギィーと軋む蝶番の音がしてドアを開けると、モワッと汗と埃と皮鎧独特匂いが入り交じった空気が漏れてくる。
先程まで居た商業ギルドと似た様な受付カウンターがあり、綺麗どころの受付嬢が4人程並んでおり、その何れにも冒険者が並んでいる。
凄いな。4人が4人共に日本のトップアイドルに引けを取らない程の粒揃いだ。
尤もアリーシアさんがここに混じっても十分にセンターを張れるけど・・・。
なんて頭の中で考えて、いつの間にか身内の身贔屓じゃないけど、その一員としてアリーシアさんをカウントしてしまっている事に気付き、フッと笑いが漏れそうになる。
俺はラルゴさんとアリーシアさんを竜車でお待たせしているのでサクっと進みそうな列をチェックしていると、一箇所だけ誰も並んで居ない所を発見し、そのカウンターの向こう側に居るのが坊主頭のオッサンなのを見て納得したが、他の受付嬢の列は無駄話でウダウダしてて全く前に進まない。
まあしゃーないか。まずは登録を優先しとこう。と目的優先でオッサンの所まで行って、カウンター越しにオッサンに話し掛ける。
「あーっとすまないが、新規登録はここでも良いかな? 向こう側は全く進んでないみたいだから。」と綺麗どころの受付嬢の列を目線で示す。
「おう、いらっしゃい、珍しいな、俺の所に来るなんざ。新規登録か、良いぞ。この紙に記入してくれ。」と申込み用紙を俺に渡して来た。
紙には氏名、年齢、出身地、住所、特技(戦力)の項目があり商業ギルドに提出したのと同じ様に記入して行き、オッサンに質問した。
「なあ、すまないが、この特技(戦力)って何を書けば良い? 例えば魔法や剣術とかの戦闘スタイルか?」と聞いてみると、
「ガハハ、まあそうだな。もし魔法だ使えるなら、「火種」でも「光」でも書いておけば売りになるが、まあ、そんな奴はほぼ居ないからな。嘘はバレると処罰の対象になっから気付けろ!」と教えてくれた。
え?魔法使いが居ない? すまない、俺遠方から出て来たばっかだから良く知らねえんだが、ここでは魔法使える奴って少ないのか?」と聞いてみると、何言ってるんだ?と不思議そうな顔をして、
「そら、余所じゃ知らんが、この街でも魔法が使えるのはほんの一握りだろ。」と教えてくれた。 マジか!?本当に文明とか色々進んでないんだな。と改めて実感する俺。
確かにマッシモの夜明けのみんなは、ケネスさん以外は弱かった。 見た感じ、誰も『身体強化』も『外装甲』も纏っていなかったのだ。
俺が、貰った用紙に書き込み、特技の欄に、剣術と魔法と記載して渡すと、
「おいっ!お前!正気か?」と住所欄を指差して叫んでいる。
「いや、オッサンこそ、人の情報を叫ぼうとするなよ、冒険者の今人情報は無闇に開示しないのがお約束じゃないのかよ?」と俺が先手を打って、手の平でオッサンの口を封じる。
やっておいて言うのもなんだが、手の平にオッサンの唇を感じゾワっと身震いして手の平を離し、素早く手の平に『ウォッシュ』を掛けた。
「うむ、すまんかった。 でも、これは正気なのか?」と今度は声のトーンを下げて聞いて来たので。「ああ、家を建てて、ここ数年住んで居るぞ。先日買い出しに森から出て来て、丁度『マッシモの夜明け』のケネスさん達に出会ってな。この街にやって来たんだよ。外にラルゴさん達を待たせてるから、少し急いで貰えると助かるし。森から持って来た魔石とかも買い取ってくれると嬉しいんだが。」と答え冒険者カードの登録を急ぐ様にお願い下のだった。
それからの動きは非常に早く、カウンターの上に置かれた木箱にリュックから出した革袋の口を開けて、バラバラとトークのCランク魔石を袋から出して居ると、何か視線を感じてフッと周りを見たら、受付嬢もだが、受付嬢を必死に口説いていた冒険者達もギョッとした表情でポカンと口を開けて固まっていた。
「今日は取りあえず、一袋で良いか・・・。」と呟いて、オッサンに処理を急いで貰う。オッサンは、後ろの席に居た女性に魔石が溢れそうな木箱を渡して急いでカウントする様に指示をしていた。
俺はその間にオッサンから、ランクや昇級についてや依頼の受け方やペナルティについて、そして、冒険者同士のトラブルや獲物の横取り等に関する注意事項の説明があった。
内容的にはよくある異世界物の定番とほぼ同じで、まず、ランクは最高のS、A,B,C,D、E,Fの7段階に分かれると言う事で、誰しもFランクスタートなるが、魔法を使える者に関しては例外らしく魔法を発動して見せる事で特例でEランクスタートらしい。依頼は1つ上のランクまで請ける事が出来る。
年に1回は依頼を請ける義務があり、Cランク以上だと、指名依頼が来たりするし、緊急依頼の義務が発生するとの事だった。
昇級は19個依頼達成する事で昇級が可能となる。更にC、B、A、Sランクに上がるにはそれぞれ昇級試験があるらしい。
「って事で、何か魔法を見せくれ。」とオッサンがむさ苦しい顔を寄せて迫って来る。
「まあ良いが、ここでやるなら、この建物を吹き飛ばさない様に安全な『ライト』ぐらいで良いか?」と俺が小声で確認すると良く意味側から無かったのか、「ああ、適当に頼む。」と言うので人差し指を立てて『ライト』と呟きをフワッと指先に光らせた。
「・・・!!! おおーーーー!魔法だ!魔法だぞ!?」一瞬の静寂の後沸き起こる歓声。
「ああ、すげーな。OKだ。おめでとうEランクスタートだ。トージだったか? お前か、盗賊20名やっつけたって奴は。」と言うオッサン。
「ああ、そうだな。丁度タイミングが良かったよ。」と答えると、「そうか、ケネス達我が町の名士であるラルゴさんを助けてくれてありがとうな!」と笑顔でお礼を言われたので在った。
そんなやり取りが終わった所で俺の冒険者Eランクのギルドカードが出来上がり、カードに魔石113個分の売り上げ5百56万5千ギリー(5,565,000ギリー)が振り込まれたのであった。
あれ?これって冒険ギルドカードと商業ギルドカードと2つに分けて入金して置く意味ってあるのか?と一瞬考えたのだが、もし何かでどっちかのカードを紛失した際のバックアップ用と考える事にして言及するのを思い止まった。
何にしてもよくある登録試験や面倒ないざこざや『さあ、俺と戦え!』的な鬱陶しいイベが無かったのはありがたい・・・。
「いやぁ~、長年ギルドの職員やってっけど、初日でこんなに支払ったのは始めてだな。 また宜しく頼むぜ。」とウインクしてきたのだった。
「ああ、しかし、オッサンのウインクは誰も得をしないので勘弁な!『マッシモの夜明け』のみんなに宜しく言って置いてくれ!」と言って、冒険者ギルドを後にしたのだった。
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