第8話 根刮ぎ狩る

しょうがないな・・・。

実際俺としては、お金になる方がぶっちゃけありがたいのだが、自分だけならサクっと到着するのにと言う事と、所詮悪党の命って事で凄く冷めためた考えになってしまうのは、俺の生い立ちを考えれば仕方が無いだろう・・・。


俺の両親はいたって真面目で善良な人だった。

特別に親子の仲が良かった訳でも無いけど、尊敬出来る温和な両親だった。


俺が高校2年の秋に結婚記念日の旅行中に出所したての奴が起こした行き当たりばったりの再犯に巻き込まれて命を落としたんだよ。

犯人はその後捕まったけど、だからって両親は帰って来ない。

だから、悪党の人権も命もどーでも良い・・・。


ああ、イカン余計な事を思い出すと心が暗黒面に堕ちる。余計な事は考えず、取りあえず目の前に落ちて居るお金を拾うって思っておこう。



俺はケネスの方を見てから、交渉を持ちかける。


「なあ、ケネス、手伝ってくれるなら、総額幾らになるかしらねーけど、賞金は山分けにするがどうする?」とニヤリと笑いながら問い掛けた。

「ああ、悪いが俺達は現在護衛依頼の最中で、決定権は此方のラルゴさんにあるんでな。折角、気を遣ってくれたのに済まんな。」と申し訳無さそうに断ってくるケネス。


なんだよー!?義理堅い奴だな・・・。


些かぶっきらぼうな喋り方は異世界物の冒険者あるあるの舐められないようにって配慮からだが、本来のキャラに無い事を演じると意外に疲れるんだよ。


見た目が若い兄ちゃんだし、『郷に入っては郷に従え』(冒険者流)って奴だ。



するとこのタイミングでやっと復活した御者の30代後半ぐらいのブラウンの髪の毛の綺麗な身なりの男が俺の方にお礼の声を掛けて来た。


「あ、申し遅れました、ラルゴ商会をやっております、商会長のラルゴと申します。この度はお救い頂き、誠にありがとうございました。」と言いながら、こんな若造の俺にも丁寧に頭を下げて来た。


「あっと、トージだ。間に合って良かった。どうだ?街まで連行するの手を貸してくれるなら、ラルゴさんも入れて全員で山分けにするが、大した金額じゃないなら、斬って埋めるか?」と俺が言うと、

「いえいえ、結構な額になる筈ですよ。犯罪奴隷1人当たり最低でも金貨1枚にはなりますし、もし賞金首なら更に賞金も付きますから。」と手短に教えてくれた。そしてラルゴさんはケネスに何か指示して、盗賊共の武装解除を手伝わせてロープで繋いで行く。

結局、ここから、2時間、盗賊共を数珠繋ぎにして連れて行く事になったのは、多少面倒ではあるが、この機会に色々とこの世界の知識を得ようと切り替える俺だったが、その時フッと頭を過ぎる異世界物によくある盗賊のアジトの件。



俺はロープに繋がれた盗賊のリーダー格の奴に殺気を放ちつつ話し掛ける。「おい、盗賊、お前だお前!」と言って蹴りを入れるとグっと呻きを揚げて卑屈そうな目を向けて尋ねる盗賊リーダー。

「何ですかい、旦那・・・。」と。


「おいお前、お前らの仲間は何人だ?おかしい、少なすぎる気がするんだよ。アジトにまだ居るだろ?今素直に言うのと指が1本ずつ無くなって痛い思いして喋るのとどっちが良い?一応、チャンスは両手両足全部で20本分あるけど?」とニヤリと笑いながら、腰に刺してある俺のお手製の(見せかけだけの)剣(石を削って作った素振り用)をポンポンと叩いてみせると、思いっきり動揺しながら、素直に話始める盗賊リーダー君。感心。感心。

