第14話 新たなる出会い
ザックの手術から1カ月が経った頃の話
ザックから手術の報酬としてたんまりとお金を貰ったので、冒険者ギルドに様々な薬草採取依頼をだした。
麻酔用のロナン草、痛み止め用にメガシワの葉やアビの実、腹痛や下痢止めにアキカラ全体、喘息用にアマヅルの茎葉、解熱や咳止めにイジャコウの葉等々。
最下位のFランクからBランク依頼まであった。
薬草頼りも取れない時期とかあるので正直考え物だな、薬草園とかあればいいのにとか思いながら冒険者ギルドに依頼した。
ザックの家で、手元にある薬草を使って薬作りをしていると。
「すいません~誠明様いますか~?」
という声と共に玄関がノックされた。
「ほいほい」
「キュ」
ユキと一緒に、来客を迎えた。
玄関を開けると、そこには自分と同じ15歳位の女の子3人組がいた。
1人は白髪で耳と尻尾の形がユキと同じような感じのポニーテールの服装でハーフフィンガーグローブを付けた結構カッコいい系の子だ、ローブととんがり帽子の魔法使いっぽい格好をした青いストレートロングヘアのおとなしそうな子、最後に、茶系のショートヘアにガッチリした赤い鎧を着たしっかりした感じの子の3人だった。
「はい?」
「誠明様ですか?」
鎧を付けたしっかりした感じの子が聞いてきた。
「そうですよ?」
「自分たちは、紅の翼というBランクパーティーの者です。イジャコウの葉の依頼で届けにきました」
「あぁ、ありがとうございます。中に入って待ってってもらって良いですか?」
「はい」
「ユキ自分の部屋に案内して」
「キュッキュ♪」
「んじゃこの子について行ってもらって良いですか?部屋の扉が閉まっていたら開けて構わないので」
「ホワイトフォックスですか……?」
「ですね」
ユキは自分の部屋の方に少し行くとこちらを振り返りお座りで紅の翼のメンバーの3人を待っているようだった。
「キュ~!」
「多分早く来いとか言っているので、行ってあげてください、自分はお茶を用意するんで」
「あ、お構いなく、お邪魔します」
「「おじゃまします」」
それだけ言うと、鎧を着た子がユキの元に向かい、その後に続き2人の子もユキの元に行った。
台所に行きカップを3つ出し、お茶を注ぎ、自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると、ユキがみんなに可愛がられている最中だったが、自分が戻ってきたのに気づくと、こちらに駆け寄ってきた。
「懐かれていますね」
「拾ってから1カ月位かな?」
「その狐って人に姿を見せないって聞くけどどうやって一緒になったんだ?」
獣人の子が質問してきた。
「初めて会った時ユキは矢で射抜かれて怪我してたんですよね、そこを助けただけですよ」
「幻影魔法も使えない位重傷だったのか?」
ユキは足元で3人の方を見ながら首を縦に振っていた。そうだったのか、ザックが絶対健康が幻影魔法を打ち消し使っても自分に効いてないからだと思っていた。
「ユキちゃんは私達の言葉を理解してるんですか?」
「言語理解を持ってるみたいですからね」
「キュ~ッ!」
ドヤってるのかな?
いつもと違う感じの鳴き声だが?
「へぇ~ホワイトフォックスってまだ生態不明なんだよね、その子だけが持ってるのか?ホワイトフォックスみんなが持ってるのかどっちなんだろう?」
「どうなんでしょうね」
3人の前にお茶を出しながら質問に答えた。3人共ユキが珍しいのか興味津々の様子だった。ユキ自分の足を使い、後ろ足だけで立ち上がり前足を高く上に伸ばし万歳みたいなポーズをとった。
「抱っこ?」
「キュッキュ!」
「ふふ、可愛いですね~」
茶髪の子が言った。
まぁ確かに可愛い甘えん坊モードだな、なんて思いながらユキを抱っこすると唇をペロペロと舐め始めた。
「あんたら仲いいな」
白髪の獣人の子が言った。
「ずっと一緒にいますからね、依頼の品見せてもらっても良いですか?」
「あぁそうだった、サラ」
獣人の子が魔法使いっぽい恰好の子に向かって言った辺り、魔法使いの子はサラというの名前なのかな?
「……」
失語症かなんかなのかな?ここに来てから一度も声を聴いていない気がするが?
サラと呼ばれた子が1度頷くとテーブルの上に大量のイジャコウの茎に付いた葉を出した。
「依頼より多いですよね?」
「そうですね、群生地を見つけたのでちょっと多めにとってきました」
個人的にはうれしいし追加報酬分をだすか。
「ありがとうございます。依頼達成料とは別に追加報酬分お渡ししますね、他に体の事で何か困ってる事があれば無料で診断とお薬を出しますけど」
「あんた医者なのか?」
「そうですよ?」
疑問に持たれるようなことだったかな?
「あんた見た感じうちらと同じくらいだと思ったけど……、イジャコウも薬か何かなのか?」
自分もあなた方が同じくらいの子だと思っているけど?
「そうですよ、解熱や咳止めとして使いますね」
「そんな効果があるのか」
案外知られてないのかな?
「あの……、私達以外の人を診てもらう事は可能ですか?」
「ん?いいですよ」
誰か気になる人でもいるのかな?
「ユミルあんたまさか……」
なるほど、しっかりとした鎧の子はユミルって名前ね。
「先生を見てもらえば……」
「私もユミルに賛成……」
今まで一言も発しなかった子が喋った。小声だったけど可愛い感じの声だったな。
「その先生とやらを診ればいいんですか?」
「お願いできますか?」
「構いませんよ、連れてこられます?それとも自分が行った方がいいですか?」
相手の様子が良く分からないから何とも言えないが、重病者なら自分が行くべきだろう。
「えっと……」
ユミルはなにやら言いづらそうにしていた。
「うちら、この町の孤児院出身なんすよ。その先生が2週間前に1度倒れたんで錬金ギルドの連中に診てもらって薬貰ったんだけど一向に良くなんないんだ」
獣人の子がユミルの反応に構わず応えた。
はて?なんて病気なんだろうか?
というか、今の部分に何か言いづらい所があったかな?孤児院とかそのあたりかな?
「診てみないと何とも言えないんで案内してもらって良いですか?」
「あぁ付いてきなよ」
そう言うと、獣人の子がソファーを立ちあがった。なんというか突っ走る癖がありそうだな、でも個人的には3人の中では一番好みのタイプでもある。
「ザックさんに出かけてくること伝えてくるんで少し待ってってもらってもいいです?」
「あぁそれ位なら」
その後、鍜治場で仕事しているザックに、まだ本来安静にしているべき時期なので程々にという事と、孤児院に出かけてくる旨を伝えユキと一緒に孤児院へ向かった。
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