第6話 おら、買い出しに行く!
何だかんだで、最後の課題であったウイングスーツでの滑空訓練が長引いたのと、その訓練で更に服の損傷が進んで仕舞い、タダでさえ見窄らしいのに、より見窄らしくなったのも更に遅くなった原因の1つだ。
限界ギリギリのブーツの延命を済ませ、継ぎ接ぎボロボロではあるものの、形はブーツと判る状態。ズボンは9割喪失してしまったので補修すら諦めた。いっっその事中東の人が巻いてる様な巻きスカートと言うか、丈の長い足首辺りまでの皮を巻いて股間を隠す様にした。これによって、ウイングスーツの尾翼部分が保持し易くなったのでドンマイである。
ただ、これだとノーパンでスースーする為、皮製の褌を作った。 皮製と言う事で蒸れるんじゃないかと思ったが、割と緩めにフィットさせると、それ程不快でもなく、悪くは無かった。
どうせ、街に行けばズボンも下着も買えるだろうし、暫しの我慢だ。
食料も万全、飲み水も木彫りの樽に入れて持って居るし、作り置きのスープ類も何食分かは石の小鍋に入れて確保している。
燻製小屋で燻したオーク肉のベーコンやソーセージ、も十分に作っておいた。
森で見つけた鉱物や宝石の原石、魔物の魔石や皮等、俺の手作りの石鍋や石のフライパン。木の器に木のコップ、木のスプーンとフォークにお箸、忘れ物は無い。途中のヤカンの宿泊用に一応手作りのものポールテントと羽毛入りの寝袋もあるが、毎日風呂に入りたいし、基本はこの小屋で寝泊まり予定だ。
ザックリとしたカウントだけど、こちらに来て2年の月日が過ぎてる筈なので17歳になったと思う。
髪の毛はセルフカットを何度も繰り返したので、彼方此方長さが違うのでみっともないだろう。 結局諦めて多少長いのを革紐で縛って纏めて居る。
まあ、目に前髪が入らなければ良いのだよ・・・。
鏡見てないけど、身長約180cmで割れた腹筋に厚みのある胸筋と、細マッチョで結構髪型以外は良い線行ってる筈だ。
さあ、高鳴る胸の鼓動よ、異世界の街と食事を堪能ししようじゃないか!
『女神の英知』で国や都市の様子やルール等はある程度判るが、常識や法律なんてその時々でコロコロ変化するので、参考程度にしかならない。
元日本人の俺には納得出来ない事も多く在りそうだし・・・。
兎に角買い物をして、神殿に行って『ナンシー』様にご機嫌伺いして置こう。
そう言えば聞き忘れたけど、『ナンシー』様の手駒って、まさか俺だけじゃないよな?
俺は何人かの内の1人だよな? 期限切れで既に不合格とかないよね?
今更になってちょっと心配になる俺。
確かに安心して移動出来る様になるまで、ノンビリし過ぎた気もしないでは無いが・・・。
上空へとゲートで繋いでウイングスーツを展開すると、遙か彼方に見える城壁が初めてハッキリ見えたのだった。眼下を見ると広大な森の真ん中に一際大きな俺の拠点のある『エグドラの木』。
殆ど全域制覇してて、色々な特産品をゲットしたけど、こうして改めて見ると広大だよな・・・。
東京都全域以上はあるんじゃなかろうか?言い過ぎか? 俺拠点の『エグドラの木』はほぼ中心にある感じだな。
急速に落下して行くエネルギーがウイングスーツのヒレによって滑空のスピードへと変えるれて行く。
ゴーと言う風切り音と共に赤いローブを纏った物体が弾丸の様に飛んで行く。
「今更思ったが、まさか魔物と間違えられて、攻撃されないだろうな?」とちょっと不安が過ぎってしまう。
飛んでる姿は下から見れば、ムササビやモモンガの大きいバージョンだろうし・・・。
まあ、最悪でも一応回復魔法も多少使えるから、何とかなるだろう。
1回のジャンプで、拠点から森の外周までの2/3の距離を飛ぶ事が出来た。
地上で軽く休憩して、飲み食いした後はトイレに行って身軽になったら2回目のジャンプだ。
やっぱ、上空で風を切ると身体が冷える。冷えると彼方此方の筋肉に力入っちゃうので、滑空しているだけでも意外に疲れたりする物だ。
このジャンプで一気に森の外に出られる予定である。
森の外に初めて出たが、みちはデコボコながら街道がある。轍もあるので、馬車か何かも通って居るのだろう。
そう言えば、こっちに来て、誰とも会話してないんだけど、『女神の英知』がインストールされてるから大丈夫だよね?
