第47話 戦い
学校に着き、校舎の中に入って廊下の角を曲がろうとした時、私は咄嗟に身を隠した。
廊下の奥の方に残り香2名に取り押さえられたシャラがいたのだ。
私は教室の出入口をうまいこと使って彼らの背後に回り込むと、持っているドライバーを2人の後頭部にブチ当てる。
「「アギャァァァ!!!」」
残り香らは断末魔と共に消滅していった。そして、支えが無くなり、膝から崩れ落ちるシャラの手を取る。
「大丈夫ですか?!」
「サリナ様……はい……大丈夫ですよ。そちらも、どうやら回復したようですね」
「うん……迷惑かけてごめん……」
「いいえ、そんなことはありませんよ。では、行きましょうか」
シャラはゆっくりと立ち上がると、私と一緒に武道場裏に向かって歩き出した。
武道場裏に着くと、そこには光り輝く天悠門と、5人の神達の遺体を捧げて鍵をこじ開けようとするルシファーの姿があった。
彼女は私達の方を振り向く。
「来たか。どうやらそっちには腕利きの技術者がいるようだな」
「えぇ、そのようですね」
ルシファーの威圧的な声にシャラが応答する。
「……まぁいい。殺す」
ルシファーは右手の平をこちらに向けてきた。私とシャラは戦闘態勢に入る。
「逆竜」
「引碧!」
途端に衝撃波が私達の方へと唸ってきた。シャラは引碧でルシファーを挟むように攻撃を避けると、彼女目掛けて全力で走る。
「サリナ様! 羽を攻撃してください!」
「わかりました!!」
「阿保なのかお前達は。そう易々と攻撃が通ると思うなよ」
ルシファーは自身を黄金の血で包み、防御力を上げていく。すかさず私は落ちていた大きめの石を拾ってぶん投げる。
石は羽の付け根に当たり、血の巡りを一時的に塞き止めた。
「ナッ!」
彼女がまさかの出来事に動揺している隙にシャラが手刀を振り下ろす。
「引碧!!」
急速に加速された手刀は、異次元の重さと切れ味を以って羽を切り裂く。
「アァァァァ!!」
付け根からは血が溢れ、彼女は悶え叫んでいる。
私は、間を空けずに創乱を発動させる。
「赤よ、天空を紅に染めろ! 創乱!!」
前方が黄金色に輝く。光の中から出てきたのは鈍く煌めく槍だった。
私はここに来るまでの間に気が付いた。創乱は、何が出るのかは誰にもわからない。だけど、どんな部類の物を出すかはある程度絞ることができるということに。
今までの私はここで地獄に浸っていただろう。でも、今は違う。私は戦うんだ。他でもない、自分自身のためにも!
私は勢いそのままに槍で彼女の羽にド突く。
「アグァァァァァ!!!」
羽は見事にもげ、4枚あった翼は気が付けば半分にまで減っていた。
ルシファーは少々息を荒げながら私達を睨む。
「フゥ……フゥ……貴様らぁ……」
や、やった! 向こうの力は半減した。今ならいける!
そう思った矢先、彼女の口から言葉が発せられた。
「調子に乗ってるんじゃないよ……蠅どもがぁぁぁ!!!」
次の瞬間、目を開けられないほどの眩い爆発が起こった。光はあっという間に辺りを包みこみ、周りにあるもの全てを殴り壊していった。
そして、私は気が付けば建物の残骸に首だけ凭れ掛かった状態で倒れていた。
「……ァ……ァレ……?」
不意にだらしない言葉が口から飛び出す。
頭が痛い。手足が動かない。視界には、右手を銃のような形にして向けてくるルシファーの姿があった。
彼女は私達を鼻で嗤った。
「傲慢で愚かなる人間は神には勝てないのだよ。自分が何者であるかも理解していない傀儡が」
彼女の指先が白金に輝きだす。同時に私の意識が遠のき始める。
嗚呼……死ぬ……。
何故か気持ち的に軽く受け入れてしまった私は、ゆっくりと瞼を閉じようとした。耳には光線が放たれたような音が入ってきた。
終わった……。
「おい! 閉じるなバカ!!」
突然の言葉に思わず私は目をかっぴらぐ。するとそこには、雲で光線を吸収する雲子の姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます