第27話 ここらが正念場
電気の神は、怒鳴りながら私の方へと突撃してきた。
「もうあっちは諦めた! 弱そうなお前からだ!!」
「ちょ、こいつ!!」
私は咄嗟に机の上に飛び乗る。
「跳び逃げしてんじゃねぇぞぉぉ!!」
すると奴は瞬時に机の下に潜り込むと、ムカデのように床を這いずり回っていく。
私は全方位に集中力を分散させる。
「ッ!!」
一体どうやったらこんなに速く動けるのよ! 今はまだ教室中にある鉄のおかげで電気が吸い取られているから遅いけど、これがもし他の場所で戦っていたらと考えると鳥肌が止まらない。
かと思った次の瞬間、突然足元が発光した。危機を感じた私は、反射的に隣の机に飛び移る。
直後、乗っていたところが跡形もなく爆発していった。同時に、木片や鉄の一部などが飛散していく。
「ナッ!!」
それを視た私は両手を頭に添えながら無意識にしゃがみ込んだ。残骸は私の頭上を駆け抜けていくと、部屋の窓や黒板などに直撃していった。
その威力は凄まじく、教卓の方からは爪で板を傷つけた時のような音や、廊下側の窓や木枠をすべて破壊していく音を響かせていく。
私は両手を震えさせながら顔の前に持ってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」
マジで死ぬ。冗談抜きでお陀仏してしまう。何でよ。何で急にこんなことになったのよ! 藪から棒に標的を私に変えてからにもぉぉ!! あの人はどうしたのよ!!
私は荒れる息を整えながらシャラの方を向く。彼女は体の前で手を組んだまま静止していた。
その様はできるウーマンのそれであり、美しい直立を決めながらこちらを視つめていた。
「さぁ、相手の特性を見抜いて勝利を掴むのです」
「ファァァァァ!!!」
彼女の言葉に私は思わず発狂した。
いや待て待て待て待て! 何でさも当然のように監督面してるのよあの人は!! おかしいでしょ! イカれてるよ!
あれか? これが俗に
そして私は視線を電気の神に移す。
「おうおう何喋ってんだよクソガキがぁぁ!!」
彼は叫びながら床中を高速で徘徊していた。私はそれを凝視しつつも脳内をフル回転させる。
今は仕方ない。生き残ることに全力を注ごう。まず、奴の能力。あの赤いのは特殊なやつだ。間違いない。重要なのは、ずっとそれを出すことができるのかだ。
明らかにあれは燃費が悪い。だって通常の時よりも溢れ出る量や速度が桁違いだもん。そしてもう一つ。
瞬間、机が赤く光りだした。私は咄嗟に近くの足場に乗り移る。すると元居たところは粉々に爆発した。私は直後、先程と同じ行動を取る。
そして考える。
そう、まさにこれだ。これ程のことをやっておきながら奴の体は傷つくことなく幼稚園児のように元気に走り回っている。
このことから推測するに、赤いのは鎧の効果も果たしているのだろう。鎧を作ろうものなら莫大な電力が必要となる。そう、世界中の首相達が憤慨するような物凄い量のエネルギーが。
つまりは、そんなコスパ最悪の代物を放出し続けるなんて不可能。だから思うに、奴は赤の電気と普通の電気を光速で切り替えながら使用しているんじゃないかと私は考える。
でもこの案はまだ仮説。だからこれから証明実験をする!!
途端、立ち上がった私は、窓際に向かって机上を全力で跳ね始めた。彼はジグザクに動きながら私を追従してきた。
「なんだぁ? 外に逃げる気かぁ? 甘ぇぞメス餓鬼!! 俺様の
私が目標地点に到達しかけた直後、奴は私の眼前に姿を現した。彼は、右拳を高々と掲げていた。
「死にさらせ愚者がぁぁ!!」
攻撃が私の顔面を潰しにかかったその時、突然彼は窓の締め金具に吸い寄せられていった。
「!!!」
奴は呆気にとられた顔をかましていた。その間に私は、足元に落ちていたバット形状の木片を握りしめると彼に向かって殴り掛かる。
「私に愚者って言うのは無礼講だよ!!!」
私はバットを思いっきり振り回す。当たった感触はした。でも、それ以降腕がピクリとも動かなくなった。
木片に沿って目線を辿っていくと、頬で私の攻撃を受け止めている彼の姿があった。
奴は赤色の電気を左拳に集中させながらこちらを睨みつけてきた。
「俺様は神だ。なのにこのざまだ。てめぇにはこれからぁ……三途の川の向こう側を視せてやる」
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