学友

 学校に着くと、お姉ちゃんとは生徒玄関で別れた。

 ボクは上履きに履き替え、三階の教室に向かう。


 一年C組。


 そこがボクの教室だ。

 扉を開けて、窓際の一番前の席に移動する。

 移動の途中で、後ろの席にいる友達に挨拶をした。


「おはよう」

「おぉ。リク」


 片手を挙げ、友達のハルトくんが笑った。


「もうちょっとで夏休みだな。予定とかあんの?」

「んー、特に」


 友達のハルトくんは、とても陽気な男子だった。

 身長がスラリと高くて、茶色に染まった髪は、日を浴びてキラキラと輝いている。

 当然、女子の人気も高い。


「じゃあさ。キャンプ行かね?」

「キャンプ?」

「うん。本格的なもんじゃなくてさ。近場の山にキャンプ場あっから。そこで、一泊しようぜ」


 にっと笑って、ハルトくんが言った。

 ボクが返答に迷っていると、横から数人の女子と一緒に、クラスの女子が声を掛けてきた。


「いいなぁ。あたしも行きたい~」


 同じクラスのサナさんだった。

 小柄で、全体的におっとりとした雰囲気の女子だ。

 後ろ髪を高い位置で留めているのが特徴。


 話しやすくて、優しいので、ボクはサナさんに母性のような物を感じていた。


「んじゃ、一緒に行く?」


 すると、サナさんの周りにいた女子達も「私も!」と声を上げた。

 こうやって賑やかにしていると、次から次へとハルトの周りには、人が集まってくる。


 ボクは一歩引いたところから、ハルトくんが楽しげに笑う姿を見るのが好きだ。


 元々、がっついて話しかけるタイプじゃないし、これぐらいがちょうどいい。


「リクくんも行くんでしょ?」

「うーん……」


 キャンプと聞いて、何を準備すればいいのか分からない。

 サナさんがニコニコと笑いながら、首を傾げる。


「行こうよ~」

「う、うん」


 甘い香りがして、ボクはドギマギとしてしまった。

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