間奏:朝比奈巴衛と夏を駆け抜けた記憶

こちらは個別に出している「捨てられない技師と冬月屋敷のお掃除」のおまけになります

できれば先に本編からお楽しみいただければ嬉しいです


・・


おまけ:冬月家異端審問 作家編


技師「これより!異端審問を始める!」

執事「きょ、今日の技師は勢いがあるね」

文官「初めての議長だからじゃねえの?」

学者「・・・議長イコール、審問対象ではない」

探偵「議長は約束された安全地帯だからな。しかし、今日は誰が裁かれるんだ?」

兵士「ともっ・・・技師じゃねえってことは」

技師「本日の罪人はてめぇだ!一葉拓真!」

拓真「なんで俺なんだい!?」

文官「そうだぞ、議長。こいつ、さっきの騒ぎでは目を回していただけで」

技師「こいつ、能力を使う前、どさくさに紛れて、彼方に、キス、要求してた」

五人「・・・」

拓真「そ、それの何が悪いんだい・・・」

執事「ふふふ。失うものは足だけじゃ足りないらしいね」

探偵「冬の川は心地いいぞ・・・寒すぎて死ねる」

文官「学者ぁ、俺途中退席な。銃持ってくっから」

学者「奇遇だね。俺も途中退席。試したい薬があるんだ。そいつ、実験台にしてもいいよね!?」

兵士「・・・不可侵協定を破った人間の末路だ。おとなしく地獄へ落ちろ。有罪!」

拓真「お、俺としてはこの停滞しきった家族もどきの関係から、離脱したいだけで」

拓真「お前らは彼女に選んでもらいたくないのか!彼氏とかいう甘美な響きな称号を得たくないのか!」

六人「裏切り者には死を!裏切り者には死を!」

拓真「話を聞けぇ!」

彼方「・・・何をしているの、貴方達」

執)冬夜「何かな、彼方ちゃん」

探)幸雪「俺たちは仲良く遊んでいただけだよな、蛍」

学)蛍「うん。異端審問ごっこをしていたの」

技)巴衛「今日の標的当番は拓真でな」

文)雅文「それで、俺達が一方的にあいつをいじめているように見えたかもしれないが・・・」

兵)朔也「けっして、悪意があるわけではないからな。ストレス発散でもないから安心してくれ」

彼方「そ、そう・・・」

彼方(この人達、不可侵協定とか、異端審問とか変なことを七人でやり始めたのよね。頭大丈夫なのかしら)

彼方(・・・聞き耳を立てていたけれど、事の始まりは私がきちんと一人を決めなかったことに原因がありそうね。不可侵協定は「冬月彼方との関係をこれ以上進展させない協定」のようだし)

彼方(こんなことをやめさせるためには、やはり誰か一人を決めるべきなのかしら)

彼方(見合い話も多くなってきた。冬月財閥の跡取りとしても、そろそろ伴侶は定めておかないといけないわね)

彼方(・・・あの人は、きちんと受け入れてくれるかしら)


