第4話 魔法鍛錬
こっちに来て4週間が過ぎた。
元々それ程お喋りでは無いから、1日誰とも会話しなくても平気だった。とは言え、別にコミュ障でも無いし、普通に人と話も出来るけど、ここまで長期に誰とも話さないのは少しキツイ・・・。
必然的に独り言も多くなる。
元々独り暮らし長いから、独りは慣れているけど、喋り方やコミュの取り方を忘れてしまいそうだよ。 そもそも今喋っているのが日本語かこの世界の言葉かさえ不明なんだけどね。
こんなタンパク質も栄養も足りない仙人の様な生活しているのに、高性能な専用ボディのお陰か、徐々に成長を感じる。
心無し、筋肉も付いて、身長も少し伸びたと思う。
最近見つけた岩塩のお陰で微妙なスポーツ飲料水的な物を果汁と塩で作って竹筒水筒に入れて持ち歩いている。
日々走り廻って食い物探しと鍛錬がメインだが、ソロソロ風呂に入りたくて発狂しそうだ。
一応、毎日水場で顔を洗って、噛み砕いた木の枝の繊維と灰をを使って歯を磨いて居るけど、この水場の水量だとそれが限界。
もう、頭が痒くて仕方がない。身体も擦るとボロボロと垢が落ちるし、洗濯しようにも、水量が不安なので、目下のところ、我慢している。
乾布摩擦すればかなり違うんだろうけど、残念ながら、今着ているシャツやズボン以外にタオル一枚ないので無理なのだ・・・。
そんな辛い我慢の日々の中、嬉しい事が!!!
日々の瞑想のお陰か? 昼飯にアプモグの実を2つ食べた後の訓練で漸く体内にある不思議なエネルギー源っぽい物を感じる事に成功した!!!
モワモワとするもの感じ・・・表現が難しいが、恐らくこれが魔力だろう。
よく、異世界物では丹田の位置にある魔力とかって表現聞くけど『女神の英知』によると、そんあ表現じゃなくて身体全体ってあるんだよ、どう言う事?って思うじゃん?
そして発想の転換で、漸く身体全体の意味が判ったんだよ。身体全体とは文字通り、全細胞。面白い事にこの身体、内なる部分に目を向けると身体が色々な情報を返してくれるんだよ。魔力に乗せて。
そう聞くと、じゃあデブが魔力多いのか?って思うでしょ? 違うんだよ、いや、痩せよりデブの方が細胞多そうだから多少違うだろけど、魔力枯渇から魔力総量の増強と成るプロセスで、細胞の持つ魔力濃度というか密度が補強されてより高圧な魔力を扱える様になると言う感じ。
何でここまで詳しくなったか?って?ふっふっふ。俺は魔法使いになったんだよ、マジで!
指先から灯る光命名『ライト』である。
初めて魔法が発動した時、加減が出来ずに一気に魔力が底をついて、多分1時間程気を失っていたと思う。
直ぐにステータスを確認すると、MP:1/11
と総量10から11に増えていた。
ただ明かりが灯るだけだけど嬉しくて嬉しくて、ちょっと魔力が戻ると直ぐに発動→気絶のループをバカみたいに繰り返し、その火の内に、MP:1/18と総量が18にまで上がったんだよ。褒めて!褒めて!
一晩寝ると魔力は満タンに回復するし、水源に水くみに行かなくてもウォーターで竹筒水筒2本分の水が出せる事が判明した。
ただ気掛かりなのは、このペースでMP総量を増やしたとして、本当に攻撃魔法、例えばファイヤボールやファイヤーアローとかって何本打てて魔物討伐出来るのか?ってしょっと心配。
魔力燃費で、1発MP幾つかをカウントして置かないと、土壇場で魔力枯渇で気絶してアボンやな。
さて、ここ連日の魔法鍛錬による枯渇からの回復で、とうとう総量50まで増やす事に成功した。
文字にすると、アッサリ到達して居る様に思うだろうが、ハッキリ言って死ぬ様な思いを毎日何回もして、気絶、復活、飯気絶、食料確保のデタラメなループの日々だからね!
