第2話 インストール完了

いやぁ~トイレで流されてるかの様に穴に吸い込まれたら足下に地球の様に青い海とか白い雲とか浮かんでる綺麗な惑星が見えて来て、そこから一気に加速。

そこらの絶叫マシンなんか眠たくなる様なスリルだよ。俺を殺す気か!!! まあ、現在生き返る途中っぽいけど。地面が見えてきたら、大きな木が見えて来てその巨大な木の根元に横たわる男の子の身体に衝突して溶け込んだ。インストールされたった。


目を開け天井代わりの巨木の枝と葉を見つめ、徐々に身体を動かそうとすると、俺の身体に巻き付いていた巨木の根っこがスルスルと足を引っ込める様縮み土の中に消えた。

「あー、あーー、あいうえお。あーあー、本日は晴天なり。」声はかなり若い感じで手を見ると、ツヤツヤの傷一つ無い肌で素の身体と違って白っぽい。今度の身体は白人なのか?

今回はちゃんと服を着て居る様でホッとした。またマッパスタートとか、葉っぱで隠すとかハードルが高過ぎるし。

服装は生成りっぽい色の飾りっ気のない長袖シャツに、ちょっとゴワッとした頑丈そうなズボンに皮のブーツと質の悪い靴下。

ズボンの中を確認すると、シャツと同じ様な生成り色のトランクス。ボクサータイプが好みの俺としては、ポジションがしっくりこないのでちょっとご不満だ。

ん?ポジションで思い出して、さっきから、何か違和感を感じつつ、ズボンの上から、股間を触ってみると、ちょっとビックリする程の手応え。1つのコンプレックスの元をズボンのウエストから指で隙間を作ってパンツの中をチェックする。

と、ちょっとこれが俺か!?と思わずニタリとしてしまう我が子とご対面した。


「ふっふっふ!!この人生、勝ったな!!!」思わず勝ち名乗りを上げてしまう俺。


まあ、秘所の確認よーーし!と次の重要箇所である、髪の毛のチェックだ。

頭を触るとちゃんと髪の毛も生えているしフサフサしている。試しに一本髪の毛を抜いて見ると、ブラウンみたいだ。

今回の設定どうやら容姿に期待出来そうである。

早めに鏡で確認してみたい。


そして次は生存確率に大きく影響するこの身体の性能チェックだ。


その場で屈伸をして軽くジャンプしてみると、驚く程に軽く高く飛び上がる事が出来た。

「ヤバイなこの身体。スゲー調子良い。」と呟きつつ、無事に生き返った魔法の世界に歓喜する。

どうやら、専用の特注?ボディは格別の性能らしい。


多分、身長は、160cmぐらいだろうか? 元の俺が175cmだったので、視線の高さに違和感があるが、栄養を取って早く大きくなるとしよう。



ちなみに、ジャンプして着地する時に何かポケッとの中に入っていたので手を突っ込んで出して見ると、折りたたみナイフを発見した。

良かったよ。初期装備何も為しで、魔法も直ぐに使えないとなると、イキナリ詰みっぽいし。


まずは、どんな顔になったのか見てみたい。前世のおれは、悲観する程不細工ではないけど、外見だけで人から好感を持たれる程でもなかった。


まあ、この世界はゲームとかじゃなくライフの残機なしだ。十分に注意して慎重に生きて行こう。『ナンシー』様からの使命もあるし。しかし、『ナンシー』様、名付けた直後にC無い処かDは確実にあったな・・・。


いかん、こんな不敬な事をかんがえていたら、罰当たり。と自分を戒め、まずは何をすべきか『女神の英知』を探る。


うむ、飲み水と、食い物と、安全な生活基盤を整える事か。


あ、そうだ。飲み水って、魔法のある世界なら、魔法で出せるのか?と手を前に突き出して「水ーーー!」と息んでみたが、うんともすんとも何も出ず。


「駄目じゃん。まずは地道に飲めそうな湧き水探すか。水ないと3日でアウトだし。」と呟き、俺の居た木の根元をグルッと一周して周囲を確認した。


ここの周囲は森林?で見渡す限り木、木、木、である。


ここは森の中にポツンと空いた空き地に巨木が1本生えた場所だ。

これだけ立派な木は前世では見た事がない。


『女神の英知』によると『エグドラの木』と言う木らしく、実が食用可能らしい。


ほほう。実があれば、問題事項の1つの食料問題は取りあえずは解決だな。

十分な水分を持つ実らしいので、最悪飲料水が見つからなければ、実を食えば水分もある程度は大丈夫か?


木から離れて見上げると、大きなアーモンド形状の黄色い実が見えた。


よし、あの実がそうだな。俺は助走を付けて大きくジャンプして地上から2mぐらいの高さの枝にしがみついた。

そして、枝から枝に移りながら、実のある所まで行って、実を捥いだ。

シャツで軽く拭いてエグドラの実をガブッと一口。


驚く程に水分が豊富で下手なジュースより上品な甘味で美味い。系統で言うと、桃に近い味かな。


もうちょっと上に行くと、辛うじて人1人ねられそうな枝の集合した場所がある。

今夜は最悪ここで寝るか・・・。


木の上から、改めて周囲を確認してみると、木が邪魔で良く見えない。


「ふむ、駄目か。」と言うか、森スタートじゃなくて、『始まりの街』スタートとかに出来ない物かねぇ~。と心の中でボヤく。


ただ川も湖も見えないが、遙か向こうに城壁っぽい物がチラッと見えた気がした。

おそらく、あれが人の住む街だろう。


まずは、ここで魔物相手で負けない位まで戦闘力を付けるか。 魔法も全く発動しないし。


たの人間に出会うまでの道程は長そうである。

「おっと、忘れてた『ステータス』」確認してなかったので、ステータスチェックをしてみると、

スッゲー淡泊なステータス画面が脳裏に浮かんだ。

*************

HP:10/10

MP:10/10

*************


わぁ~、何これシンプル過ぎる。これまでこんなにワクワクしないステータスも珍しいな。


まあ、スキルもジョブも無ければこんな物か? せめて、強さの指標になる様な数値ほしかったな。STRとかINTとかAGIとかDEXとか、普通によくある項目の数値が・・・。


