第18話 強運
ガリャドォォォォォン!!!!!
気が付いた時には、鼻の中に木が焦げる匂いが入ってきていた。
匂いはすぐ近くから漂っており、左手を少し動かすとそこで木が折れる音がした。
手の平に屑のようなものがこびりついた直後、付近から雲子の叫び声が聞こえてきた。
「サリナ、創乱よ! 創乱で灯りを創って!! 懐中電灯よ!!」
「あ、灯り?! こんなポンコツ能力でピンポイントなものが出るわけないじゃない!!」
「固定概念に囚われていては駄目よ! 常識は覆すためにあるのだから!!」
「急に何言ってんのあんたは!! ……いいわよ、やればいいんでしょ?!!」
吐き捨てるようにそう叫ぶと、私は両手を合わせながら呟き始める。
「夜の峠を越えし革命の
眼前が黄金色に光り輝く。現れたのは大型の懐中電灯だった。
「え?!!」
私は突然のことに思わず声を出してしまった。
だってそうでしょ。まさか出るとは思いもしなかったのだから。
ま、マジか……確率が不安定とはいっても、望んだものが出る可能性はあったわけで……いや、そんなことよりこれを点けないと!
私は手探りでボタンらしきものを探し始めた。そしてデコボコしたところを見つけた瞬間、反射的にそれを押し込んだ。すると、灯りが暗闇を直進していった。
「や、やった!」
すぐさま私は周囲を灯りで照らしていく。荒ぶりながら上下左右を照らしていると、ロボットと組み合っている雲子を発見した。
「雲子!!」
「できたのね……よかった……フンッ!!」
彼女は、私を視るなり柔らかい声を出すと、ロボットの腹部辺りに左ストレートを叩き込んでいく。
雲子の左手の甲は赤く変色したが、ロボットは数メートル先まで吹っ飛んでいった。
離れた場所でロボットと地面とが触れ合っている。
「どうよわっちの拳はぁ! 全力でやったから装置の1つや2つ壊れてるはずよ!」
彼女は声高々に叫んだ。とてもスッキリとした顔をしながら。
すると、倒れていたロボットが起き上がると、体中から不規則に電気を放出させながら首を高速で回し始めた。
「ピピッ、キタイノソンショウヲカクニン。コレヨリ、キンキュウゲイゲキタイセイニイコウスル。ピピダピィィィ!!!」
途端に変則的に溢れ出ていた電流がやつを囲うようにほとばしり始めると、目の前が一瞬白の世界に包まれた。
私は思わず目を瞑り、懐中電灯を持っていない方の腕で瞼を覆い被さる。
一瞬の後、ゆっくりと眼を開けると、そこには電気の鎧に実を包んだロボットがいた。周囲の闇は、ロボットの鎧のせいで払拭されていた。
「ピピ、ピピピ」
ロボットは機械音らしきものを出しながら雲子の方を向き始めた。彼女はまだ完全に開眼していなかった。
「!! 雲子、今加勢を!!」
私は数メートル先にいる彼女のところまで走っていこうとした。がしかし、一歩踏み出した辺りで頭の中が気持ち悪くなると、その場に座り込んでしまった。
私は思わず手で口を押さえる、
「うっぷ……」
これは……まるで乗り物酔い……き、気持ち悪い……まさか、ロボットが発してる過剰な光のせいか……立て……ない……。
「はぁ……はぁ……」
なんとか立とうとしても、足や手が震えてしまったりすぐに倒れたりしてしまう。耳鳴りは止みならず、視界は焦点がまったく合わなくなってきた。
まともに動けない状態となってしまったのだ。
すると、二重にも三重にもブレて視えるロボットがこちらに迫ってきた。
「ピピダピィィィ!!! ジャクシャ、ハッケン。コレヨリ、マッサツヲカイシスル」
次の瞬間、ロボットの両目と両手が赤く光り始めた。私は、まばたき1つする間にそれがビームだということを理解した。
そして思った。
「あ、死んだ……」
口に出ていたのはわかっていた。でも、今更気にしても仕方がないと思った。心の奥底に不気味な闇界ができていたのがわかった。それは、少しでも刺激したら爆発しそうなものであった。
閉眼しよう。そう思った時、向こうから僅かだが叫び声が聞こえてきた。
「諦めないで! サリナが死ぬのはここじゃない!!」
雲子だった。彼女は全身真っ白な状態でロボットの背中に飛びつくと、両腕で首部分を縛りつけていった。
だが、相手は痛覚のない機械。いくら首部分を締め付けたところで痛いと思うことはない。
そして、やつは今体に鎧をまとっている。
「雲子、で、電気が!」
マズい。このままだと彼女が死んでしまう。どうにかしないと!!
かなり深刻な声を発した私だったが、返ってきた彼女の返答は、実に余裕のあるものであった。
「大丈夫大丈夫。この曇装には蓄電能力があるから。それより、危ないから屈んどいて」
そう言うと彼女は、右足を大きく振りかぶった。私は大急ぎで地べたに倒れ込んでいく。
雲子の右足にはどんどんと電気を帯びた雲が集まっていき、いつしかそれは雷雲となってやつの前に顕現した。
「イジョウジタイハッセイ!! イジョウジタイハッセイ!!」
ロボットは目の部分だけを後方に回転させ、両腕をありえない角度で曲げていくと、両手を雲子の顔面に向けた。
赤い光は、私に向けていた時よりも何倍もの光を放っていた。
だがその直後、彼女は股関節が曲がる限界まで上げた足を一気に振り下ろした。
「さっきからピーピーピーピーうるさいのよ! わっちの蹴りで吹き飛んでしまえ!
次の瞬間、ロボットの胴体が私の頭上を高速で駆け抜けていった。
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