第25話 光と力
頭ではわかっていても体が追い付かない。人によっては言い訳やら御託やらと言う者がいる。
私はそうは思わない。なぜなら、不屈の精神が問題を解決しようと必死になって藻掻いていると考えているからだ。
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突然現れたそいつは黄色い髪と茶眼をしていて、背は170センチぐらいの青年だった。イケメンとまではいかないものの、それなりによさげな顔面偏差値も持ち合わせている。
「えぇっと……シャラ。この人は誰ですか?」
私は隣に佇んでいるシャラに解説を求めた。
「彼の名はライグラス・ニャルパーナ。電気の神です。天界で最も早いと自称しているナルシストでもあります」
「そこぉぉ!! 俺様はナルシストじゃねぇ!! それと、俺様の前でニャルパーナなんて
奴はこちらを指差しながら鼓膜を強烈に攻撃してきた。シャラは呆れた表情をすると、私に小声で話しかけてきた。
「ドラガルマというのはですね、こちらの世界の言葉で無双状態を意味します」
「え……それって本当ですか?」
私は引き気味の声を発した。それに彼女も同じような声で返す。
「本当です」
「うわぁ……」
私は憐みの眼をしながら彼を凝視した。
あいつ、白谷に似てるなぁ……彼もいつも自分のことテンサイって呼んでるし。何だろう。可哀そうな人……いや、可哀そうな神だなぁ……。
とか思っていると、奴は私を指差し怒鳴りつけてきた。
「お前今俺様のこと馬鹿にしたな!! 許さねぇぞこの阿婆擦れがよぉ!!」
「ナッ! あなた私のことを……ッ!!」
彼に反論してやろうとした次の瞬間、奴は強光を放ち始めた。私はあまりの煌めきに目を瞑ってしまった。
またこれ?! もう止めてくんないかなぁ! そろそろ私の眼が限界なんですけど!!
心の底から怒りが沸々と湧き始めた時、向こう側から大声が聞こえてきた。
「よくも俺様のことを貶してくれたなぁ!!
途端、瞼越しに視える白い世界がより一層濃くなり始めた。同時に、私の
反射的に両腕で眼の周りを覆ったその時、突如として世界の視え方が元に戻った。ゆっくりと瞼を開けると、私の一歩手前にシャラがいて、電気の神は壁に叩きつけられていた。
「ゲフォッ!!」
奴はそのまま仰向けに倒れていく。彼の体は電気で包まれていた。すると、シャラは落ち着いた声を発した。
「サリナ様。彼は体内に存在する電気を何十倍にも増幅させたものを身に纏っています。それを飛ばして攻撃してくる可能性がありますので今のうちに光に目を慣らさせておいてください」
シャラは姿勢を正し、体の前で両手を組みながら言った。彼女の冷静な佇まいに対して一瞬憧れの気持ちを抱いたが、すぐに脳内は理解不能で埋め尽くされた。
「え? あの、シャラ? あなた一体何をしたの?」
私は彼女と彼を交互に視えながら訪ねる。
「あれは私の能力です。私は、対象と自分との間にある引力と斥力を操ることができます。前者を操れば相手を私の方に引き寄せることができますし、後者を操れば相手と私との距離を引き離すことができます。ストーカーにあった際に便利ですよ」
「あ、そうなんですねぇ~」
シャラほどの地位の人でも犯罪者は付きまとうんだ……命知らずな奴もいるもんだ。まぁ、こんな容姿してたらしょうがないか。どっかの雲とは大違いだ。
私は泳いでいた眼を落ち着かせると、シャラの方を傾視した。
「と、ということは、あいつを吹き飛ばすことができたのは……」
「そういうことです。ではサリナ様。私がまず最初に攻撃を致しますので、創乱での援護のほどよろしくお願いします」
と、シャラが言った時、派手な爆音とともに電気の神が起き上がった。彼の足元を視ると、サッカーボールくらいの大きさのクレーターができている。
「もぉぉブチ切れた。ぜってぇ潰してやるよぉ、てめぇらの目玉を!!」
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