第15話 商業ギルド登録
俺の無駄話のお陰?で時間を感じさせずに商業ギルドに到着し、竜車を降りて、その白く大きな4階建ての建物を見上げて「おおーー!」とビルディングっぽい建物に感嘆の声を上げる。
「ほほほ、この街の商業ギルドの建物もなかなかの物でしょう?」とちょっと自慢気なラルゴさん。
「ええ、ラルゴさんのお屋敷も凄いですが、ここはこれでなかなかに近代的な建物ですね。素晴らしい。」と応えると、頷いてから、商業ギルドの扉を開けて俺達を中へと導いたのであった。
「いらっしゃいませラルゴ様、先日お知らせ頂いた件で宜しいでしょうか?」と挨拶しながら俺とアリ-シアさんの方にチラリ目をやって、
ラルゴさんはカウンターに居る受付嬢に笑顔で会釈しつつ頷いている。
「お連れの方達もいらっしゃいませ、ラルゴ様より伺って居ります。別室にて承りますのでこちらの方へどうぞ。」と先頭に立って俺達を別室へと案内したのであった。
8畳間程の応接室のソファーのシートを勧められ、俺とアリ-シアさんが並んで座り、向かいには受付嬢、下座の一人席にラルゴさんが腰掛けた。
「私、今回ご対応させて頂くルミーナと申します。まずはお二方の新規登録と言う事で宜しかったでしょうか?」と受付嬢が自己紹介しつつ尋ねて来た。
「どうも、お世話になります。トージと申します。私は新規登録ですが、こちらのアリ-シアさんは、お父様の商会の家族会員で登録済みだったらしく、お父様が無くなったので諸々の手続きも一緒にお願い致します。」と冒険者っぽいぶっきらぼう要素抑えた日本人モードで挨拶して軽く頭を下げた。
「了解致しました。では先にトージ様の新規登録を先にして、後で、アリ-シア様のお父様の商会の引き継ぎとアリ-シア様の名義に変更する手続きをさせて頂きたく思います。」と手順を説明してくれたので了承しておいた。
申込み用紙を渡されて、氏名、出身地、住所、商会名、商い内容や取扱商品等、概要、代表者氏名、開始時の預かり金
を書く欄があった。 あ!商会名・・・全く考えて無かったよ。俺は焦って、アリ-シアさんの方を見て、「アリ-シアさん商会名全く考えてなかったよ。どうしようか?」と助けを求めるも、「それは、ちゃんとした思い入れのある名前にした方が良いです。」とそのまま返された。
うーん、今となっては両親から継いだ家も国も無くなったが、せめて親の残してくれた姓のを使うか?と思い。おれのフルネーム大沢藤治郎の『オオサワ商会』に決めたのだった。
今使ってるトージと言う名はゲームで使っていたのアカウント名だ。どうせゲームの様な異世界だし、トージにしたのだ。
出身地?どうする?日本とか書くと過去の手駒の先輩と被ってややこしい事になるかも知れないから、サイタマとでも書いておくか。 住所? 『魔の森』エグドラ村かな。
取扱商品は、魔物素材、鉱物、宝石、『魔の森』素材、錬金素材と製品、魔動具、料理レシピ、食品ぐらいかな。
概要は特にないな・・・。
代表は俺っと・・・。
えーっと、開始時の預かり金か。
えっと、幾らあるか知らんけど、当面はこれ一袋あれば大丈夫かな?
