第9話 思ったよりも発展してる?


既に捕まえてる15名に5名を加えた20名を引き摺る様に竜車が動き出す。俺は見るからにノリ心地悪そうなので遠慮して竜車の横を威嚇しつつジョギングでノッタリと付いて行く。

謂わば俺の役どころはハートマン軍曹である。


「トージの旦那、乗りゃ良いのに。言う程ノリ心地酷くないぜ?」と傍から見てると、被写体ブレの様な貧乏揺すり状態のケネスさんが舌を噛みながら話掛けて来る。


「クックック、それ、舌を噛みながら言う台詞じゃないぜ。」と笑いながら返すと、「フフ、違いねぇ~。」と笑っていた。


俺がアジトを潰して戻って来るまでに要した時間は30分位だった様で、半分今日中に街に戻るのを諦めて居たと言うラルゴさんに、

「済まないが、暇潰し序でにちょっと教えてくれるかな?盗賊の持ち物ってどうすれば良いんだ?」と尋ねると、その討伐者の物になると言う事だった。

なるほどな・・・。


「じゃあ、みんなで分けるか?」と俺が提案したのだが、全員から丁寧に辞退されてしまった。


更に街に入る際の事を尋ねると、やはりお決まりの通り身分証の無い場合はお金(入場税)銀貨1枚を払って入る事が出来るらしい。


えー、銀貨1枚、何か売るか?と考えて居たが、よくよく考えるとアジトで捕まえた5名の持ち物に財布の様な布袋があったのを思い出して、懐に手を入れる振りをして手探りで『時空間庫』を探って、財布の巾着袋を見つけて引っ張り出した口を開けて覗いて見ると。中には銀色の硬貨っぽい物が見える。


「度々済まないが教えてくれ、銀貨ってこれだよな?」と銀色の硬貨を1枚見せると「ああ、それだよトージの旦那、良ければ軽く教えようか?」とケネスさんが申し出てくれた。


お金の種類は、次の7種類が存在する。

黒曜貨

白金貨

大金貨

金貨

銀貨

大銅貨

銅貨


となっているらしい。下の硬貨10枚で上の硬貨1枚分と言う10枚単位で両替出来る。


銅貨1枚で何が変えるかで物価が判るだろう・・・。


しかし、硬貨しか無いって本当に不便じゃねぇ?ジャリジャリと重いだろうし。キャッシュレスや紙幣に慣れた身にはちょっと馴染めないな。と思わず苦笑い。


「しかし、商人は大変じゃないのかい?こんな硬貨ばかり大量に持ち歩けないだろ?重そうだし。」と俺が素朴な疑問をラルゴさんが答えてくれた。


「ああ、トージ様、商人には商業ギルドのカードと言う物がありまして、ギルドに預けてある金額がカードに紐付けられておりますし、カードは本人以外では使えないので、商談の時とかはカードを使って支払って売り買いするのですよ。」とキャッシュレス決済が出来る事を教えてくれた。


わぁ~、何処が中世のヨーロッパより下の文明だよ、一部だけ凄くハイテクじゃねぇかよ。と『ナンシー』様のガセ情報に心の中で毒突く俺。


うーん、これは『ナンシー』様のオーダーである文明の発展って、最初は中世のヨーロッパより下のレベルの文明程度と高を括って「楽勝♪楽勝♪」ぐらいに思ってたけど、見通し甘かったかも知れんな。

街で調査して作戦練らないとだな。甘く見てた事をちょっと反省する俺。


それからも、俺は横でジョギングしながら、ラルゴさんやケネスさん達から色々と情報を漁る。


まず、この世界に紙はあるが、非常に高価な物らしい。


まあ、よくある異世界『あるある』である。


風呂は一般的では無く、貴族や大商人の家ぐらいにしか無いらしい。

それを聞いて俺が驚くと、庶民で風呂を使った事がある者は逆に希ですよ。逆に森にお住まいだったとお聞きしましたが、良くご存知でしたね。と言われて、

「だって俺の小屋には風呂あるし。」と言うと滅茶苦茶驚かれたのだった。


たわいの無い会話から多くの情報を収拾しつつ、息も乱さず颯爽と走っていたのだが、竜車の後ろでは、阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。

1時間程進んだ所で休憩時間となった時、ボロボロになっている盗賊共が酸素を求めて深呼吸を繰り返していた。竜車を曳くトカゲ2匹に水を与えるらしいのでその間に、盗賊共に魔法で給水してやると、涙を流さんばかりに感謝されたのだった。


まあ、俺としては善意のサービス処か、(盗賊共は)大事な収入源の1つになるので・・・ね。


しかも、予想はして居た事だが、この世界に魔法の使える者は居るが、多くは貴族や王室に連なる者ばかり。庶民だと非常に稀少であるらしい。

俺の様に魔法で水は出せてもここまでの量を出したり出来る者は王宮のお抱えの王宮魔道士ぐらいとか何とか・・・。


「えー、それって、王侯貴族で魔法に関する情報を秘匿してませんかね? こんな森の中に住んで居た俺でさえ使えるのに・・・。」と俺が言うとラルゴさんも、「あり得ますね。」と頷いて居た。

実際のところ、魔法に関する書物はあるが、識字率の問題や紙が高価な事もあって、本が異常に高い為、庶民には手が出せない物なのだそうだ。

だから、秘匿するつもりかは不明だが、庶民に魔法が使える者が非常に少ないらしい。


 ◇◇◇◇


盗賊共に取って地獄に仏の休息時間が終わり、「おら!盗賊共、逝くぞ!!」と言う俺の気合い入れで、再びデスロードが始まった。


まあ、30分も休ませて貰ったんだから、最後までキッチリ走って貰らわにゃ~♪

時々、盗賊共が何か言いた気に恨みがましい目で俺をチラ見しているが、俺も横で伴走して居るのだから、文句は無かろう?とニヤリと笑ってやると、慌てて視線を逸らせる。


大人数でガラガラと音を立てて移動している所為か、俺がやや魔力の威圧を漏らして居る所為か、道中全く魔物が出て来なかった。


ケネスさん曰く、普段は結構魔物が出て来るらしい。やはり、俺の威圧が効いている様だ。


下手な戦闘で日暮れまでに街に辿り着かないと困るからな・・・転ばぬ先の威圧バリヤーだよ。


そんな俺の目に見えぬ努力の結果、何とか夕暮れ前に城門に辿り着き、ゾロゾロと数珠繋ぎで半ば引き摺られて登場した盗賊共の姿に衛兵も順番待ちの行列に待ってた人々もギョッとしていた。


慌てて出て来た衛兵に理由を説明するラルゴさんが俺を呼んで、「この方が盗賊を討伐されたトージ様です。」と衛兵に紹介したのだった。。


「ああ、トージだ。宜しく頼む。森から出て来たんで身分証も何もない。」と俺が片手をよっと挙げて俺が挨拶すると、

「森ってまさか『魔の森』か?」と驚いていた様子で聞いてきた。ラルゴさんに尋ねると、俺の居たあの森は『魔の森』と呼ばれて居る魔境である事が判明したのであった。


うむ、確かにあの森、魔物は多かったな・・・。

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