第10話 はじめようか、初回配信2

 採取クエストの目的であるマズイダケ50本採取は、二時間程度であっという間に終わってしまった。合間にちょっとずつ私達の紹介をはさんだものの、セピアの嗅覚のおかげで本来かかる予定の時間の約半分で収穫できた。


 新人冒険者が許されている配信時間はクエスト終了から10分までなので、クエストがスムーズだと配信時間もその分短くなってしまう。まぁ、それでも初日にしては充分喋れたかな。


 視聴者数は出入りしながら徐々に増え、最終的にはスタートを上回る20人が集まってくれた。ウェアアニマルは人間ではないという偏見は受けている反面、ペットのような愛くるしさを好む人も多いようで、可愛いウェアアニマルが活躍する配信を好む人が集まってくれたみたい。


「47,48,49,50! クエスト達成!」

「やったー!」


 多くの数を数えられないセピアの代わりに私がカウントした後、本日の配信は締めに向かっていた。百合営業と言える程の大きなアクションは組み込めなかったものの、コンビ配信と純粋可愛いセピアのキャラクターは充分アピールできた筈。


“仲良しな二人に癒されました! お疲れ様です”

“ウェアアニマルは虐待系多くて嫌だったけど、楽しく見れた!”


「最後まで見てくれてありがとう。今日はあんまりいいとこ見せられなかったけど、次も来てくれると嬉しいな。ねぇ、セピア?」

「うん!」

 セピアの緊張もすっかりほぐれていい感じだ。これなら次回はもっと複雑なクエストを受注できそう。


「残り時間でなんか質問とかあれば答えられるけど、どう?」


“セピアちゃんウェアアニマルにしては言葉流暢じゃない?”


「セピ、ヒューマンのところで働いてたことある」

 なるほど。結構カタコトだと思っていたけど喋れる方なんだ。ハーフ芸能人みたいで可愛いけど私と話していればそのうち慣れてくるのかな。


“前の職場は何?枷の跡あったら見せて”

“それってアズマさんのこと?”

“これからどういうクエスト受注していく予定?”


「んー。今のところ決めってないけど、今日みたいな採取メインかな。私戦闘ダメだし」


“セピアちゃん可愛いですね、ファン登録しました!”


「ありがとう、私のファンにもなってくれていいよ?」


“アズマさんどちゃくそタイプなんで俺は登録しました。好きです付き合ってください”


「がるるる・・・なに、こいつ。やだ」

「セピア!? コメントしてくれたのにコイツ扱いしないの」


“嫉妬?”

“仲良しというよりこれは・・・?”


「あはは、ごめんねぇ。付き合うのは無理だけどこれからも応援してくれると嬉しいよ」

 突然唸ってびっくりしたけどナイス反応。




「じゃあそろそろ・・・」

 色々と予定外の流れはあったけど結果的に20人の視聴者と数人のファンをゲットできたので、初クエストはまずまずの仕上がりと言える。流石に初回じゃギルチャは貰えなかったから今日の夕飯もあの硬いジャガイモもどきなのは残念だ。


 画面端に表示された残り五分の文字を見て、余裕をもって切り上げようとしたタイミング。その時だった。


“あれ? アズマさん右肩ケガしてない?”


 一つのコメントが、流れを変えた。

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