食べたいな

 まただ。

 暗闇の中で、視線を感じて瞼を空ける。


「…………」


 お姉ちゃんが、ベッドの横に座っていた。

 座って、ジッとボクを見ている。


「可愛い」


 ぷに、ぷに。

 指で頬を突かれる。


 お姉ちゃんは、ボクの頬を優しくつねったり、指でグリグリと押したりするのが好きなようだった。


 起きている時にも、ちょくちょく同じことをしてくるけど。

 寝ている間は、ずっとだった。


「リクくんは、お姉ちゃんが好き?」


 ボクは寝たフリをして、答えない。

 お姉ちゃんだって、寝ていると思って聞いてるんだろう。


 もちろん、嫌いなわけはなかった。

 変な所があるけど、やっぱり優しくて、不思議な雰囲気がある所には惹かれてしまう。


「ぷに、ぷに」


 唇を摘ままれ、ボクは頬が引き攣るのを我慢した。


「――食べたいなぁ」


 なんてことを言いながら、お姉ちゃんはずっと顔を弄ってきた。

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