第26話 謁見
客間でシェリーが凄く楽しそうにユキと遊んでいると、入口の扉からノック音が聞こえ、先ほど客間まで案内してくれた兵士が入ってきた。
「待たせた、謁見の間へ案内します」
兵士を先頭に、シェリーとユキと共に謁見の前向かった。
しばらく歩き、大きな扉の前まで来ると、兵士は立ち止まりこちらを向いた。
「こちらが謁見の間になります」
そう言うと左右両方の扉が開いた。
「どうぞ、お進みください」
「はい」
正面を見ると、王と妃と思しき2人が座っており、その2人の左右にはがっちりとした鎧に身を包んだ2人の男女、そして右側には20人程の貴族と思しき男女が並んでいた。王と妃の髪の色は純粋な白髪だったのが異様に気になった。
シェリーは堂々と入って行くが、自分はこういった場合の作法を知らない、客間で作法を聞いておけばと後悔しながら、シェリーの右後ろに立ちついて行った。
シェリーは1歩1歩ゆっくり進み、ある程度進んだところで立ち止まり一礼して跪いて頭を下げていた。
自分も慌ててシェリーに倣うように跪いて頭を下げた。ユキは自分の横にぴったりくっつくように伏せ状態になっていた。
少し間を置いて、王が話しかけてきた。
「シェリーよ、久しいな、依頼した物は手に入ったか?」
「はい、目的の月夜花は手に入りました」
「そうか、これに」
王がそういうと、後ろから兵士が来てシェリーの横に立った。
シェリーは立ち上がり、兵士に月夜花と思しき鉢に植えられた花を渡し再度跪いて頭を下げていた。
兵士が王の元に花を運ぶと。
「間違いないな、これで娘は助かる。ところでそちらの男と白い狐は新しいメンバーか?」
自分の事か、と思いつつも、王もホワイトフォックスではなく、白い狐と言っていた。
「いえ、こちらの者は黒死病の対策を知る者です。私達のアイアンフォースのメンバーを謎の病から救った医師でもあります。本日お連れしたのは黒死病対策と、姫様の病の力になれるかと思いました」
「ほう、死病対策を知る者ときたか」
「はい」
何か言われそうだなとか思いつつ、王の言葉を待っていると。
「少年よ、シェリーのいうことは誠か?」
「っは!誠であります!」
何といえばいいのか分からないので、昔見た時代劇に出てきた答え方をした。
「その言葉遣いはそなたの国のか?」
「そうであります!」
時代劇だっけ?自衛隊ものだったっけ?とか緊張のあまり良く分からなくなってきた。
「フッフッフそうか、楽にせよ、まずはそなたの名を聞かせよ」
「自分の名は、伊東誠明と申します!」
「そうか、誠明が名だな?」
「っは!その通りです!」
「そなたの知る死病対策をまず聞こうか」
「っは!それではこちらを!」
アイテムボックスから手書きのペスト対策資料を出した。
「29部あります!この場に居る皆さんの分があると思います!」
「少年から受け取り皆に配れ」
今度は自分の横に兵士がきて、資料を受け取り皆に配り始めたようだった。
資料に少しでも目を通したもの達から色々な事を言われているようだったが気にしない。
「主は迷い人か?」
「っは!そのようであります!」
「そうか、では説明してくれ」
まぁ紙を使っているし、資料には何枚もの解剖図を使っている。ばれてもおかしくはないものだ。
「っは!立ち上がってもよろしいでしょうか!?」
「構わぬ」
「それでは、失礼をば」
自分は立ち上がり、自分用の資料を見ながら説明していく。
「まずは感染経路について、この世界ではまだ不明ですが、自分が居た世界では小さなノミが体内にペスト菌を持っていて、そのノミに咬まれる事から感染が広まります。感染した動物や魔物の血液などの体液に触れるとさらに感染リスクが高まります。そして、人が肺ペストになると近くにいる人にも感染していきます。現時点で不明な事はありますか?」
「少年よ、いくつか聞きたい事がある。まずノミとはなんだ?」
そこからか、ノミに関してはこの世界に居るのを確認している。なぜなら時々ユキがくっつけて帰ってきているから、ユキに触れるとどこにいるかが分かる為に直ぐに対策できるからいいが、気づかなかったら家が大変な事になっていた。
1匹シャーレの中に閉じ込めたノミがいるのでそれを取り出した。
「この中にノミの1種が居ますが確認してもらえますか?開けないでくださいね?」
そう言うと、兵士が自分の元に寄って来て、ノミ入りのシャーレを受け取り王の元にもっていった。
「小さい虫の様な物が居ますよね?」
「あぁいるな、これがか?」
「えぇ、これと同じような奴がペスト菌を保持しています。ノミはネズミなんかの小動物に潜んでいることが多いので、小動物もペスト菌を保持していると思って対策したほうがいいですね」
「ふむ、それから菌とはなんだ?」
王はノミ入りのシャーレを横の者に回し、貴族達も皆ノミの存在を確認していた。
「ペスト菌ではないですが、別の菌をお見せします」
先日シェリーにも見せたブドウ球菌を培養したシャーレと、適当な台と顕微鏡をだした。
台の上に顕微鏡を設置し、シャーレを乗せレンズを覗く、ちょっと暗いかな?と思いながらも見えるからいいか?
「これを自分がやっていたように覗いてもらっても良いですか?」
「ふむ」
そういうと、王が玉座から立ち上がり顕微鏡の前まできて自分がやったようにレンズを覗いた。
「これは……?」
「動いているものが見えます?」
「あぁ」
王はレンズを覗きながら頷いた。
「その動いているのは、皆さんの皮膚の上に居る菌です。裸眼では決して見ることのできない生き物と思っていただければ問題ないです」
「ほう、この菌は悪い事をするだけではないと?」
皮膚の上に居る菌というだけで、そう察してくれたのかな?
「えぇ、人の体の中には沢山の菌が存在しています。もちろん良い菌もいれば悪い菌もいます。今見てもらった菌は皮膚を守る物質をだし、皮膚を守ってくれています」
「ふむ、1つ聞く、疲労感や食欲が無くなったりするのは菌の仕業か?」
「ん~それだけでは何とも言えませんが、なんらかの菌の仕業という事も考えられますね」
シェリーが姫様のとか言っていたし、重たい病にでもなっているのか?
「ふむ、そうか、皆の者よ本日はこれにて解散だ、渡された資料を良く読み、少年に聞きたいことをまとめよ、明日はこの場ではなく会議室にて続きを聞く!」
ん?ペスト対策途中どころかまだ序盤中の序盤なんだが?
そんなことを思いながら成り行きを見守っていると、王と妃と鎧を着こんだ2人の男女にシェリー、ユキ、自分だけになった。
「誠明よ、ちょっとついてこい、シェリーもくるか?」
「はい」
「えっと、黒死病の話は?」
「よい、明日またこの時間に城にきてくれ」
ぇ?またこんなところに来なきゃいけないの……?
「はぁ……」
王の前とはわかっていたがため息ににた返事が出た。
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