お姉ちゃんの朝

 朝、起きて部屋を出る。


 二階の突き当りに位置したボクの部屋。

 そこから一階のリビングに向かう際、ボクは必ず真ん中の部屋に声を掛ける。


「お姉ちゃん。朝だよ」


 返事はない。

 別に無視されてるわけではない。

 かと言って、引きこもっているわけでもない。


 声を掛けて、階段を下りていく。

 ちょうど、姉の部屋が見えなくなった位置で、『ガチャ』とドアの開く音が聞こえる。


 これがいつもの朝だ。


 階段で立ち止まり、軽い足音に耳を澄ませる。


「おはよう。リクくん」


 振り返ると、お姉ちゃんが立って見下ろしていた。


 真っ黒い髪の毛は、整えなくてもサラサラとしていて、肌は相変わらず、真っ白。


 だけど、血管が浮き出るような白さではなかった。


 ボクより身長は高いけど、全体的に細身のお姉ちゃん。


「おはよう」


 お姉ちゃんの真っ黒な目を見つめ、ボクは挨拶をする。

 目は白い部分が見えず、全部真っ黒。

 たぶん、目が小さいのかな、と勝手に思っている。


 でも、お姉ちゃんがボクを見ている事は、黒目玉しか見えなくても、何となく分かった。


 お姉ちゃんが下りてきて、隣に並ぶ。

 すると、頭を優しく撫でられた。


「寝ぐせ。ついてるから」


 手ぐしで整えられ、「うん」と先に下りたお姉ちゃんに続いた。

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