第25話 謁見前
城入り口に居る兵士達が。
「止まれ、城に何の用だ?」
1人の兵士が不審者を見るような目でこちらを見ながら聞いてきた。
「私はアイアンフォース所属のシェリーです。本日謁見の予約をしてあります」
「アイアンフォースの人か聞いているな。付いてきな」
「はい」
兵士を先頭に、シェリーと自分はユキを抱き上げついて行った。
城の中を歩いていて思う、これまで欧州の城とかテレビでしか見たことなかった、テレビのように豪華そうな装飾品があるのかと思っていたが、そういったものは無く質素な廊下だった。
「何をキョロキョロしてるの?」
シェリーが自分の様子を見て聞いてきた。
そんなにキョロキョロしてたかな?とか思いながら。
「いえ、こういった場所って装飾品を飾らないのかな?と思ったので」
「そうね、他の所だとそうだけど、ここの王様は、そんなものにお金かけるなら、民の為にお金を使うべきと思っているみたいよ」
「その通りですな、この国の貴族も王を見習い贅沢はあまりしないのが風習になっていますな」
シェリーの後に、先導している兵が教えてくれた。贅沢をあまりしない風習か、それはそれでいい事な気がするが、その分どこにお金が行ってるんだろうか?
「その分はどこにお金が行ってるんですか?」
「この町に来て日が浅いんだっけ?」
シェリーが聞いてきた。4月1日に、この世界に来たとなれば今は6月24日だし、王都にいるのは1カ月チョットと言ったところだろうか?
「1か月くらいですかね?」
「そっか、町を見て回ったりはした?」
「してないですね」
「なら知らなくてもおかしくはないかもしれませんな。この国は他国の町と比べると、スラム街がないんですよ」
日本にスラム街みたいな物があるかどうかと問われたらホームレスたちが集まってるところがそうなるのかとか思いつつも、この世界なら珍しい事なのかなと思った。
「へぇ、そこに流れてるんですか?」
「えぇ、狭いですが仮設の住居と1日2食の配給がどの町でも行われています。あとは彼等に出来る事を仕事にしてもらっているんですよ」
他国の状況とか他の町の状況が分からないけど、そう言うという事は、他では見られない事なんだろう。
「へぇ、凄いですね」
何というか、福祉国家の先駆けとでも言うべきなのか?
それでも、スラム街の人達を切り捨てずにそちらにお金を回すというなら、良き王なのだろう。
「そうでしょ、私はこの国で生まれた事を誇らしく思うわ」
シェリーがない胸を張っていた。
「我々もそうです。そんな王が納める国だからこそ仕える事を誇らしく思っています」
「へぇ、この国は元々そうなんですか?」
「それは違うわね、初代の頃はそんな考えもあったけど、いつの間にか消えて先々代からまた復活してきたってところかしら?」
シェリーが教えてくれた。
ふと思うんです。初代の事を知っているのか?
「へぇこの国が出来て何年くらい経つんですか?」
「たしか建国から194年じゃなかったかしら?」
「そのとおりですな、さすが初代様から代々認められているクランですな」
初代様から代々ね……、するとアイアンフォース自体が建国時もしくはその直後から存在していたって事になるんだろうな。
「まぁね、私らも結構長いからね~」
「シェリーさん、1つ聞いていいです?」
「なに?」
「アイアンフォースは初代に認められて国お抱えのクランになったんですか?」
「そうよ、建国と同時にクランが立ち上がったわ」
なんというか、シェリーの口ぶりが創立時から居るような口ぶりなんだが……。見た目は5~6歳の子どもなのに?
「クラン創立時のメンバーって今も居るんですか?」
「もちろん!クルツやルーなんかは創立時から居るわね」
「シェリーさんは違うんです?」
「創立時私はまだ子供だったからね」
今もでしょ?とか突っ込みたかったがやめておいたが、という事はシェリーは194歳以上という事になる。思っていた以上にお婆さんだった。見た目は子ども!中身は……。
「へぇ、そうなんですね、リンクル族って平均寿命長いんですか?」
「ざっくりとだけど、200~250ね」
「エルフやドワーフは?」
「エルフは600位じゃなかったかしら?ドワーフは400そこらね」
あとは人族と獣人か?
「人族と獣人は?」
「人は50位で、獣人は種族にもよるけど100~1000以上とまばらね、まぁどの種族も冒険者やら災害やらで若くして散る人も多いけどね」
人族は短命!医療技術を考えれば、30年位でもおかしくはないと思うが、ここまで種族に差があるとは思わなかった。ドワーフのジルさんは白髪白髭だし、もしかしたらドワーフの中でも高齢なのかな?
「人族だけ短命なんですね」
「そうね、だからこそ他の種族が得意としている事も比較的出来る種族なんだけどね」
万能がゆえに短命って事だろうか?
「なるほど……」
「さて、つきましたな、謁見の準備が整うまでこちらでお待ちくださいな」
そう言って通されたのは客間かな?
暖炉とかはあるが絨毯が敷いてあったり天井付きのベッドが有ったりとかはせず特別に豪華という印象は無かった。
「待っていましょうか」
「はい」
隅っこにある、ソファーとローテーブルに向かい、ソファーに腰掛けユキと戯れていると、対面のソファーに座っているシェリーが自分も混ざりたそうにしていた。
「ユキ、シェリーが遊んでほしそうだから遊んであげて」
「キュ?キュッキュ!」
「っへ、そんなこと思ってないし!でもユキちゃんが遊んでほしいなら遊んであげるわ」
まぁ、見た目は子どもだけど中身も少し子どもっぽい気もした。
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