第13話 ザックの手術

 翌朝、ザックの手術の日になった。


 人工呼吸器はあるので、ザックに人手が必要という事と伝えた結果、鍛冶ギルドからザックが信用する1人のドワーフの女性が手伝ってくれることになった。


 彼女に呼吸器の使い方を伝えた後、部屋全体をイメージし光魔法の浄化を発動し、清潔な空間を作った。


 今回の手術法は、頸椎前方到達法で、首の前方からやる手法だ。


「大丈夫ですか?」

「あぁ何時でも構わん」


 ザックの家の中にちょうどいい高さの机があったのでそれを手術台として使う事になった。ザックは上半身裸になり手術台の上に横になっていた。


 型崩れしないマスクをザックにつけ、その上にガーゼをかぶせた。


「それじゃあ、説明した通りこれから麻酔をします」

「あぁ」


 ロナン草で作った麻酔代わりの物を手にして用法用量を思い浮かべる。製薬スキルのせいか直ぐに頭に浮かんだ。思い浮かんだ通りにガーゼに2滴たらした。


 30分程で全身にいきわたるらしく、スマホでタイマーセットした。


 30分後、ザックに触れて全身麻酔状態になっているか確認し、手術本番だ。


 目を閉じ、頭の中に浮かぶ顕微鏡で覗いているようなイメージを頼りに、首の前方を切除し、食道や気管を避け、頸動脈等の血管を傷つけないように慎重に避け頸椎に到着、ここからが一番神経を使うところだ、医療用のドリルを使い頸椎に穴をあける、神経などに傷をつけないように脊髄の方に進んだ、脊髄を圧迫している椎間板削り、脊髄への圧迫しなくなったのを確認、ここで動作確認とかできればいいのになと思っていると、頭の中にこの状態での動作異常がないようなイメージが浮かんだ。他の部位も問題なく動かせているようでこれで大丈夫そうな感じがあった。


 最後に穴をあけた頸椎にあらかじめ作っていたセラミックス製の人工骨を埋め、本来ならここでチタン製の板を当てたりするがそのような物は持ち込んでいないので、そのまま終わり、最後に異物を体内に残したりしていないか確認したうえで切除した部分を縫合し、持ち込んだ傷薬を塗ってみた。


 薬を塗ると切除跡が綺麗に消えたのでそのまま抜糸しておしまい。


 久々に神経を使う手術をしたせいか疲れた。


 あとはザックの麻酔が切れるのを待ちかな、食道や気道はもちろんだが、血管や硬膜等の損傷は避けられたし、術後の手術による合併症と移植した骨が取れて落ちたりしない事を祈りつつ経過をみないとだ。


 1時間後、ザックが目を覚ました。


「気分はどうです?」

「まだボーっとするが大丈夫だ」

「そうですか、明日からしばらく自分がご飯とか作って経過観察するんで、激しい運動は避けてくださいね」

「あぁ、すまないな」


 手術は今の所成功と言って良い感じだった。



◇◇◇◇◇◇


 2週間後


 移植した翌日には、人工骨と穴をあけた頸椎が良く分からい位ガッチリくっついた事が確認できた。本来なら骨組織がなじまないとかあるはずだが、穴をあけた形跡がないくらいにガッツリくっ付いていた。術後の後遺症とかもなく経過は良好だった。


 3週間後


 本来なら事務作業とかがOKとなるような時期だが、ザックは問題なく左手動かせるようになったことがうれしいらしく、鍛冶仕事をしていた。

 触診でチェックした結果的には問題ないはずだが念には念を入れてもう少し安静にしてほしいなとか思いつつも、都度経過チェックをしていた。

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