アジトはここから、20分程西の方に向かった崖にある洞穴で、残り5名が見張りをして居ると言う事らしい。


ふむ。後顧の憂いを絶つ方が、みんなの為だろうな。


「なあラルゴさん、俺序でにアジトに残る仲間も潰して来るわ。残すと碌な事無さそうだし。見つけた時に潰しとかないと被害者増えるからな。あと、話は変わるが、もしかしてズボンやシャツ、ブーツとか持っていたら、売って欲しいのだが?」と言うと、少し困った顔をするラルゴさんであった。


「街に戻ればそれこそ、何着でもご用意出来るのですが、現在取引が終わって殆ど全て売り捌いた帰りなので、生憎何もご希望の物は持ち合わせておりませんでして・・・。しかし、アジトをこれから潰すとなれば、今日中に街へ戻るのは厳しくなりましょう? 日が暮れるとここら辺は盗賊以外にも魔物も出ますし、穢してる奴らの血の臭いに寄ってくる魔物も居そうですし・・・。」と端切れの悪い返答である。


どうやら、負傷して居るとは言え15名の盗賊を連れて行く道中に不安を感じている上に寄り道するとなると余計に遅れてしまう事を懸念しているらしい。ご尤もな意見である。


結局、交渉の結果、最大限に急ぐので、申し訳無いが1時間だけ待ってて欲しいと頭を下げてお願いし、了承されたのだった。


良し!!と心の中でガッツポーズをして、「じゃ!」と声を掛けて、盗賊のリーダーが指差す方向に向けて身体強化をしながら軽く駆け出し、木々の中に入った所で上空にゲートで上がって、アジトがあると言う崖の場所を目視で確認しつつ滑空する。


アッと言うまに崖の洞穴を発見し、直ぐに減速体制に入り空中から、パスンぱすんと見張り2名に魔弾で狙撃すると、ギャーと叫び声を上げる見張り2名の男がゴロゴロとして居ると洞窟の中から、「ギャーギャー五月蠅いがどうした?」と3名の俺より小汚い男が顔を出してきた。


地上に降り立った俺は出て来た3名にも魔弾を食らわせて、即座に制圧した。

武装解除し、身包みを剥いだ後はラルゴさんから貰ったロープで両手両足を拘束すると、洞窟に足を踏み入れる。


そうか、小屋でなくても、こう言う洞窟を住処にする方法もあったんだな。何か臭いし、ジメジメしてるけど・・・。


本当にアンモニア臭の混じった様な酷い匂いがする。折角清潔にしているのに・・・。と顔を顰めながらライトで照らしてみると、奥にお宝の山を発見してニマリと頬を緩めるも、そのお宝の隣の枝道に格子のある部屋を発見した。そこには、若い俺と同じぐらいの女性が一目瞭然で何があったか判る様な破れた衣服を手で押さえてで肌を隠し、死んだ様な目をして居た・・・。


「あー、やっぱり、犠牲者居るのか・・・。」と声には出さなかったけど、何とも言えない気持ちになって、胃がキリキリと痛くなる。


「おい、助けに来たぞ!大丈夫か?」と声を掛けると虚ろな表情でこちらを見上げて来た。そして、目を見開き、涙を流していた。


俺は女性を牢から出してやり、酷い身なりだったので、目を瞑ってもらって、水の水流を作ってやって、渦を巻く様にして女性の身体を『隅々』まで綺麗に洗い流してやった。風呂の様な爽快感はないのだが、多少は匂いや汚れが落ちるので、遠征に行った先では良く頻繁に使って居る『ウォッシュ』である。風魔法で温風を纏わせて身体と衣服の水分を飛ばして乾かしてやると、こざっぱりした高校生~20歳ぐらいの美少女がそこに立っていた。


更に念の為他人には使った事すらないが、両手を取って回復魔法を掛けてみた。勿論、無惨に蹂躙されたであろう彼女の乙女な部分にも傷跡等や感染症とかにならない様にとイメージを膨らませておいた。

多分、上手く行ったと思う・・・。


見た限りではかなり衰弱しており、ヨロヨロとして居る。


どうやら、俺が魔法を駆使した事を理解した様で驚いた表情で固まっているが、「ありがとうございます。」とちょっと頬を赤くしながら呟いた。のだった。。



「多少はこざっぱりしたろ? 目を開けて良いぞ。一応、色々内緒にしてくれると助かる。本当は何か着替えが荒れれば良かったんだがな・・・。俺も代えの服すらなくて。悪いが、このローブでも羽織っててくれ。早々に何とか用意するからと言って真っ赤なローブ脱いで手渡すと、ローブを着込んで、

