姉の観察

 お姉ちゃんは美人だ。


 弟のボクが言うのもなんだけど、血が繋がっていないからこそ、姉の容姿が綺麗であると分かる。


「もう夏服なんだ」


 姉と初めて会ったのが、中学二年生の夏。


 それから、二年が経った。


 ボク――佐山リク――は、高校一年生になった。

 姉と同じ学校に通い、同じ通学路を歩いて登校している。


 洗面所で二人並んで身だしなみを整えると、一緒に食事をして、一緒に外へ出る。


 日の下に立つと、姉が異様に白いという事がハッキリと分かった。

 でも、他の人は気に留めていない。


 バス停に行くと、同じ学校の生徒をたくさん見かけ、そこでは気軽に「アオイさん、おはよう」と挨拶をしてくる。


 身長の低さを利用して、ボクはお姉ちゃんの陰に隠れる。


 ボクはずっとお姉ちゃんを眺めている。

 最早、観察と言っていい。


 みんなは、「あっつぅ」と服を引っ張って、体を冷やそうとしている。

 なのに、お姉ちゃんはケロッとしていた。


 汗一つ掻かないのだ。


 バスに乗ってる間、ずっとお姉ちゃんを見ていると、不意にこっちを向いた。


「リク」

「なに?」

「人の顔をジロジロと見ないの」


 怒られたので、「ごめん」と笑いながら謝った。


「おバカ」


 指で頬を突かれ、照れくさくなる。

 そんなボクを見て、お姉ちゃんは「ふふっ」と小さく笑った。


 笑っているのか。

 笑っていないのか。

 分からないくらい、薄い笑みを浮かべて、ボクの頭を撫でてくる。


 お姉ちゃんは、どこか変な気がするのに。

 でも、上手く言葉に言い表せなかった。

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