学校とかの朝礼とかで時々貧血で倒れる奴いるじゃん、あれのもっとキツイのがこの魔力枯渇による昏倒だよ。吐き気がともなったりもするし、目覚めた後も暫く目眩が抜けなかったりするし。
ただ、徐々に魔力増えると、その分、全部使い切るのに段々時間が掛かったりするし、1日の枯渇させる回数が若干遅くなったりして大変だったんだよ。
だから、この機会を利用して、色々な元の世界の異世界物仕込みの魔法知識が大いに役に立ったんだよ。
毎回、『女神の英知』でこの世界に普及してる魔法の技かを確認しているんだけど、殆どヒットしないんだよね。
色々な攻撃魔法を発動して消費コストをカウントした結果、火関係ではファイヤーアローが地球の知識を使って明示的にイメージを込めてスタンダードな1発辺り、MP1で撃てる事が判明。
更にに、ストーンバレッド、これも石を手に握り込んで撃つ場合、魔力で石を作る工程が節約出来るので、その分だけ魔力を他の要素、つまり、撃ち出す速度や回転等の要素に割り付ける事が出来るのだ。
そして、石を音速の80%位の初速で回転を入れて撃ち出すイメージでMP2程度。ほぼ音速で回転を入れて撃ち出すとMP3となる。
これは当たるとエグい威力で、非常に殺傷能力が高い。 理由は石の場合貫通せずに砕けて散弾の様になるからで、ただ殲滅目的なら言いけど、狩猟目的だと殆ど残らないので使い難いのだ。
ちなみに魔力で石を用意してストーンバレッドを撃つ際、魔力で作る石の弾をホローポイント弾の様にしたり、ダムダム弾の様な先端にする事もイメージ次第だが、威力は兎も角、コスパ的には、良いとは言えない。
では狩猟に最適な魔法は何か?と問われると、俺は目で見えない風の魔法のウィンドカッター(鎌鼬的な物)か、アイスアロー(氷柱)、アイスカッター(回転鋸刃)辺りをチョイスするだろう。まず良いのは熱が加わらないので、素材が駄目にならず、ソコソコの貫通力もあるので其処らの魔物程度なら十分に行けるのだ。
目で見えない攻撃と言うのなら、もう一つお薦めなのが、魔弾(マジック・バレッド)である。当初、所謂胃異世界物で言う、魔力によるテレキネシス的な運用で目に見えないマジックハンドで高所の果実を取ろうとした事で発見した『女神の英知』にも特に明記された無かった運用方法である。
そもそも『女神の英知』には属性魔法と言う概念が無く、無属性魔法なる概念自体、俺が日本の異世界関連のラノベ等で得た物だ。魔力自体、そもそも色も形も無い。言い換えると色や形を付けるのは魔力に干渉する魔法発動者の思念である。
魔力を感知出来る様になってからの日々は、毎日ゲーム感覚で本当に楽しくなったよ。 ああ、魔力枯渇の苦しさは厭だけどね。イメージした魔法を無駄を削ぎ落とした高効率で発動させる喜びは堪らないものがあるよ。
ステータス画面はショボいけど、この魔法と言う一点に於いて、この世界に来る機会を与えてくれた『ナンシー』様には感謝だ。
まだ人里に出てないのでどの程度の知識が出回っているのか不明だが、『女神の英知』に無い俺独自の魔法に関する概念や研究結果を世に出せば、それだけで、合格条件の文明の発展に寄与しそうな気がするんだけどどうなんだろうか?
で、無属性の魔弾の話に戻そう。特に物質変換をしない事で、低コストであり、貫通力と直進力、弾速にのみ魔力を使う事で、当たった標的を燃やしたり凍らせたりする副作用はないが、低コスト不可視の遠距離攻撃魔法となるのだ。
MP1のコストの魔弾で素百m先の魔物や大木を無音不可視の一撃で倒せる威力と言えばそのコスパの良さがお判り頂けるだろうか?
そうそう、無属性魔法の応用剣や刀の形状にして、例えば草木を切ったり、魔物を叩き切ったりする事も出来る。試した当初の斬れ味は悪く、斬ると言うより叩き切るに近い感じだったのだが、俺が日本の知識を加味して刃の部分を高周波ブレード宜しく振動させるイメージにしたら恐ろしい斬れ味になってしまい
逆に迂闊に使うのをためらう程になってしまった。
でも正直に言うとブーンって高周波ノイズが微かに聞こえるので、暗殺等には向かないと思う。
更にこの無属性魔法の応答で嬉しかったのは、武器だけで無く、工作様の工具として使えた事である。
例えば、岩を拾って来て、無属性の高周波彫刻刀?リューターで岩を削って鍋や寸胴やフライパンを作ったり、木を削ったりしてフライ返しやお玉、お椀やコップ、スプーンやフォークやお箸を作ったり桶を作ったり出来た事だ。
器や鍋は当初土魔法を駆使して作ってみたりしていたが、熱に弱かったので、石からの削り出しの鍋とかにしてみたのだ。
そんな訳で、これまで道具が無くて作れなかった生活用品が一気に揃って来て文明人らしい生活に一歩近付いたと思う。
恐らく、この時点で弥生時代よりは文明的だろう?
魔力量の関係で、短時間ではあったが魔法で作った温水でシャワーを浴びたり、久々のシャワーは最高にスッキリしたよ。
近い内に湯船も作らねばな!
服の洗濯も出来る様になったし、文明的生活万歳!!
