第42話 穹を奪え
それはまるで台風並みの勢力でもあり、スコールのように短い期間のものではあったが数人を吹き飛ばすには十分すぎるぐらいの威力であった。
雲の壁を作って対応したものの、あえなく私達は地面から足が離れてしまった。その時横を見てみると、神はこちら側と同じように宙を放り投げられていた。
「キャァァァァ!!」
私達の身体はもの凄い勢いで廊下へと突き進んでいく。窓は次々とヒビが入っていき、机や椅子などがこちらの方へと飛んでくる。私達はそれを純白の膜で防いでいた。
「グォォォォォ!」
奴は飛来してくる意志のない雑兵の対応に追われていた。その様子を視た雲子が、すかさず能力で
「逃さない!」
彼女は手のひらほどの氷塊を彼に向けて発射した。獰猛に吠える風に乗って宙を挺進していく。
氷塊に気付いた神は、咄嗟に左腕を使って防いできた。しかし、体に当たるのを拒んだ代償に巨大な瓦礫が彼の左膝関節に衝突した。
「ガァァァァァ!!」
彼は悶えながら廊下の壁に叩きつけられていく。私達は雲をクッションにすることで最小限の被害で事なきを得た。
風が止み、眼を開くと視界に躯体が露呈した天井が入ってきた。砂埃が舞い、礫のようなものが重力に従って落ちてくる。
落下先には膝を押さえながら横たわる空気の神がいた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
彼の荒れっぷりを見た私は、両手を前方に構える。
ここしかない!!
「荒れろ倦ねろ木霊せよ。
黄金色に輝く景色。収束後に現れたのは青いゴムチューブであった。
私は左手を握りしめ、冷ややかな目でそれを見つめる。
「……ふざけんな!!」
「うるさいわよサリナ。早く態勢整えて」
雲子は淡々と言葉を並べてきた。私はチラッと目を横に向ける。そこには、割れた蛍光灯から溢れる漏電を雲に吸わせている彼女がいた。
「あなた、電気を食べたことはあるかしら」
彼女は煽り口調で神に問う。彼は困惑と憤慨が混在した表情で返す。
「はぁ?! 妄言吐いてんじゃねぇぞ!!」
「そ。サリナ、走って」
「え? あ、うん!」
私は足元に落ちていた尖ったガラスを右手で拾いながら奴に向かって駆けだす。
「
宙で裂ける空気が肌を刺してきていると、稲光をまとった雲が私の頬を猛進していった。
雷雲を見た彼は、体を動かして避けようとした。がしかし、膝が痺れたのか初動が一瞬遅れてしまっていた。
トロトロしている間に雷雲は彼の脇腹にクリーンヒットした。光は体中を趨っていき、やがて地面へと身を還らせていく。
奴の
好機!
私は右手を振り被ると、運動エネルギーを全乗せした状態で御紋に向けてガラスを唸らせていく。
鋭い先端は彼の胸部に刺さった。されど深く刺すことはできなかった。皮膚がありえんほどに硬かったのだ。
おいおいおいおいどうなってんのよこれぇ! 皮膚の厚みと硬さが他の神と一線を画してる。このままじゃマズい!
私は勢いそのままに全体重を乗せて傷口を抉りにかかる。奥に奥へと入り込んでいくいると、なんとガラスが途中で割れてしまったのだ。
同時に奴も目を覚まし、こちらのことを睨みつけてきた。
「阿婆擦れごときが痛みを与えるなど……あってはならんのだァァァ!!」
まばたきする間に剛拳が私の顔面を襲いにきた。彼は鬼神の相を成している。
不思議と私の中に恐怖という文字は存在しなかった。
「ごちゃごちゃ言ってないで自分の頭でも守ったらどぉ?」
気が付けば、振り抜いた左腕の先でゴムチューブが床を蹴っていた。
「ナッ、ガァァァ!!」
「さっき右腕の一巡遅れで左も動いてたのよ脳筋が!」
ゴムチューブは彼の左目に直撃したようで、奴はそこを押さえながら悶えていた。御紋に入った浅い斬り傷からは血が滴っている。
「貴様らぁぁ……」
「サリナ、どいて!」
「え?」
私が不意を突かれた声を出した途端、私の耳の横をすれすれで氷が通り抜けていった。
後方を見てみると、腹部に小さな氷塊がある状態で仰向けとなっていた彼の姿があった。
そして、吹き飛ばされた影響で私達との間にそれなりの距離ができてしまった。
「ガハッ……ハァ……ハァ……力が半減してしまった……あんな奴らに……やるしかねぇなぁ……」
彼は額を押さえながら起き上がる。その時雲子が大声を上げた。
「サリナ、畳みかけるわよ!」
「了解!」
私はゴムチューブをポケットの中に無理やり押し込むと、落ちてた手ごろな石を拾い上げる。そして走る彼女を追いかける。
すると突然彼は瞼を閉じると、両手を静かに合わせてきた。
「……空晶の理
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