間奏:壱岐西時と芳乃の成長記録

・おまけ1:人に擬態した吸血鬼

西時「芳乃を拾った経緯・・・か」

西時「話の中にもあったが、俺はかなりの猫舌で少食。純血の吸血鬼としてはありえない性質を持っているんだ」

西時「・・・とてもじゃないが生きて熱を持っている生物の血をすすることができない。熱すぎる」

西時「それでも、俺にとって最上級の活力を得られる特別な血・・・いわゆる「グローリア」と呼ばれる存在がいる。俺にとっては、それが芳乃だ」


西時「ふむ。なぜ血を吸わないのか?」

西時「確かに疑問としては当然だな。最上級の血が目の前に用意されてありつかない・・・ありえない行為といえるだろうな」

西時「俺はカニバルのような美食家でもないし、芳乃のような食事にうるさい人間でもないが、それだけはいい切れる」

西時「最初はそうしようと思ったぞ。血袋エサとして見て、血が最も芳醇になる時期に吸血鬼化させて・・・永遠に側に置いてやろうと考えていた」

西時「・・・けれど、あいつさ、泣きながら俺に縋り付いてくるんだ」

西時「お兄ちゃん、お母さん、お父さん。どこにいるの?吸血鬼さん、知らない?・・・って」

西時「言えるわけないよな。お前の家族全員、カニバルのやつが食っちまったなんて」

西時「俺はその様子を・・・後ろで見ていたなんてさ」


西時「しばらく育てて頃合いを見ようとしていたんだが、考えは結構甘かった」

西時「あいつ、怖がりなんだ」

西時「毎晩毎晩夜泣きして、おねしょもするわ、ゲロも吐くわ・・・とてもじゃないが不健康な生活を送っていた幼少期の芳乃の血はまずくて、飲めたもんじゃなった」

西時「血を美味くするために健康的な生活を送らせてやって・・・その内に、情が芽生えて・・・血を飲まなくなったから日光に軽く適応し始めて・・・」

西時「今は、ちょっと日光に弱い人間もどきだ。生理用食塩水で生きる次世代ハイブリッド吸血鬼と呼んでくれてもいいぞ」

西時「「俺の」芳乃の為に、普通の事務仕事から異形討伐までこなす!俺だけの愛しいグローリアの為に料理だってするぞ!芳乃がいるから頑張れる!」

西時「今も一緒に寝ているぞ!いいだろう!可愛いんだぞ!俺の芳乃は!俺がいないと眠れないんだ!」


西時「と、まあ・・・普段は見せないだけで、アルテミシアもドン引きレベルにグローリアである芳乃を愛している」

西時「あの子への愛情は誰にも負けない自信があるな!」

西時「・・・でも芳乃は俺といるべきじゃない。人間社会で生きるべきだ」

西時「ウェスタイム・イーラとして向ける愛情は、そこには不必要なものだ」


・おまけ2:最終目標

西時「血を飲まないのは、一種の決意だ。芳乃をきちんと育て上げる。それまで彼女の血を飲まずに過ごす」

西時「そしてあいつが大人になって、一人で歩けるようになったら」

西時「・・・かつての俺ならば、血を報酬によこせと言うだろうが」

西時「このまま、消えようと思っている。このまま血を飲まないでいたら・・・芳乃が二十歳になる前には灰に還るだろうからな」

西時「今は、それでもいいと思っているんだ。あの子は人として、人の中で幸せになるべきだ。彼女が家族を失った一端を見ていた俺が言うべきことではないと思うが」

西時「あの子には、家族を失い、俺に関わって不自由をさせ、カニバルに復讐心を抱いて生きて来た」

西時「誰よりも不幸だった分・・・俺がいなくなった後、人の世界で誰よりも、一番に幸せになってほしいんだ」

西時「しかし・・・あいつ、復讐のことばっかり考えてきたせいで、かなりバカなんだよな。脳筋・・・食欲の権化」

西時「一人にするの、めちゃくちゃ心配だ・・・」


・・・


・壱岐西時編について


こちらも前回の有馬同様、別サイトのイベント用に書いた短編になります

お題は確か「花火」でしたね

花より団子。芳乃なら絶対にそうしてくれるイメージが有りました

復讐を誓った少女と、そんな彼女に寄り添う吸血鬼の・・・ちょっとした日常

西時が芳乃の事を愛しく思っている描写は凄くわかりにくいですが、おまけで明確にしておきました

血を吸うことで生きている吸血鬼の彼が、一人の少女の為に血を吸わないで代用品で命を繋いでいるという選択を選んだことが、凄くわかりにくい愛情表現にしています


芳乃西時と似たような境遇のコンビが芳乃編で登場するのですが、その人間側は万年貧血に悩まされています。相方の吸血鬼が飲みすぎるということもありますが

また、普通の吸血ならともかくグローリアの場合、吸血鬼側が理性を失い、吸いすぎて死に至る・・・というのは珍しくない話

西時の母親もそれでグローリアを失い、灰へ還ることになりました


西時はあくまでも「芳乃が幸せに過ごせること」を重視しています

そのためなら、生きるために食事を我慢することだってできる・・・

自分勝手に動き回り、復讐心を押さえきれず、暴食をこじらせた芳乃

芳乃を思い、渇望を押さえ、食事をしなかった西時

その対比もまた、本編「紅奇譚」に至るまでに必要なものだったりします


・・


本作ができた経緯は確か、方位磁石を眺めているときですね。何かのお菓子にひっついてたやつ

芳乃は「方角」、西時、東馬、北陽、南波・・・彼女とともに行動するメンバーに方角が入っているのはそれ由縁です

復讐がメインの話にするのは最初から

ヒロインは復讐鬼。それなら相棒は鬼にしよう

・・・でも、金棒持ってるのはちょっとな。芳乃脳筋だし。相方も脳筋っぽいのは困る

せや!吸血鬼にしよ!若干インテリ風になるやろ!みたいなノリで西時ができあがったようです

ちなみに西時は一応長い年を生きているので、芳乃の前ではインテリ風ですが、こちらも大概レベルの脳筋です。とりあえず殴っとけ精神をお持ちなのでご注意ください


今回はここまで。また次回お会いできれば嬉しいです!

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