さあ、まだまだ城壁は遠い。ジャンプしよう。
3回目のジャンプで、かなり城壁が近付いて来たと思う。
無理すれば、上空からのゲートでショートカット出来なくもないと思うけど、そこまで無理する必要は無いだろう。さてて、休憩序でにステータスを確認しとくか。
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HP:129/132
MP:312/355
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「ふむ。余裕は余裕だが、『ゲート』と『身体強化』と『外装魔法』で割と減ってるな。
何か食って、強張った筋肉を解す為に少し火に当たって休憩するか。」
俺は、初めて森の外に出た開放感で、かなり浮かれて独り言が増えてるいる自分に気付いた。
これから人と接触するんだから、気を付けないとな。
考えれば、居心地が良かったとは言え、2年・・・約2年近く彼処に1人で居たのか。
元々の生活やを日々の生活を考えるとあれでもかなりアクティブに努力した方だよな。 うん、俺偉い。 よくよく考えるとここまで努力したのって、産まれて初めてかも知れん。
今まで、割と楽な方へ楽な方へと流されて生きて来て、結構運だけで乗り切ってたよな。 まあ、家族全員事故で亡くなって、俺だけ1人生き残ったのが幸福か不幸か微妙な所だけどな。
火を起こして、俺の作った石所為のヤカンでお湯を沸かし、俺の作ったハーブのお茶を入れてホッと一息入れる。
上空って結構気温が低くて更に風を切るから、体力消耗するんだろうな。何気にこんなに連続ジャンプしたの初めてだし。
ついでに、自家製のベーコンと茹でた芋をロックバードの卵を使ったベーコンエッグで食べて、石臼で挽いた小麦粉に水をまぜて、塩をひとつまみいれて、『ヘル・ビー』の蜂蜜で甘味を加えた
嘘臭いパンケーキ擬きを石のフライパンで焼く。出来れば,街で、砂糖や卵牛乳やバターとかも欲しいな。
最初こっちに来た時の食生活って今考えてもヤバかったな。
とは言え、このパンケーキ擬きも美味くないよな。炭水化物ってだけだな・・・。
日本人としては、米、醤油、味噌は何とかゲットしたい物だが、果たして米があるのか? 醤油とかその物が無くとも、気の長い話にはなるけど、大豆さえ在れば作れない事もないだろう。
てか、醤油無い世界で醤油さえ作れれば、それだけで、『ナンシー』様の課題クリアな気もするな。
あ!今気付いた!!全く今まで疑問にすら思って無かったけど、もし課題クリアして『ナンシー』様の試験が終わった後の俺ってどうなるの?
まさか、直ぐに魂回収~! お疲れさんだけで終わりじゃないよな? これは是非とも神殿で『ナンシー』様に聞かないと!!
簡単におやつを済ませて焚き火の後始末まで完璧に片付けをしてから、4回目のジャンプへと移行すのだった。
「おーーあんな感じの馬車なのか。てか曳いてるの馬じゃねぇ~し!恐竜っぽい二足歩行のトカゲ? ああ、走行竜って言うのか。ふーん。」
一応、魔物は魔物らしいが、大人しくて力が強く、足の早いトカゲ系の魔物らしい。森では見かけた事もない種だ。
眼下の街道のかなり先の方を行く西部劇に出て来る様な幌馬車がガタゴトと走っているが、当然の様にサスペンションなんか付いてる様子もなく、乗ってる人は地獄だろうなと思って見ていたが。
まあ、こう言う時って、魔物や盗賊の襲撃がお約束だったりするよな? なーんてね・・・。
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