・・


朝比奈巴衛編に関して


うちには「こいつを突っ込んでいればどうにかなる」という人間がいくつか存在します

巴衛はこれですね。こいつ突っ込んでいれば大体の事象はどうにかなるやつです

とんでもないものを出しても、朝比奈謹製とか言っておけば理屈とか時代背景とか考えず「朝比奈またやらかしてやんの」で済ませられますからね


技術力が頭一つおかしいのは、前の回だとエドガーと八雲がいます

・・・しかし、八雲は今よりはるか先の未来を舞台にしています。なので月見を含め、存在していてもおかしくないような存在にはしています


やっぱりおかしいのは活動期間が19世紀末なエドガーと、昭和末期の巴衛

二人は近い時代の出身ですが、エドガーが短命ということもあり、交わることはありませんでした

ただ、それはあくまで「技師」としてです

エドガーと巴衛は「血縁者」。間に娘のシエルが入り込み、親子三代になります


エドガーが亡くなった後、成人したシエルが飛行盤を使用し、世界中を旅していると・・・嵐に見舞われました

事故で落ちた先が1920年代の帝都

そこで、巴衛の父親と出会っています

巴衛の産まれは1923年の4月5日

巴衛が産まれた半年後に、シエルも父親も関東大震災で命を落とし、同時に彼の本名は失われました

隠し設定ですが、本名は「船橋天海ふなばしたかみ」漁師の息子です

まあ、本人は物心ついたときには巴衛でしたので、本名はどうでもよさそうです

そこは鈴とどこか似ていますね

はりとき本編では、巴衛の本名には触れないんですよね。鈴はまだ使うので伏せていますが・・・


その後、火事場泥棒をしていた男に拾われ、その日から彼は「朝比奈巴衛」になりました

そこからは、同じく火事場泥棒で拾われた子どもたちと・・・父親の男が囲んでいた女の子どもたちと奇妙な同居関係を続けた彼は、成人してから軍工場に務め、祖父と同じように兵器を作る技師として日々を過ごしました

そこで、博人と悠翔、そして朔也と巡り合い・・・戦火を駆け抜けることになります

その道中に、倉庫の爆発で博人と死に別れたり、戦場に行った朔也が戻ってこなかったり(実際には能力の暴走で現代に飛ばされただけ)・・・

一家惨殺事件の犯人に仕立て上げられたりと、波乱万丈です


投獄された後、パトロンから依頼を受けた悠翔が巴衛を脱獄させるのが・・・時間旅行の第一段階ですね

冬夜を救う計画に、タイムマシンの製作と巴衛の生存が前提条件なのどうなのよ彼方さん


そうして彼は時間旅行を可能にした飛行船を開発。それからも時代に見合わない発明を続けていきます

そして道中で正二、正太郎と出会った頃は、後に出す「観測記録:星月悠翔編」で触れています

借金苦で金魚食ったり雑草食ったりしてる時期もありました。正太郎以外は頭がいいはずなんですけど・・・一周回って馬鹿なんですかね、この子たち


そして他の面々と出会い、楽しく愉快な終末への旅行をするのは本編「針指す時の終末日」に続いていきます


彼が汚部屋なのは「物を捨てられない」というよりは「何も選べない」

何でも作れるのに、命じられないと何も作れない

自分の意志では、何も出来やしない

部品が足りないからと買い出しにでかけたら、一緒にいる専門外の彼方に「どれを買えばいいんだろうな?」なんて言ってくる始末です

自分が使う道具すら選べないので、買い与えないと買い物すらままならない

それが朝比奈巴衛。ポンコツを通り越したダメ人間です


それでも改善しないのは、彼に「それが間違っている」という人間がどこにもおらず、だからといって彼に致命的な傷を負わせることが出来ていないから

指示されることで楽を覚えている彼は、自分に指示をくれる人に懐きます

彼方に懐いたのも、自分の力量を理解した上で的確な指示をくれる人だから

もちろんですが、離れようとしたら普通に攻撃してきます

「どうして離れるんだよ・・・?お前が指示を出してくれないと俺、どうしたらいいか・・・」を素でやるな


普通にしていれば、良くも悪くも面倒見のいいお兄さんです

そんな彼の問題が解消して、きちんと自分で何かを選べる日ってくるんでしょうかね・・・


しかし・・・彼方組の面々は

冬夜→主人大好き忠犬。害を与える人間は殴り飛ばす

幸雪→主人に別の女の姿を重ねてる病み系探偵。同業者は潰す

蛍→母親の自殺が忘れられず精神科に世話される研究者。ロリコン(彼方に限る)

拓真→脚が動かないことが精神的負荷になってる作家。メンヘラ気味

朔也→強がっているが色々と抱え込んでる。作中最強戦力兼最弱メンタル


・・・と、なかなかに愉快な面々が揃っていますね

「雅文→誘拐先で逞しく生きてた強メンタル狙撃手。唯一の常識人」の字面を見てくれ。彼方組の中ではキャラが薄くなるのは自然の摂理すぎて涙が出てくるよ!

精神と常識が吹き飛んだ人間ばかりの空間に常識人が詰め込まれたら普通に薄くなるんだわ・・・

でも雅文は、このままの雅文でいてね・・・約束だよ・・・?


本日はここまで!また次回の間奏で!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る