『アイリの卒業と、ディアの求婚』(3)

それから数日後。

アイリは王宮の城の自室に、親友の真菜まなを招いた。

明るい茶髪で、アイリと似たボブヘアの、しっかり者だ。

彼女は悪魔ではなく、母親が人間で、父親が死神。

見た目は人間と変わらないが、魔法が使えるという点では悪魔と同じ。

アイリと真菜は中学・高校と同級生で、一番の仲良しだ。


アイリの部屋は、アンティーク調の豪華な家具に囲まれて、広々としている。

部屋の真ん中に敷かれたフワフワの絨毯に座り、二人は女子トークを始める。

真菜がアイリを見て、まず気付いたのは……


「あれ?アイリちゃん、そのペンダントって?」

「あ、これ?ふふ……実はね……」


アイリは胸元の赤い宝石を指先で触れ、照れながら続きを口にしようとした。

だが、先に真菜が言葉を続けてくる。


「もしかして、ディア先生からプロポーズされたの?」


真菜は、ディアを『先生』と呼ぶ。

ディアは、魔界の高校で『魔法』の授業を担当する教師だったからだ。

しかし、真菜の言葉に驚かされたのは、アイリの方。


「え、えぇっ!?真菜ちゃん、なんで分かるの!?」

「そのペンダントから、ディア先生の魔力を感じるから。良かったね、アイリちゃん。おめでとう」

「あ、ありがとう……」


魔界では、婚約や結婚の際に『愛の証』として、装飾品に魔力を込めて贈る。

一般的には、その魔力が誰のものであるかまでは判別できない。

だが、真菜はペンダントを見ただけで、魔力の主まで見抜いてしまった。

さすが、父親が『最強の死神』と呼ばれているだけある。

そしてディアも『最強の魔獣』と呼ばれているだけある。

宝石に込めた愛という名の魔力が強すぎて、見抜かれてしまうのだから。

それを察した真菜は、身を乗り出してアイリに迫る。


「ディア先生って奥手そうに見えるけど、今はどうなの?」

「う、うん。高校卒業してからは、ディアってば、その……すごいの」

「えぇ!?何それ!?何がすごいの!?そこ、詳しく教えて!?」

「いや〜〜!真菜ちゃん、もう、やめて、恥ずかしいからぁ〜〜!!」


アイリは真っ赤になって、真菜の尋問から逃れようとする。

真菜は普段、どちらかと言えば落ち着いていて、何事にもちょっと冷めている。

そんな真菜が興奮するほどに、アイリとディアの恋の行く末が気になるのだ。

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