無属性魔法の応用に無限の可能性を感じる。
ついに、積極的なレーダーじゃないけど、敵の位置や数を知る方法を無属性のピンガーを撃ってその魔力波動の返りを関知する事で敵の存在する位置を察知出来る様になった。これを『アクティブソナー』と命名した。
まあ、常時発動する物じゃなくて、熱源の存在を肌で感じる様に魔力を単純に感知する魔力感知的な常時機能している感覚を非常時により積極的に情報を得る為の手段だな。
これにより、魔物の狩猟が非常に安全にそして楽になった。 ほぼ不意打ち等に合う事もない。
こっちに来て早3ヵ月、日々新しい発見にほくそ笑みながら、ついでに狩猟をするお陰で、念願のタンパク質の補給には成功して居る。魔力総量は100を越えて、HPも90を越えた。
HPに必要だったのは肉だったみたいだ。ゲームのレベルアップ的に考えれば、魔物の討伐(そして食う)事で結果HPが上がったとも考えられるが、そこはまあ良い・・・。
この3ヵ月で、森の中の探索とマッピングを行った結果、なんと嬉しい事にとある崖の地層から『岩塩』の層を発見したのだ!それに天然の胡椒や胡麻、山椒等や胡桃等、形は変だったけど、唐辛子っぽい物、野生のニンニクや、ジャガイモっぽい根野菜にショウガ等、既に見つけてあった茸に加え更に食える美味しい茸も増えた。この森は食の宝庫である。
ただ最大のネックは、替えの服や下着等が無く、幾ら水魔法で清潔に洗ってはいても、当初がんじょうそうでゴワゴワしていたズボンでさえ、膝やお尻や太股の辺りが非常に心細くなって来て居る。
ブーツに至っては、今はまだ使えているが、あと2ヵ月保つ気がしない。
これは、俺が、魔力を使った定番の身体強化を使った結果、靴底に予想以上の負荷がかかった所為である。ふふふ、強さは罪なのだな。
そんな訳で食生活が急激に安定した事で、更に身長が伸びた。
此方に来た当初は160cm台だったと思うが、急激に伸びて多分170cm台には入ったんじゃないかな?
それに伴って、長ズボンだった筈のズボンの裾がつんつるてん?(裾が足りなくなった状態)になって、まるでバミューダズボンを履いてる様な微妙な雰囲気になってしまった。
ここが無人島なら、完全に難破船の遭難者だ。
流石に布を作る事は厳しい。 野生の綿も麻も発見出来ていないし。
材料無ければ流石の俺でも無理。
まだ『要所』は隠せて居るので、良しとして当面は、大事に現状維持だ。
服は保留だが、行動半径が増えた事もあり、非常食等を持ち歩く事や、収穫物を持ち帰る事が多くなったので、これまで使っていた竹で編んだ籠に見切りを付けて、念願の入れ物を作ろうと思い立った。
元々手先は器用な方ではあったが、革紐を使って無属性の針で3日掛かりで念願のお洒落なリュックをブラック・マーダー・ベアの毛皮で作った。
序でにズボンも作ろうかと思ったが流石に毛皮のパンツは蒸れそうなので止めておいた。
勿論、穴開けも可能なので、木釘を使った本格的な家具や粗末ではあったが小屋や燻製小屋やトイレ小屋を建てたりも出来た。
無属性の刃や針等の工具類は超優秀で、木の幹に作ったツリーハウスはそのまま残して、木の麓に新規に風呂トイレ、ウッドデッキ付きのログハウス風の小屋を建てた。
内部には、物置場を兼ねたロフトを付けており、頑張って暖炉も完備したので、冬でも凍死せずにいきのこれるとは思う。
穴開けも可能なので、木釘を使った本格的な家具も各種作って、テーブルや椅子、ウッドガーデンで、ユッタリと臍ベル事が出来るビーチのリクライニングチェアーみたいな物も作って、文明度は一気に上がった。
トイレの汚物の処理方法だが、異世界物でよく出て来るスライム君にはまだ会えてないし仲間にもしてないので、定番のスライムトイレではない。おが屑を利用したコンポスト的な分解方法が『女神の英知』にあったので、小屋を建てる時に大量にでたおが屑を有効利用している。これの凄い所は、微生物により分解されて、ほぼ臭わない事である。
満タンになってしまったら、その時対処を考えようと思う。多分、堆肥として使える筈なので、野菜等の種等を入手して栽培を始める際には
使えると思うんだよね。
風呂は土を硬化させて、御影石の様に磨き揚げた浴槽にしてある。大きな木の切り株をくり抜いた洗面器もあって、お湯は魔力頼みだが、凄く快適である。
排水は地面の下を通る排水溝を作って、排水様の貯水池?タンクを作っておいた。最終的に地面が吸い取って濾して浄化してくれないかなぁ?
普通だと、浄化槽とか作ったり、微生物の力で分解したりするんだよね? 『女神の英知』にも情報あったけど、早く風呂を使いたくて、そこまで完璧につくるのは今回やってない。
ちなみに石鹸はオークの脂肪を使って作った物で最初はかなり獣臭かったのだが、臭い消しに使える花と香草を発見し、その絞り汁を混ぜた所、獣臭さは完全に無くなり最高級の石鹸が出来上がったのだ。
ヘチマっぽい実を乾燥させた垢擦りは非常に気持ち良くて、ここに来て初めて風呂に入った時は感動して思わず、背中がヒリヒリする程に擦っちまったよ。
その後お湯に浸かって背中が染みたのはご愛敬だ。
今の所、魔法の鍛錬と生活水準の向上で手一杯だが、『女神の英知』の情報によると、どうやらこの世界にも定番の錬金術や魔動具と言う物があるらしい。
その内余裕が出来たら取り組んで行きたいと思っている。
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