「ありがとうございます。アリ-シアと申します。助けて頂いて、感謝致します。」と頭を下げた。


俺は、待ち合わせの時間があるので、慌ててて、アリ-シアさんに暫し目を瞑って貰いその間にお宝を全部『時空間庫』にぶっ込んで行き、そして空っぽになった洞窟を出たのだった。さてと、此奴らをどうするか? お宝の横に落ちて居た匂いそうな衣服の切れっ端を裂いて目隠しを作ってめを塞ぎ、物は試しと『時空間庫』にぶっ込んでみた。

おお、生き物入れた事は無かったが、やっぱり入るんだな・・・。と予想通りの結果に満足しつつ、コップに水を入れて飲ませ、俺の自家製の干し肉を渡してやると相当にお腹が減って居た様で、一生懸命に食べて居る。水のお替わりも入れてやり、5分程で漸く人心地がついたみたい。

「本当はもっと消化に良い物が良いんだろうが、後で必ず沢山食べ物用意するから、先に移動して良いか?」と聞くと頷いてくれたので、


俺は、アリ-シアさんに再びに目を瞑る様に指示し、ゲートで先程の街道の傍の林に繋いでアリ-シアの手を取ってゲート潜り、林に移動した。そして、『時空間庫』から盗賊5名を繋いだロープの恥を引っ張って引き摺り出し蹴り飛ばして起こしててから、恫喝しつつ蹴り起こす。

「おい、この先にお前らのお仲間15名がお前達を待って居る。お前らの命なんかどーでも良いんだが、どうか素直に従って、俺の手間を省いてくれると無駄な殺しをしなくて済むんだがな。言っておくがお前らの内1人でも逆らったら、その時点で、連帯責任だ。全員、命を賭けて試してみるか?」と俺がニヤッと笑って見せるとブルブルと首を激しく振って、「大人しく従いますのでどうか、命だけは・・・」と懇願して来たのだった。


これじゃ、どっちが悪者か判らんな。と苦笑いしながら、ロープを引っ張り、ラルゴさんに向かって大声で「おーい!」と呼びかけ手を振った。


すると、ケネスさんと他1名が駆けて来て盗賊5名を縛ったロープを受け取ってくれたのだった。

俺が空けてる間に、応急処置が終わった様で、負傷した護衛達は顔色こそ優れないものの、動けるまでには復活していた。



さて、漸く出発だが、その前に・・・とロープで数珠つなぎにされた盗賊達20名の前に立って、大声を張り上げた。


「あー!!、ちゅよっとだけ、これから予想される無駄を減らす為に、これをまずは見て欲しい。俺達が出て来た、あっちの林の幹に汚い布が巻いてあるの見えるか?」と盗賊共にハッキリと声を掛けた。

ここからだと、約50m程の先にある、幹の太さが直径50cmぐらいの太さの木である。


全員が頷いているのを確認した後、「あの木を見てろよ!?」と言って、人差し指を木に向けて魔弾をちょっと威力マシマシで発射すると、次の瞬間、「ドッパーーン♪」と爆音がして、木が粉々に弾け飛んだ。

ポカンとする数珠つなぎの盗賊共と護衛のラルゴさん達。


「良いか?俺は悪党共には生きる権利なんて無い派の支持者で、『連帯責任』って言葉が好きだ、誰か1名でも逆らったり、逃げだそうとしたら、次は判るよな?」と凄んで見せて木のあった林の方に目をやるのであった。


「わ、判っておりやす、旦那! 俺ら逆らわないっす。面倒掛けませんって。信じてくだせー!この目を見てくだせー!」と嘆願して来た。


「そうだな、ここまで貴重な俺達の時間を割いたんだ、俺達を後悔させるなよ!」と言うと「「「へいっ!」」」と声を揃えていた。





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