まったくもって、ここの世界の管理神?試験官?はゲーマーの心理って物を全く理解してないよ。励みになる数値があれば、みんな自然と努力するだろうに。


だが、『女神の英知』がインストールされてるので判るのだが、こんなステータスのHPもMPも訓練次第で伸びるのである。


MPが枯渇すると、気を失ったり行動不能になるので注意が必要だが、枯渇を繰り返すと筋肉と同じで回復スピードと総量が増えるらしい。


斯く言う俺は、まだ魔力を使えないので枯渇する事が第一の難関である。


まあ異世界物で定番のまずは魔力を感じるところから始めるとしようか。


そうなると、やっぱり瞑想だよな。胡座を掻いて股間で手の平を組んで目を閉じて五感を研ぎ澄ます。


『女神の英知』によると、空気中にも樹木にも食べ物にも全て魔力を持って居ると言う事であった。

まあ開始して直ぐにピロン♪とか鳴ってスキルが生える訳ではないので、地道にやるのみである。


2時間程瞑想してみたが、何も新しい発見も無く、太陽の角度的に昼になった感じなので、そろそろ今夜の寝床の心配をしようと幹の上で身体を解して木から下りて行く。


寝床を作る為の蔦やロープのかわりになる物を見つけよう。


出来ればハンモックぐらいは作りたいが、柔らかいロープの代わりになる物を探そう。

木のうえから見て目星を付けた方向へと進んで行くと先程木の上から見つけていたパイナップルの葉に似てる先の尖った似た大きな葉っぱを見つけてポケットナイフで根元をカットして、7枚程を纏めて手に持って移動する。

アイテムボックスとかあればどんなに楽だろうか。攻めてリュックとかの荷物を運ぶ手段無いと無駄が多いな。


先程の葉、長い蔦、石や尖った岩等、焚き火の薪や竹の棒等見つけた素材をドンドン運び込む。


最初に取った葉っぱを格子状に編み込んで、葉と葉を連結し、おおきな隙間の無い葉っぱにして行く。うまく使えばハンモックにも屋根にも壁にもなるだろう。5枚の編み込んだ葉っぱを作ったら、拾って来た木の枝をつかって、先程の幹の上までシャツと蔦を使って持ち上げた。


なにが一番大変って、この資材を幹の上に上げるのがイラッとする程に大変で、何度も諦めようかと思ってしまう。


悪戦苦労している内に、徐々に日が傾いて来るし、お腹も減って喉も渇く。

最悪である。しょうがないので、取りあえず『エグドラの実』を2つ捥いで、ガブガブと囓り付き一気に食べきった。


しまったな、くちの周りと手に果汁がついて、糖分でベト付い気持ち悪い。水ーーー!!!


水だよ、水ーH2O、空気中にある水分でも良いから、


「身体の中の魔力よ、空気中の水分を集めろよ!」何か中二臭いそれっぽい詠唱をしてみたが何も起こらず。


兎に角非が完全にくれる前に火起こししようと拾って来た竹の棒を割って、ポケッとナイフで穴を開けて、切り込みを入れて、直ぐ火の点きそうな乾燥した草を手で揉んで用意し、竹の棒をあなを明けたたらりにのこぎりの様に前後に動かして擦り付ける。サバイバルの動画だと、これで、直ぐに煙りが出たんだが、どうだ!?


「おおお!線香ぐらいの煙!竹の穴の裏にはちょっと赤くなった炭を発見、乾燥した草を置いて、再度その上に置いた竹に竹の棒を擦り付けて摩擦熱を休み無く与え続ける。

お、また煙が上がったな。この調子! 竹をどけて、あかくなった炭を草に包んでソッと息を吹きかけると、草に引火した!!!そのまま作っておいたフェザースティックにひを移し、細い枝からじょじょに太めのえだをくべて行って・・・

「やったー焚き火だーーー」と1人両手を挙げて喜ぶ俺。


地面に浅く掘った穴の所に非を移動して、竈風に石を置いていく。 いや調理器具も料理する材料もないんだけど、一応気持ちって大切だから。

まあ、最悪平たい石を見つければ石をフライパン代わりにして焼くぐらいは出来るだろう。


早く魔法が使える様になって、食生活を充実させないと、飢えて死んじゃう・・・。

武器も何も無い現状、魔法が唯一の生命線だ。


『ナンシー』様、思った以上にハードっす!と夜空を見上げて心の中でボヤくのだった。


朝まで燃える様にと太い倒木を焚き火にぶっ込もうとおもったら、竈形状にした石が邪魔だったでござる。

結局石の竈を壊して無理矢理くべて燃やして、炭になった所から折って、残りもくべて、作った葉っぱのシートの上に横になって火に当たりながら眠りについた。


途中メラメラ燃える炎の光の所為か、屋根に押しつぶされながら蒸し焼きになったシーンの夢を見たのはしょうがない事だろう。

もっとも、火遊びしてる訳じゃ無いので、おねしょはしてない。

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