第8話 武器屋<朱色のイオータ>
<朱色のイオータ>は、立派な建物で、店内は武器や防具が所狭しと並べられていた。
「よう、親父!」
「なにしにきやがった、ニック! 今日はベンも一緒か! じゃあ
帰れ!」
「まあそう言わないでくださいよ、トクゾウさん」
ニックが笑いながら返す。
「今日はどうした?」
「実はこの子が売りたいものがあるみたいで。少し見てやってください」
「なんだあ? 坊主、何を売りてえんだ?」
「あ、こんにちわ。ヤマトって言います。よろしくお願いします」
「で? 何を売りてえんだ?」
「実は僕にも価値が分からない物が結構ありまして」
って言ったけど、実は全部鑑定してるんでだいたいの価値は分かってるんだけど。
あんまりすごい武器や防具は出さないほうがいいだろうと判断してリーヴァ様の巣にあった物の中でも量産されているような武器や防具を中心に五点ほどバッグから取り出して机に並べる。
するとトクゾウさんの目つきが変わった。
「ほう、これはなかなかな物じゃ。お前さん、どこで手に入れたんだ?」
「あ、えーっと、それは秘密です」
ヤマトは笑いながら答えた。
「まあいい。値段はこれでどうだ?」
「値段はよくわからないのでお任せします。できれば今回は一括で買ってもらえると助かるんですけど」
ヤマトはそう言ってトクゾウさんを見た。
「ほう、なるほど。じゃあ値段はこうだな」
トクゾウさんはしばらく考えた後、値段を提示した。
え、それはちょっと高いんじゃない?
大丈夫なの?
心の中でそう思ったが、表情に出すことはしなかった。
「これでいいのか? この価格ならこっちが大儲けだぞ。ここは高級品専門店だ。その武器や防具は、それなりに価値がある。まあ、お前さんには分からないだろうがな」
トクゾウさんはニヤリと笑って言った。
そんなことはないんだけど。
実はトクゾウさん、いい人なんじゃないだろうか?
僕が困ってそうだったから色を付けてくれたんだな、きっと。
「良かったね、ヤマト君」
「やったなヤマト、今日はとりあえず宿をとって休んだ方がいいぞ。冒険者登録は明日な」
「はい! ありがとうございます! ニックさん、ベンさん、トクゾウさん! じゃあ、僕は宿をとってきます! 行こう、リーヴァ!」
「キューウ!」
「おいおい待て待て! 一緒に行ってやるから走るなよ!」
ベンさん、追いかけてきてくれた。
なんていい人たちなんだろう。
さて、宿をとって、今日はゆっくり休んで明日は冒険者に正式に登録だ!
▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲
「おい、ニック。ありゃあ何者だ?」
「やっぱりそう思いますか?」
「あたりめえだろ、これを見ろ。この武器と鎧は百年前のアルテュールの乱の時の物だぞ。こんなもんが新品同様に出てくるなんざ聞いたことがねえ」
「そりゃ本当ですか? 親父さん」
「ああ、こいつは何かあるな。ニック、しばらくヤマトに貼り付けよ。こんなもんがポンポン世に出ちゃあ大事だ」
「ええ」
「それからあの竜はなんだ? まるでリーヴァ様じゃねえか。どうなってんだ?」
「わかりません。でも彼はあのドラゴンをリーヴァって呼んでいました。しかしヤマト君に悪意などは感じられないんです。先ほどギルマスも言ってましたが、登録前の鑑定でも特に何も出なかったと」
「ふんっ! まあ、本人に悪意がないんなら、悪意の方を近づけるなよ」
「ええ、ギルマスもそのつもりで俺たちをつけたんでしょうからね」
「ま、なんにせよ、面白そうな奴がペイドルに現れたもんだな、ニック」
「面白がっていられるうちはまだいいけどね。きっとそのうち笑ってられなくなりますよ、親父さん」
ニックの予言は次の日に現実のものとなるのだった。
(プロローグ完)
異世界転移でドラゴンテイマー?! ~蒼竜と異世界の渡り人~ UD @UdAsato
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