第24話 王族と白い狐

 アイアンフォースの面々を治療した翌日


 診察中の診察室にユキがきた。


 基本的に診察中は来ないようにと伝えてあったが、ユキが来たという事は受付で何かあったという事だろう。思い当たる節な1件だけだが、その後ユキは診察を見守るように隅っこでお座りしていた。


 とりあえず今いる患者は多くはないし、終わるのを待っているのか、シェリーが何か叫んだりすることはなかった。


 すべての患者が帰った事を確認し、受付カウンターの内側からみると待合室で長椅子に座り暇そうにしているシェリーが居た。


「ずいぶん早いですね」


 壁掛け時計は11時前を差していた。


「そう?終わったなら少し早いでしょうが王城に行きましょ」


 あら?それだけ?


「なんというか予約みたいなのはいらないので?」


 だれと会うのか知らないがアポなしで行くべきところではないのは分かる。


「元々予定していたから問題ないわ」


 元々予定って?


「そうですか、ちょっと待ってってもらって良いですか?」


 自宅の寝室に戻り昨夜準備した物をアイテムボックスに入れ、再度診療所まで戻った。


「すいません、お待たせしました」

「なにし行ってたの?」

「これから誰に会うのか分からないですが、自分が持ってる本や知識を元に資料をつくったんですよ」

「ふ~ん、見せてもらってもいい?」


 あまり興味無さそうな返事をしつつ手を出してきた。


 アイテムボックスから資料の1部を出し、シェリーに手渡した。


 シェリーは手渡された資料パラパラっと捲ると。


「ふ~ん、これ貰ってもいい?」

「どうぞ」


 まぁ1部渡したところで足りなくなると思いたくはないが……、この資料をひたすら手書きで30部を徹夜で作った。


「そ、とりあえず行きましょうか」

「ほい」


 シェリーは長椅子から立ち上がり入口に向かった。


「ユキ行くよ」

「キュ」


 シェリーと話していたらいつの間にかユキ丸くなっていたので声をかけた。


「その子も来るの?」

「いつも一緒ですからね、ユキが入れないなら王城には入らない方向で……」

「キュッキュ!」


 ユキも2度頭を縦に振った。


「大丈夫じゃない?この国の王族は白い狐とは縁のある国だし」


 ホワイトフォックスという表現じゃなく白い狐と表現したところが気になった。


「詳しく聞いても?」

「歩きながらで良いかしら?」

「もちろん」


 その後、自宅の建物を出て王城に向かった。


「その昔、この国の初代王のそばには白い狐様が居たそうよ。初代王は元々農民の出でね、子どもの頃にあなたと同じように白い狐と仲良くなり常に一緒に居たそうよ。当時この大陸どころか現在の王国領内でも戦いばかりだったんだけど、戦に疲れ果てた者達をまとめ、常に前線で白い狐と戦い続けた結果がこの国の建国に絡む昔話ね、戦いも人々をまとめあげる際にも白い狐が一役かって居たんじゃないかと言われているわね」


 ん~仮にユキと同じ能力だったら可能そうだなとか思った。


「高いも常勝だったとか?」

「えぇ、殆どの戦いで戦わずに勝利したそうよ」


 敵陣に火事の幻影を見せたら?

 幻の兵を側面や背後から襲わせたら?


 話を聞いているだけでも戦いの中での幻影魔法の使い方はいくらでも思い浮かぶ。


「それが白い狐と王族の関係ですか?」

「えぇ」


 ありがちかは不明だが、人ならざる者の力を借りて何かを成し遂げるって話はよく聞くような気がする。もしかして王族は稲荷信仰だったりするのかな?


「王族は狐様を信仰してたり?」

「どうなんでしょうね、ユスチナ教を信仰しているというのは、聞かないわね」

「そうなんだ……」


 そんな話をしていると、王城の大分近くまで来ていた。


「ところで、今日はどなたと話をするんですか?」


 個人的には、病に関係する部署の大臣とかそういう答えを期待していたのだが……。


「王様よ、帰還報告もしなきゃならないからね」


 よりによって王様か……。


「帰還報告ってクランのですか?」

「そうよ、私達アイアンフォースは、この国に認められた冒険者の集まりなの、国の依頼を優先的に受ける事もあるし、私達が遠征するときには必ずお伺いを立てるの」


 わざわざ国に伺いをたてるとか面倒な。


「クランって、国に認められているかどうかなんです?」

「いいえ、クランは5人以上の冒険者の集まりといったところかな」

「ようは組んでるメンバーの数次第で呼び方が変わると」

「そうよ」


 クランとパーティの違いが判明したけど国絡みね……。


「今回の遠征って何が目的だったんですか?たしかダンジョンとか聞いた気がするんですが」

「そうよ、プリッタラ王国とプリムト共和国の国境近くにハーデンシって場所があるんだけどそこの近くにあるダンジョン攻略にね」


 ダンジョンか、やっぱり金銀財宝とかが目的なのかな?


「目的は財宝とか?」

「そんなわけない、エリクサーの材料である。月夜花を取りにね」


 エリクサー?


「エリクサーってなんなんです?」

「あなた医者なのに……、といっても迷い人なら知らなくて当然か……、どんな病も治す神薬よ」


 そんなの存在するのか?

 迷い人となる証拠はシアの時に聞いているから、まぁばれても仕方ないと思った。


「そんなもの存在するんです?」

「まぁ知らなきゃ信じないわよね、機会があったら教えてあげるわ」


 ん?機会?と思い前をみたら、王城入口の門番が立っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る