俺は、背中のリュックを前に持ってきて、リュックの中から、こう言う時の為に出して取り出し易くしておいた、金貨の詰まった盗賊の財宝の1つである金貨の革袋を1つ引っ張り出したのだった。
「よいしょっとこれを開始時の預かり金にします。お願いします。」と言ってルミーナさんの方に置くと、明らかに綺麗なご尊顔が引き攣っておられた。
「えっと、これ全てでございましょうか? 数える必要がありますので、他の者にてつだわせますから少々おまちを。」と言って席を立ちあわてて、助っ人を呼びに行った。
そんな俺とルミーナさんの様子を面白そうにクックックと笑いを漏らすラルゴさん。俺に向かって親指を立ててウインクしている。
「なかなかに見事な初手です。トージ様。」と。要は今後の取引で舐められない為にも良い一手だったらしい。
「すみません、何か俺の所為で余計に時間掛かりそうで、申し訳無い。」と謝ってから、待ってる間にラルゴさんの所で購入出来る物を欲しい物リストの写しを渡して、用意して貰う事をお願いするのであった。
「あ、アリーシアさんの欲しい物リストの分も此方に追加して置こう!」と言って見せてもらうと、鞄とか衣服とか下着とか、俺が見ない方が良い物だったので、「ごめんこれは自分で選ぶべき物だったね。」と言ってリストを戻したのだった。
そうこう話して居る間に台車の上に何やら魔動具を乗せて、ルミーナさんと男性1名、女性1名が一緒に部屋に入ってきた。
「お待たせ致しました。助っ人を呼んで参りました。こちらは当マッシモ支部のギルドマスターのロバートです。あちらは同僚のエリーです。」と紹介してくれたので、「トージです。お手数お掛けしますが宜しくお願い致します。こひらが申込みの用紙です。ご確認を。」と言って申込み用紙を受け取って目で読みながら住所欄でヒッ魔の森!?と絶句していた。
そんなルミーナさんの横から申込み用紙を見たロバートさんも固まってしまい、「こ、これは?」と俺の方をマジマジと見つめて目で答えを要求してきた。
「あっと、もしかして、住所の部分ですか? えっと元々俺、ここ2年以上魔の森に住んで居りまして、家も魔の森の真ん中辺りにあるんですよ。丁度先日この街を目指して回出しに出て来た所で運良くラルゴさんに出会いましてね。こうして、こちらに登録しに来た訳ですよ。」と言うと、非常に困った顔をされたしまった。
「ああ、それなんだが、当面は家の方にお泊まり頂いておるので、何かあれば私の屋敷の方に連絡頂ければ良いかと。ですよね?トージ様」と俺に尋ねてくる悪い笑顔のラルゴさん。
「ええ、取りあえず森の家とは別に、こちらの方に拠点を買おうかと思ってましたので、それも合わせてご相談出来ればと思ってました。当面拠点が出来るまでは、申し訳無いですが、ラルゴさんの方を連絡先にさせて頂ければと。」とお願いすると、「勿論当然です。ご遠慮なく!」と大きく頷くラルゴさん。
魔動具は非常に優秀らしく、こんな会話をして居る間に、金貨の袋の中身を数え終わっていた。
「お待たせ致しました。お預かり金額は8千万5百90万ギリー(85,900,000ギリー)でした。」と言う事だった。
「どうも、お手数おかけしました。重かった割に大した額じゃなかったですね。申し訳無い。」と俺が率直な感想を言うと「エッ?」って声が聞こえた。
だって、取らぬ狸の皮算用じゃないけど、もう、燃えてしまって滅んだ世界のお金だけどさ、俺10億円の当たりくじ持ってたんだよ?それに比べると・・・ね。
そうやって思い返すと、現金化する前に灰になってしまって、1円も使う事終わったんだよな。って思って、使える内に使ってこそ意味があるって思っちゃったよ・・・。
あの世でもなく、異世界だけど、結果持って来られなかった10億円だし。生きて居る間に有功に使って幸せを享受しないとな。
「また、後日追加させて頂いても良いのですよね? 硬貨って重いし邪魔で、使い勝手悪いですからね。」と俺が言うと「え、ええ、何時でもどうぞ。」と顔を引き攣らせていたのだった。
まるで、「げっ、まだ持ってるのかよ?」とでも言いたそうな感じだだった。
そんな会話の間に出来る受付嬢のルミーナさんはアリーシアさんのお父さんのギルドカードをアリーシアさんのカードに統合し、アリーシアさんがお父さんの商会を引き継ぐ様な形にしてしまったのだった。
やっと、預かり金のカウントも終わり、晴れておれは自分のギルドカードを手にする事になった。予てよりの話通り、ラルゴさんが推薦人になってくれた事と、預かり金額が普通の商人のスタート金額の10倍以上と言う事もあって、初っ端からAランクスタートになったらしい。
これに加え、ラルゴさんからのマッド・ディアーの革2匹分やオークションの売り上げも入ったりするので、近々にSランクになりますよとラルゴさんが悪ガキが悪戯を仕掛ける時の様な顔をして楽しそうに笑って居た。
一応、この後の予定もあるので、不動産に関しての説明と相場を軽く聞いたのだが、
まず、場外を勝手に開拓して建物や畑等を占有する場合、その用途によって税金が変わるらしい。ご尤もな話だ。
気になったので序でに聞いたのは俺の小屋のある魔の森の所属と税金だが、驚きの回答であった。そもそもあの森全体は何処の国にも所属してない空白地帯で、彼処に家を持ってるなんて与太話、普通は誰も相手にさえしないですよ。と言う話だった。
だから、おれが開拓して実効支配して住んでいるのだから、貴方の物です。自分の支配地だから、誰にも税金なんて払う必要も無いと言う事だった。
ふぅ~ん、ヒッソリ暮らすには良い場所じゃん!?と思わず一国一城の主も悪く無いな!と冗談で思うのであった。
おっと脱線したが、単純に住居として、開拓して住む場合、ケースバイケースだが、税金は年間に大銅貨1枚程度なのだとか。
安い!って思うでしょ?農地として作物を作る場合は畑1反で大銅貨5枚やや高いがもし若しくは農作物の出来高の3割とこれも意外に良心的な設定だ。
日本の実質五公五民に比べれば激安で、逆にそんなんで領地経営成り立つの?と心配になってしまう程である。
これは開拓して領地を広く栄えさせて欲しい領主側の思惑があるからこその税制で、余所の領主よりも激安ば分、サポートが無いので、治安も安全維持も自前で行う自己責任となる。
うん、俺なら全然OKだが、一般の農民や女子供やジジババ達は戦闘する術も無く結局そう言うサポート無しは厳しいので領主によるサポート有りの通常税率に落ち着くらしい。
「なる程、凄く判り易いな。しかし、聞いただけだと、ここの領主様はかなりお優しい、善良なお方のようだな。思わず余計なおせわだが、領地経営がそんな税金だけで成り立つのか、思わず心配になっちまったよ。」と俺が呟くと、あこの場の全員アリーシアさん以外が苦笑いしていた。
どうやら、余り領地経営が上手く行って無い様子。
「マジかよ。それは拙いな。まあ少しでも税収が上がる様に、協力する為にも場内に家を購入する方向で行くか。」と呟き、
場内の治安の良い辺りで、4部屋+風呂トイレのある物件の売り物がないか?を聞いてみた。
「多分、トージ様のイメージされてる規模の物件はございますし、直ぐにご案内出来ます。予算幾らぐらいで検討されて居りますでしょうか?」
「相場が全く皆目見当付かないけど、不便ではなくて、治安の良い辺りで5千万ギリー前後かな?かと言って飲み屋街とか騒々しいのも勘弁なんだけどね。気に入れば1億ギリーでも出すよ。」
と俺が現在ギルドの口座にぶっ込んでいる8千万ギリーよりやや安い金額を設定するとラルゴさんはウンウンと頷き、ルミーナさんとロバートさんは驚いた様にクワッとめを見開いていた。
「えっと、これから、衛兵の詰め所と冒険者ギルド、出来れば一度神殿にも寄りたいので、もしかのうなら、明日その候補の家を内見させて頂けたりします? ラルゴさんを含めお忙しい皆さんを拘束する時間が長過ぎると拙いので、幾つか明日までに候補を挙げて置いて頂けると嬉しいのですが?」と俺が提案すると。
丁度良い提案だったらしく、直ぐに了承され、明日までに何軒かピックアップおきます!とルミーナさんが張り切っていたのだった。
「ラルゴさん、長時間お付き合い頂いて申し訳ありません。お時間大丈夫でしょうか?後は、詰め所と冒険者ギルドなので、アリーシアさんと2人で歩いて行っても大丈夫だと思うので、無理為されなくても大丈夫ですよ。」と俺が思った以上の長丁場に恐縮していると、
「ええ、お気遣いありがとうございます。今日は終日空けておりますから、ご心配無用ですよ。それに衛兵の詰め所は私が居た方がスムーズだと思いますし。」と言ってくれたので素直にお言葉に甘える事にした。
商業ギルド出た俺達は竜車に乗って今度は冒険者ギルドへと赴くのであった。
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